三時限目:世界樹をもっと詳しく
「では続いて、この世界都市で住むには必須の知識―――《世界樹》について学ぼうと思います」
次の授業は《世界樹》についての授業だった。
従者の授業参加が許可された為、メリアは他の従者達と教室の横……廊下側に並んでいる。
ニーファはプニエルを抱えながら静かに寝息を立てている。
……………流石、神竜。相変わらず自由である。
「この世界、フォルタジアには10本の《世界樹》が有ると言われています。……現時点でわかっているのは7本ですが、その全てが生物に多くの恵みを与えくださいます」
そうして、黒板に書かれる。
現在、居場所が判明している世界樹は7本。
中央大陸の象徴となる一番大きな世界樹が一本。
ヒューマンド大陸の宗教国家に一本。
ビストニア大陸の大雨林に一本。
イビラディル大陸の地下遺跡にそれらしき樹が一本。
サンチェアリ大陸のエルフ自治領に一本と、不可侵領域にあるとされる《精霊界》に一本、魔大陸側の海岸に一本、計三本生えている。
……………こうやって考えてみると、不思議な場所に生えてんな。
「イビラディル大陸の《世界樹》は、魔王国地下に広がる地下遺跡《アヴァロン大迷宮》の下層に存在すると言われていますが……ミカエラさんとアレクさんは、これについて知っていますか?」
何故か話を振られたんだが。
あぁ……多分、俺達が魔族だから聞かれたんだろうな。
「いいえ、私は、あの遺跡に立ち入ることは許されていませんの。あの地下遺跡は国の上層部……魔王陛下の許可が無ければ入らないのですわ。だから、国民の殆どが自国の《世界樹》を見たことはありませんわ」
「俺も無いですね。最初は意気揚々と突撃しようとしたんですけど、ダメでしたから」
「………アレクさん?それって……」
「まぁ、そういうことです」
あれはまだ、俺がニーファに出会う前の話だ。
魔王国アヴァロンの地下に、広大な迷宮があると知った時、よし行ってみようと、魔王城の外れにある遺跡管理塔にやって来たら、父さんが腕を組んで出待ちしていて、
『アレク、お前にはまだここは早い!』
と言われて、勉強部屋に連れてかれた記憶がある。
その時から、まだ遺跡には入れていない。
今の俺なら、入れてもらえるかなぁ……
「……と、この通りイビラディル大陸の《世界樹》は馴染みの無いもののようですね。他にも、特徴的なのは、精霊が最も多く存在するサンチェアリ大陸には三本もの《世界樹》が存在しています」
同じ世界にありながらも、別次元に存在する精霊の都《精霊界》に存在したり、地下遺跡にあったり、本当に不思議な樹だな。
「では次に、《世界樹》の恩恵を学びましょう」
黒板に書かれたことを簡単に並べると、こう。
・世界樹は大地を活性化させる
・世界樹から流れる水は聖水として重宝
・年に一度落ちた葉は薬効成分が高い
・空を葉で覆われても影が落ちないくて明るい
・世界都市の世界樹の地下には便利な迷宮が
うん。最後のやつ何?
なんか重要そうな場所の地下にはダンジョンがあるのは当たり前なの?
「特に、この都市の《世界樹》地下には中規模の迷宮が広がっており、冒険者が入り浸ったり、我が学園の実習に利用されたりと、幅が広いのです…………では」
そして、リダ先生は黒板に書くのをやめ、生徒の方に振り向いて、こう言った。
「次の授業は、世界樹地下の迷宮の上層を探検しましょう!」
とっても楽しそうに宣言した。
「正確には、迷宮内での訓練を行いますが、探検と同義なので、がんばりましょう!」
………ニーファが目をキラキラさせてら。
「………楽しみか?」
「い、いやじゃって……実地訓練じゃろ?最近の授業は筆記ばっかで眠くなるわ」
「……やめたら?」
「それとこれとは別じゃろう!?」
少し食い気味に、しかし小声で吠えるニーファ。
………………やっぱり、面白いな、こいつ。
こうして、俺達特別生は迷宮探索の準備に追われるのだった。
 




