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魔王の兄は転生者  作者: 民折功利
第三章 特別生のお兄様

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二時限目:魔法実習

 

「それでは、魔法実習を始めます。みなさん並んでください」


 グラウンドに並んで、魔法実習の授業を受ける。

 この学園に体育着なるものは存在するが、授業の一環では色々と便利な制服で活動する。


 あ、グラウンドの端には、特別生の従者一同が並んでいる。

 無論、メリアとプニエルもそこに……プニエルは何をされているのだろうか?

 女性の従者組にたらい回しで触られてるんだけど。


「まず準備運動を終えた後に、あの的に向かって初級魔法を撃ってください。初歩的なものですが、気を抜かずに行ってくださいね」


 リダ先生の説明を聞き終わり、俺達は軽く運動をしてから的に向かって並ぶ。

 この的当ては、いきなり強い魔法を撃った際の反動を防ぐためだろう。

 弱い魔法を徐々に撃っていくのは、身体が慣れてくるという、準備運動的なもの。

 本来なら、強力な魔法を準備運動無しに撃つと反動で酷い目に会う。

 例えば、吐き気や目眩、頭痛などを引き起こし、果てには脳内処理能力がオーバーヒートして血管が破裂することもある。

 俺の場合だと、幼少期……前世の記憶が僅かに蘇った当初はよく反動が起こっていた。

 人一倍多い魔力のせいで、単純に弱い魔法もそれ相応に強化されてしまうのだ。

 ………まぁ、魔法制御は日々の努力で問題なくなっているから、大丈夫だと思うけど。


 生徒全員で一斉に魔法発動すると、有事の際に手を付けられ無いので、2人ずつで行う。

 まず最初に、ミラノとステラさんから。


「よし……《ファイアーボール》」

「行きます!《ウォーターボール》!」


 ふむ。

 両者とも自分の得意属性の初級魔法を撃ったか。

 ミラノは火属性なのはわかるが、ステラさんは水属性だったんだな。

 火球と水球の当たった2つの的は、壊れる事なくそこに鎮座している。

 魔法耐性の高い素材で出来ているのだろうか?


「次は私だな!」


 フェメロナ達の順となり、皆が次々とか弱い魔法を的にぶつける。それでも的は健在である。


「よし、順番来たな」


 やがて俺とニーファの番が来る。

 ふと横目にニーファを見ると、彼女は手を握ったり開いたりしたまま、視線を下に落としている。


「……………なぁ、ニーファ」

「……ん?なんじゃ、アレク」


 俺に声をかけられた事に気付いたのか、そのまま目を向けてくるニーファに、俺は直球の質問をする。


「お前、初級魔法使えんの?」

「……何をいうかと思えば、あたりまえじゃ「いや、人間単位で」…ろ…………」


 額から顎までダラダラと汗をかきまくっているニーファ。

 あぁ……そうだね。君、神話生物だったね。


「………大丈夫か?」

「ま、まぁ……我が魔法の一割……いや、0.1割を使えば……」

「そこまで!?」


 神竜の力を侮っていた。

 あれじゃん。人間の全力の大魔法がコイツの初級魔法レベルじゃね?憶測だけど。

 魔族の場合はどうなるかは……考えんのめんどいな。


「2人とも〜早く撃ってくださいね〜」

「あ、はーい」


 そのまま、俺とニーファは的に手を向けて……


「はぁ……かくゆう俺もなぁ……《弱火球弾》」

「まぁ、なんとかなるじゃろ《竜炎球》!」


 実を言うと、いや前にも言ったかもしれんが俺はみんなが使うような魔法は使えない。

 正確に言うと、《ファイアーボール》と言うはずの魔法は使えず、《弱火球弾》とか言う威力諸々同程度の言葉に変えて発動することしかできない。

 簡単に言えば、文字に表すならカタカナ表記の魔法で叫んでも、何も起きないと言うことだ。

 つまり、いちいち魔法名を自分で作らなきゃいけない。これが本当にめんどくさい。


 さて。話を実習に戻そう。

 真っ直ぐに飛んで行った2つの火球。

 他の人とは明確な違いがあるのがよくわかってしまう一撃だった。


 まず、その熱量。

 初級とか言っといて、手加減をめちゃくちゃ掛けると言っておいて。

 他の人とは比べ物にならない熱量がぶっぱされている。

 まぁ、それでも仄かに熱い程度だが。


 次に着弾した時の威力。

 …………………爆発音と共に的が粉砕しました。

 煙が晴れれば、そこには焦げ跡と溶けた残骸が残るのみ。


「「………………」」


 俺とニーファ、リダ先生や他の生徒も絶句。


「……なぁ、ニーファ、早弁しねぇ?」

「そうじゃな、行くか」


 俺達は早弁を言い訳にそこを去ろうとするが……


「2人共?ちょぉっと、先生とお話ししようか?」


 肩を掴まれて背後を見れば、般若を携えたリダ先生が満面の笑みでこちらを睨んでいる。


「………えっと……一応俺の中では初級魔法だったはずなんですけど…」

「我は何も言わん……そもそも差がある時点であれじゃし……」


 俺もあんな威力があるなんて思わなかった。

 アレだ。威力が倍増している。

 …………あれか?寝る前に座禅組んで魔力循環させると良いからと本に書いてあったことをやっていたからか!?


 そのまま、弁明虚しく俺達は怒られ、それを遠巻きに見ていた特別生諸君はそれぞれの反応をしていた。


「いやぁ〜流石アレク君。やることが違う」

「ニーファさんも凄いですね」


 鴛鴦夫婦の会話。呑気なことで何より。


「ふふっ…」

「すげぇ……ちょっと皮膚……爪の一枚、いや髪一本ぐらいくれないかなぁ…」


 公爵令嬢は微笑むだけだし、魔法学者はなんか発想が危ない方向へ。


「うーむ。アレで初級か……ますます再戦したくなった!!」

「凄い魔法……私もできるかな?」

「いや、貴女は火属性は超不得意じゃない……」


 獣王女とエルフと委員長は平常運転。


「成る程な………」


 信者先輩はなんか納得してるし。



 うん。

 この特別生クラスは少し危機感をもつべきでは?

 普通あんな魔法撃たれたら忌避すると思うんだが……


「アレク君!聞いてるの!」

「はい、聞いてます!」

「じゃあ先生が何を言ったか復唱しなさい?」

「えっ…………………」


 説教+2時間コースが決まったのだった。



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