天才魔法学者と脳筋獅子王女
自己紹介タイムが終わった後、特別生組は交友関係を深めるための時間となった。
「アレク君、ニーファ君、同じ一年としてよろしくっ!!」
「おう。よろしくな、クロエラ」
「うむ。よろしく」
隣の席に座るクロエラがまず話しかけてくる。ボサボサの灰髪を掻き、黒縁の丸眼鏡と新品の白衣を纏う姿は、まさしく科学者である。
「クロエラって、何を研究したり、開発したりしてんの?」
俺が純粋な質問をすると、クロエラは嬉しそうに頰を染めて、語りだす。
「よく聞いてくれた!ボクは魔法学を中心に研究しててさ!そりゃあもう、好き勝手やらせてもらってるんだ!例えば《不可能技術》と呼ばれる迷宮の霊素皮膜結界を再現した《擬似霊素防壁》とか、禁忌と呼ばれて封印された人体錬成の再現とかーーー」
「ちょ、ちょいまて。お前の偉業はよぉーくわかった。ありがとな」
「おう!わかってくれて嬉しいよ!いやぁ〜これを理解できない爺婆共は文句しか言ってこなくてさぁー。それなら、研究室から出てこの学園で研究すれば面倒にならんと思ってさぁ!」
「んー……器物破損とか面倒ごとは起こすなよ?」
心配だ。こいつ。
やっぱり研究職っぽく、一度話し出したら止まらないタイプだな。
てか、俺と違う方向のヤバい奴だなぁ……
「ふむ……古代魔法も再現したのか?」
「あぁ!魔法に関することは色々と手を出したら、できるんじゃね?と思ってすっね!まぁ、まだ出来ないこともあるけど」
「ほう……お主、凄いではないか。褒めてやろう」
「おぉう……女の子に始めて褒められた……」
「良かったな。これからも頑張ればもっと、ホメラレルカモヨ」
「うーむ……ちょっと考えてみようかなぁ……」
俺の悪ふざけで悪堕ちしそうなんだが。
クロエラは、俺達を忘れたように思考の海に沈んでいったようだ。
「おい、貴様等。アレクとニーファと言ったな?」
「「ん?」呼んだ?」
次に現れたのは獣王国の姫、フェメロナ=ライオンハートだ。
「貴様等、ヘルアークの武闘大会の決勝で殺りあったのだろう?」
「え、そうなの!?」
「はい。フェメロナ先輩の言う通りですね」
「まぁ、そうだな」
クロエラは俺達の実績を知らなかったらしい。
まぁ、研究職でひきこもってたんだろう。まぁ知らなくても良い情報なんだが。
フェメロナの大声で、教室中の視線が集まる。
「そういうことで、だ!!」
いや、どういうことだよ。本当に、どういうことだよ。
「武勲のある貴様等……特にアレク!貴様に、決闘を申し込む!!!」
そんな、戦いたいオーラを出しまくっているフェメロナに、俺はーーーー
「いえ、結構です」
「はぁっ!?!?!?」
堂々と断る。
いや、当たり前でしょう。
なんで入学早々、面倒ごとを引き起こさんといけんのだよ。
戦闘狂か?コイツ。さては脳筋だな?
「なんでだ!!強き者として、私と戦え!!」
「メリットは?」
「は?……メリット?」
「そう。俺が戦ったことによる有益な結果がありますか?無いですよね?貴女に用意できるのですか?ってことで、お断りさせていただきます」
「………………」
「うわぁ……凄い度胸だねぇ……」
「それがアレクなんじゃよ。うん」
脳筋対策、発動!
適当にそれらしい事を支離破滅的に?言ってみれば相手は硬直する!瞬時に理解できる頭がないから!!
もうコイツ確定だな!脳筋娘だコイツ!
「利益……むー……私が用意できるもの……うーん……」
「……えっ、ちょ……悩むならやめましょう?」
「いや、私は強者と戦いたいのだ!」
「………めんどくせぇ……」
本当に戦闘が大好きなご様子。
まぁ、獣王国の王族は、代々戦闘を好む者が多いって、噂を聞くしなぁ……実証済の。
「まぁまぁ。アレク君も彼女の為に戦ってあげなよ」
「むっ……理想の王子様像第1位のミラノ先輩じゃあないですか」
「……なんだい?そのランキング……ま、取り敢えず戦ってみなよ」
「えー」
「私は大会で君の武を見たけれど、他の人は見てないから、疑問を持つわけだよ。言ってしまっては失礼なのだけど、君達見た目は子供だから」
「身長が低いっていうんですかねぇ!!」
まぁ、身長云々は兎も角、実力がわかってないねぇ……まぁ、懐疑的な視線を送る奴も少なからずいるわけだし。
「………はぁ……仕方ないですね」
「た、戦ってくれるのか!?」
「えぇ。仕方なく、仕方なく、ですが」
「そうか!じゃあ、今すぐグラウンドに……」
「えっ、ちょっ、先生!空いてる時間はいつですか!」
俺は傍観している担任、リダ先生に聞く。
「そうですねぇ……では、次の授業で2人の模擬戦をしてもらいましょうか。あ、場所はグラウンドではなく、闘技場を使えるように、今から学園長達に打診してきますね」
そう言って、リダ先生は颯爽と教室を出て、職員室…いや、学園長室に向かっていく。
「あぁ……まためんどくさいことになった」
「アレクが承諾したのだろう?まぁ、がんばれ」




