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魔王の兄は転生者  作者: 民折功利
第一章 目覚めたお兄様
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将来の願望

 

 誕生日会を無事に終えて。

 俺は父さんと母さんに、自分の将来を話そうと思って父に話しかけたのだが……

 数分前、父シルヴァトスに…


「アレク。後で執務室に来なさい。話したいことはそこで聞こう。妻と共にな」


 ……なんか全て見透されていた気分。


 ま、まぁ、ともかく?呼ばれたんだし?行くしかないよね?……アレ?お腹が痛いなー。やっぱ帰ろっかなー。…………はーーーー。






 現在、父の執務室前でございます。

 つまり、魔王の仕事部屋。

 一応、王子である俺も、ほんの数回しか入室したことがない。だから、意外と緊張する。

 まぁ、ノックしまして……


「……失礼します」


「うむ。入れ」


 父の声を聞いてから一泊置いて扉を開く。

 そこにいたのは、我が父シルヴァトスと、我が母エリザベート。俺の記憶が蘇ってから、四年経つが、エリザベートの容姿は変わらず、シワ一つない。…魔族の平均寿命はよくわからんが、ここまで若々しい姿を保てているのは不思議だ。


「それで?アレク。お前からの話とは何だ?」


 きた。

 俺は話す。自分は()()()()()()()()()を。


「父さん。母さん。僕の将来に向けて一つお話します。………僕は魔王になりません」


 そう。魔王にならない。これは王族の長男としてはありえない言葉なのだろう。だが……


「うむ……何故だか聴こうか?」


「そうね〜。理由を聴かせて欲しいわ〜」


 少しも動揺していない。

 ……この二人、俺がこれ言うと察してたな。


「まぁ、僕が魔王を目指さないのは……妹の存在が大きいかと。あの子は強い。彼女を魔王に選出しようと企てるために、既に動いている大臣などもいるっぽいですし。まぁ、それに比べて?僕を支持する人なんていませんし?」


「ふむ…。あまりそう卑下するな……」


「そうね〜。でも魔王になりたくない、ね〜」


「うむ。それでアレクよ。お前の本心はなんだ?正直に言ってみなさい」


 ……俺の本心?

 あぁ。そんなの決まっている。


「自由気儘に好き勝手に生活したいです。魔王とか言う座に縛られたくないので」


 俺の前世は特出すべきものなどなく、つまらない価値の無い人生だった。最後にトラックに潰される感覚はまだ思い出すことができる。

 だから。俺は魔王にならない。今世こそ意味のある人生にしたいから。

 きっと、叱責されるのだろう、と身構えていた俺だが……。


「クククク…なるほどな」


「あらあら〜。これは決意固いわね〜」


 はい?怒らないの?何で微笑んでの?あんたら?


「えっと……」


「ふん。アレク。お前が魔王を目指そうとしてないことなど、とうの昔に把握していたぞ」


「そうね〜。でも、普段から自由にさせている息子がもっと自由になりたいなんて言うとは思わなかったわ〜」


 あぁ。よく考えてみれば、誕生日会で貰った指輪魔道具とミスリル銀の短剣は、これを見越して渡されたのだろうか。


「うむ。アレクよ、お前の気持ちはよくわかった。…ところで、然るべき時にこの城を出るのか?」


「はい。転移魔法でちょくちょく帰る予定ですが」


「転移魔法覚えてたの〜?あれ、上級魔族でも使える人って一握りなんだけど」


「はい。八歳の時には使えました」


「早いな…我でも会得したのは十三だぞ…」


「そう言う私は使えすらしないわ〜」


 あれ。俺って以外と凄い?


「まぁ、お前が魔王を目指さず、自由にすることだが……条件が三つある」


「条件…ですか?」


 まぁ、もちろんその条件は飲ませていただきますが。


「一つ。家族団欒を大事にすること」


「はい」


「二つ。月に一回は帰ってくること」


「はい」


「三つ。学園に通うこと」


「は………い?」


 学園?ナーニーソーレ?


「この世界の全種族が和解し、同盟を結んでいるが……いつ破棄されるかわからん。しかし、唯一各国が干渉できない場所を知っているだろう?」


 全種族が長らく続いた戦争に疲弊して、種族全滅の危機を避けるために、休戦、そして同盟を、時の大国の人間王が提唱し、世界は平和へと向かった。それが世界同盟。そしてその本部があり、学園が存在するのは……


「世界都市ユグドラシル…」


 世界を支える十本の世界樹の内の一本が生え、世界の中心に存在する陸続きの島にある都市。


「うむ。そこで自らを鍛えろ」


「はい。わかりました」


 まぁ、前世の時とは違って異世界の学園は楽しそうだしな。行くしか無いだろ。


「あぁ〜。彼女連れてきてもいいのよ〜」


「え、あ、はい」


「あっ、先に性奴隷の作り方教えてあげるわね〜」


「いや、やめとけ。何を提案してるんだ!」


「あ、ご教授お願いします!」


「いいわよ〜。私、その道のプロだから〜」


「やめいっ!」


 うむ。我が母は多少趣味が可笑しい。なんでも若かった頃は気に入った娘を従順な性奴隷に調教していたらしい。あまり聞きたくなかったが、少し興味があるのは確かである……


「ごほん。まぁ、ともかくしっかり学園に通って好き勝手生きなさい。わかったな?アレク」


「はいっ!」


 そうして、俺が魔王になる道は閉ざされ、世界都市の学園……ユグドラシル学園に通うことになった瞬間だった。



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