男子会
妹のユメに手紙を出した方が良いと思って、リョーマが趣味で撮っていた写真を一枚拝借して先日送った。
リョーマの趣味は写真撮影で、今まで倒した魔物とのツーショットや、家族写真などがたくさん保存されていた。
この世界のカメラ技術は、発展段階に等しく上流階級の者達のみしか持てない程の金額。
機能も、撮影と録画、保存のみで、無属性魔法の《文書複製》によりプリントできる。
しかも、脚立の物ばかりで、手のひらサイズの物は技術的に存在しない………のだが、何故かリョーマは持っていて、出所を聞いても笑って誤魔化されてしまった。
そして、大会が終わって二日間ほど休んだ俺は、勇者マサキと王子ミラノに呼ばれて王城に渋々足を運んでいた。
親交を深める点もあるが、男友達の居なかった俺には丁度良い……うん。言うのは止めようか。
女性陣は一緒には来ない。ニーファも含めて、王都の喫茶店で女子会を開くらしい。
俺たち男性陣は、所謂『男子会』と言う名の愚痴り大会を開く。
城門に来れば、
「アレク様ですね?ミラノ殿下がお待ちしています。此方へどうぞ」
執事さんが態々迎えにいらして、王城内を案内してくださった。
「お、来たみたいだね」
「アレクさん、おそようございます」
「おそよう」
先に待っていたミラノとマサキに挨拶をする。おそようの言葉通り、今は十時だ。
男子会の会場は王城の中庭の一角。純白のテーブルとチェアーに腰掛けて、美しい庭園を眺めながら会話することができる。
「はい、って事で第一回男子会を始めます」
「「パチパチパチパチ」」
俺の開式宣言と共に二人の控え目な拍手が起こる。一応室外なので、他者に配慮した結果だ。
「で?何を話すの?いや、愚痴るんだ?」
「あー………ミラノさん、どうします?」
考えてなかったのかよ。俺が居ない間に決めとけよ。
「…そうだなぁ………じゃあ、女性関係に関してで」
「「えっ」」
えっ。
何それ。マサキと被ったんだけど。
「あ〜……マサキ君は女性関係が素晴らしいことになってたね」
「素晴らしいこと……不倫、二股、浮気かな?」
「何でそう翻訳しちゃうんですか!?ち、違いますよ?僕、そんな事してませんからね!?」
あ、うん。わかってるよ?だから、そんな必死に否定しなくてもわかってるよ?
「主人公あるあるだもんな。仕方ないよな」
「はいっ!?」
「主人公あるある…?」
「勇者とか英雄な者の周りには可愛い女子が群がる事。例えば鉄剣リョーマ」
「あぁ〜〜なるほど」
ミラノに教義しながら、話を進める。
奴も奴隷ハーレムを築き上げてるって話だからな。
「あ、アレクさんはどうなんですか?」
「俺?………………さぁ?」
今はニーファと言う名の無駄食いを相手にするので精一杯……あ、あとプニエルが居た。それで今は十分だな。
「よくよく考えれば、プニエルも雌に位置するらしいから、俺もハーレムを築いてる?」
「え………ちょっと違うと思いますね…」
「うん。プニエルちゃんは人型じゃないから加わらないと思うよ?」
まぁ、俺も思っていた事だけどな。
プニエルも一員認定されてたら、なんか怖い。
「ところでミラノは?」
「私かい?私は婚約者一人で手一杯かな」
「婚約者……あぁ、彼女ですか」
「誰?」
なに、ミラノには婚約者が居たのか!?
同じ王族の俺には居なかったぞ!
まぁ、俺は城を出てるから無駄なんだけど。
「ステラ=リーン=エディスタル。エディスタル公爵家の長女で可愛い子だよ。確か、今日は女子会に参加しているんじゃなかったかな?」
「はい。ソフィアが言ってましたね」
「ふーん」
なるほど、ミラノの奥さんは彼に恥じぬ存在なのね。
「そういえばアレク君はどうなんだい?ニーファさんとの関係は?」
「あ、それ僕も気になります」
「えっ………………関係?」
関係。あのニーファとの関係。なんだ?
「うーん………まだ出会って一年ちょっと…あ、最近なんでか知らんけど名前呼びされたな」
「へ、へー。そうなんだ(以前、シリシカがニーファさんに提案してたのを見たけど………それかぁ)」
「仲が良いんだね」
やっぱり、隣にいる友人……気安い仲間?なんだろう?
まぁ、気にしても無駄なんだろうが。
男子会は日が暮れるまでお開きになることはならなかった。
途中でチェスやリバーシを始めた所為だな。
まぁ、楽しかった。




