閑話:兄の手紙
遥か遠くの国で、武闘大会の決勝戦が行われてから一週間。
次期魔王に選定されたユーメリアは、魔王として相応しくなる為の教育が行われていた。
「ううぅぅぅ……難しいよぉ」
今日も今日とで脳内許容量に負担がかかりそうな授業を終えた私は、自室に戻り今日の内容の復習をしていた。
もしサボろうならば、次回の内容が濃密になって苦しむのは自分だ。
しかし、まだ10歳の私には厳しいんじゃないかなぁ?
兄様が城を出て、旅に出てから早数ヶ月。
私は兄様に、託されたと思っている。
昔から、私を持ち上げて褒め称えてくれた兄様。
あの人自身が、魔王になるのを拒んだのなら、例えそれが逃げたと他者に思われていようが、私は兄様の味方でありたい。
その為にも、自分が今できることを必死になる。
私が努力して、この国の王となった時。
兄様に見られて恥ずかしくない世界を造り上げたい。
だから。
勝手に出て行った兄様に嫉妬なんて抱いていない。
抱いてないよ。抱いてないもん。うん。
「ユメちゃ〜ん。アレクちゃんからお手紙が届いたわよ〜」
「!!」
見た目が若々しいエリザ母様が私の部屋に無遠慮に入ってくる。
「お母様!せめてノックしてください!」
「え〜〜。私とユメちゃんの仲でしょお?」
相変わらず能天気でポワポワしている母様はほっといて、私は勉強机に向かーーーーー
「お母様?先程、なんて言ってましたっけ?」
「私とユメちゃんの仲でしょお?」
「もっと前です!」
「あら、ここが良いのね?ほらほら」
「何を言ってるんですか!?」
「あ、メイドちゃんに悪戯しちゃって」
「と、兎に角、先程手紙と言ってましたよね!?」
「言ったわよ〜」
捥ぎたくなる豊満な谷間から手紙を出して私に手渡ししてくれる母様。
「どこから出してるんですか……?」
「うふふ〜」
まぁ、母様は置いといて、私は手紙を開く。
綺麗な白い紙を開いて、兄様から届いたという手紙を読む。
『拝啓、この手紙を読んでいる貴女は燃えます』
何かよくわからない始まり方をした。
『冗談です。
取り敢えず、元気かな?
自分はヘルアーク王国の武闘大会に出て暴れました。
優勝したぜ。ニーファは準優勝だよ。
父さんにユメが頑張ってるって聞いたから、手紙を送るんだけど、俺の代わりに魔王目指して頑張ってね!応援してるよ。
それじゃあ。
アレク=ルノワール』
簡単に書かれた手紙を見てから、一緒に入っていた写真を取る。
そこには、リングで戦っているアレク兄様とニーファ様が戦っているシーン。
真っ黒なコートに身を纏い、杖を振るう兄様。
真っ白な軽装ドレスを着て、剣を待つニーファ様。
……………私も見たかったなぁ。
あ、お父様がビデオを持って出かけて行ってたから、もしかしたから撮っていてくれているかもしれない!!
帰ってきたら聞いてみよ!
後日。
「お父様、兄様の試合の録画はしましたか?」
「…………あ。……………すまん」
………………………。
「お父様の馬鹿あぁぁぁぁ!!!」




