ヘルアーク武闘大会-決勝戦round1
魔法詠唱や技名称で、最初は《》が使われていたんですが、途中から『』に変わってたので、すべて《》に統一しました。
まだ、他に変更忘れ、これ以降また魔法や技名の《》が変化していたら、ご指摘お願いします。
「さぁ、みなさま!今大会に出場した猛者共を退けて、この決勝戦に勝ち上がったのは、この二人!武闘大会初出場にして勝利をもぎ取ってきた冒険者、『銀色の死神』アレクと『銀竜姫』ニーファの戦い、乞うご期待いいっ!!」
司会の長ったらしいご挨拶を聞き流しながら俺と同じようにリングに立つニーファに目を向ける。
目を瞑っていて精神統一している様に見えるが、アレは多分、周囲の視線に辛くなって目を瞑ってるだけだな。多分。本当に多分だけど。
そして、決勝戦ということで、ヘルアーク国王の有難いお言葉を頂戴する。
「双方とも、よく決勝まで勝ち進んだ。双方共にまだ成人を迎えていないと聞いている。そのような若者がこの場に現れた事を、余はこの国を治める者として嬉しく思う。どちらが勝ってもこの勝負は歴史に残る物になるであろうな。双方共にその事を心に刻み、悔いを残す事なく戦うのだ!個人戦、決勝を始めよ!」
国王の言葉が終わって直ぐに、観客達の爆音…もとい大歓声が会場を盛り上げる。
だ、が、し、か、し。
俺は国王に文句を言いたい。
まだ成人を迎えていない?俺はそうだけど目の前の駄竜はアンタより年上ですよ?
ま、兎に角、国王の合図で試合が開始された。
ーーーーー俺とニーファの鬱憤晴らしが始まる。
「…………始めよ、と言われたからには始めるとするか」
「当たり前の事言ってどしたん?」
「ふっ……それは、なっ!」
「うおぉ!」
コイツ、話しながら攻撃して来やがった!足を払って来たが、難なく避けて後方に飛ぶ。
瞬時に、右手に決戦用武器を構えて臨戦態勢を整える。その形状は、刀。鞘に収まる反った刀身が僅かながらチラ見している。
獄紋刀:魔王の兄が造ったオリハルコン製の打刀。漆黒の炎をあげる地獄の武器。鍔に施された眼は聖者を侵す。ランク-S。
ちょっと、いや、結構厨二臭いけどカッコいい刀。抜いてみれば光を反射する漆黒が綺麗だ。
俺が造った武器の中でも最高品質に当たる自信作。大量のアダマンタイトと炎の魔獣の魔石により生み出された。ワンポイントで付けた飾りの眼の項目がヤバすぎて引いてるのは内緒。
「………その武器を出すか……キツイの」
以前、俺が武器製作中にニーファが見学に来て、丁度この刀を作っていたところだった。その時、完成品を使って暴れたのを覚えているのだろう。
ニーファが持つ武器は、天罪紫刀。
両刀共、手先が器用な俺が必死になって生み出した最高傑作。
そんな俺の子とも言える刀達が、音も無く踏み込んだ俺達の動きと共に前に出され、交差する。
片方は真っ黒な炎を纏って。
片方は紫色の微光を纏って。
刀を振るう。斬り上げる、下げる、横に、縦に、刺すように、正確に相手を斬るように。
黒い炎が宙を舞い、淡い紫が線を描く。
リングを荒らしながら、時には結界スレスレで斬り合い、場所を転々としながら武器を振るう。
「埒があかねぇ……《力場発生》《此処安置》」
「!?……くっ、この魔法はっ……!!」
これ以上やっても埒があかないので、俺は魔法を詠唱した。一つ目の効果は、重力操作と似たようなもので、このリング全体の重力を上げる。常人なら耐え切れずに膝をついてしまうが、ニーファは耐える。
二つの目の文字通りの名前の魔法は、俺の居る場所だけ重力の魔法効果が効かないように造ったもので、俺は普通に突っ立っていられる。
まぁ、安置を造っただけで此処から動けないんですけどね。
…………遠距離攻撃はできるけどっ!!
「《銃弾閃光》」
重力で地面に叩きつけられない高さを測定し、少しニーファより高めに撃つ。
銃弾の様に発砲された光が、ニーファを襲う様に迫るが、彼女は重さを感じながらも、その腕力で大剣を振るい、光弾を弾く。
「《閃光連射》」
文字通り、《銃弾閃光》の連射版。
「おい、お主っ!汚いぞ!」
「いや、これも勝負のひと、t、はぁっ!?」
俺が驚いた理由は単純だ。
俺の目が追い付かないスピードで我が安置に突っ込んできた。気付けば真後ろにニーファが存在していた。
「取ったっ!!」
迷わず大剣を間近で振るうヤバイ人の攻撃を刀で必死に受け止める、が。
俺の半身が安置を出てしまい、重力の影響を受けてしまう。
「がぁっ!!」
体が地面に叩きつけられる前に魔法を解除し、上空に跳ね飛ぶ。結果、ニーファの追撃を避ける事に成功する。
そして、試合は上空での死闘と入る。
俺は、背に展開した種族特性の一つである、綺麗な黒翼を見やる。
……風呂で洗ったり、梳かしたりしたが、戦闘面では久しぶりかもしれない。
相手のニーファにも、爬虫類…じゃなくて、竜種特有の銀翼を展開して俺と同じ位置を飛び、俺に向かって剣を振るう。
空中での剣撃は、地上での争いと一味違っていた。翼を切られない様に、上手く回転しながら斬り合い、隙を狙う。地上ではあり得ない程の回転をしたり、上に下に移動して戦ったりと、観客達を楽しませる為の一種のステージが形成される。
…………にしても、最初から最後まで罵倒しあいが始まると思っていたのだが、思っていた程、ニーファは真剣に、本気でかかっていている。
……何か裏があって気になるのだが。
「……《多重魔法陣展開》っ!」
「っ!……って多っ!対人じゃねぇ!!」
対国家レベルの量……軽く千を超えてる……紅い魔法陣がニーファの後方、だけでなく俺の後方にも設置され、起動音を鳴らしながら回転する。視界内全てが魔法陣に覆われて、所々重なっててヤバく見えてしまう。
例え神竜でも、千は無い。多分、戦闘中に術式を俺にバレないように作っていたんだろう。
俺は急いで《完全防壁》を張る、が。
「消し飛べぇ!!」
黒い笑みを浮かべながら魔法陣を発動するニーファ。凄いムカつく。
そして、一斉に魔法陣から一撃で人が消し飛ぶレベルの紅雷が俺を襲う。
…………もし、俺の防御魔法で防げても、一点集中型の殲滅魔法攻撃が普段使ってる結界をいとも容易く破壊する姿は目に見えている。
ならば、どうするか。
紅雷を受けまくり、ヒビが入り広がり始めた結界を見ながら、俺は異空間からある物を取り出し、新たな魔法を発動する。
「《上空転送》」
防御壁上空に俺が取り出した物を転送させたら……………それに向かって八割の紅雷が向かい、ぶつかり、霧散した。
「ぬっ……!?」
流石にニーファも驚いているらしい。予想していなかったのだろうか?
俺が転送したのは、不思議武器の一つ。その名も『避雷針』。
避雷針:魔王の兄が造った雷を集める剣。ネーミングセンスが疑われるが、性能は保証します。ランク-C。
誰に保証されるのか知りたいが、剣型の避雷針は役目を果たしたので、用無しとしまう。
「なんで、そんな都合の良い武器が出てくるんじゃっ!!」
「旅先で嵐だったら雷が落ちてこない様にする為に造っただけだよ」
事実だし。
なお、獄紋刀と天罪紫刀は今もなお斬り合っております。




