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魔王の兄は転生者  作者: 民折功利
第一章 目覚めたお兄様
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誕生日会

 俺が禁書庫に入り浸ってから早四年。

 俺が扱う魔術や、魔法のレパートリーは日に日に増え続け、魔力値も、大幅に増加した。


 俺は十歳になり、武術と魔術の両方で卓越した力を着々と身につけていった。


 妹のユメは、やはり天才肌で最強の名に恥じぬ力を発揮し、周囲の上級魔族達からは次期魔王へと、期待されている。

 まだ九歳らしく幼いが、可愛いのは変わらずである。


 そして今日は、父シルヴァトスと母エリザベートから、


「今日は何もしなくて良いから、たまには部屋でゆっくりしていなさい」


「私たちは〜アレクちゃんの為にやることがあるから〜」


 母さんの言葉は何かを隠しているが、それを言ったらお終いだと思う。


 まぁ、今日は()()だから楽しみにしておこう。


 ……それに、俺からも言いたいことがあるからな。


「って言っても……何しよう?」


 ゆっくりするしかないでしょう。









 夜。時計の針が午後7時を指した。

 ついでに言うと、この世界の技術は地球より少し遅れているか遅れていないのか曖昧な感じで、飛行船や船、鉄道などが存在する。

 ……まぁ、銃などは存在していなかったが。

 この時計も、時間を計測する魔道具で、結構お高い値段がするらしい。


「トントン。お兄ちゃん入るよー!」


 わざわざ声に出しながら部屋に入ってきたのはユメ。ここは知らないフリをして、


「どうしたの?」


 するとユメは何かを企むような顔で、


「お兄ちゃん、いいからこっち来て!」


 そう誘うのだった。






 連れて行かれたのはいつもの食堂。

 しかし、普段よりも少し賑やかな感じが…あぁ、やっぱりか。

 そしてユメが扉を開くと…


 パン!パーン!


「お誕生日おめでとう!」


 舞い落ちる色取り取りの紙吹雪。美しいながら控えめな装飾が施されていた食堂も、この日の為か、パーティー会場の如く飾り付けがされている。


 そして、俺の誕生日を祝う皆の笑顔。


 父シルヴァトスは唇を少し吊り上げて。

 母エリザベートはホワホワ系な顔に満面の笑みを浮かべて。

 妹ユーメリアは恋する少女の如く破顔して。

 他の宰相や四天王、大臣達が俺の誕生日をわざわざ祝いに来てくれた。


「ありがとう!うれしいよ!」


 俺はそんなありきたりなお礼を述べた。


 確かに、嬉しい。前世の頃は親が早く死に、誕生日を祝われたことも片手で数える程度しかなかった。しかし、こうして、大勢の人に祝われると、不思議と、嫌な気分じゃなくなってくる。


「はい。アレクちゃん。プレゼントをどうぞ〜」


 エリザベートから渡されたのは指輪の形をした魔道具。


「これは…」


「自己再生と緊急防御が付与された魔道具よ〜宝物庫を漁っていたら見つけたの〜」


「あ、ありがとうございます…」


 ……宝物庫って漁っていいのっ!?王妃でもそれは危なくない?ってか便利だなこの指輪。

 まぁ、禁書庫に入り浸っている俺が言うことじゃないが。

 すると、俺の考えを読み取ったのか、シルヴァトスが、


「我も共に宝物庫から探したから問題ないぞ」


 …と、安心させるよう言ってから、


「ほれ。我からのプレゼントだ。大事に使えよ」


「ありがとうございます父さん」


 渡されたのは一振りの短剣。これは…


「……ミスリル銀?」


「さすがだな。禁書庫に無断で入り浸っている甲斐はあるな」


 やっぱりバレてたか。最後の言葉は小声で、周りに聴こえていなかったらしい。でも、黙認していてくれたのは親の愛情からか。


「大事に使わせてもらいます」


「うむ」


 ミスリル銀製の短剣か…。魔力伝達力も良いし、切れ味も抜群だからな。使い道は沢山ある。


「お兄ちゃん!はい。あげる!」


「わぁ。ありが……と…う…?」


 我が可愛いユメは指を自分の背後を指して、先程から気になっていたカバーを掛けられていた()()()()()()のカバーを無造作に取り払う。


「「「「…………………………」」」」


 会場にいた全員が絶句した。そこにあったのは、


「じゃーん!私が狩ったドラゴンだよ!」


 そう、ドラゴン。俺も初めて見た。

 その竜は赤き鱗に美しい角を生やしている。

 レッドドラゴン。恐らく火属性に長けた竜だと、推測されるが……


「これ、ユメが?」


「うん!」


「そっかー。凄いなユメは!」


「えへへ、お兄ちゃんのために頑張ったの!」


 うん。実力を見せられたぜ。しかもこれ、首を両断した、パティーンだよ?これ。


 そして、絶句していた他の面々も、口々にユメを、褒め讃え始める。


 ………うん。これは覚悟を決めなきゃな。




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