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魔王の兄は転生者  作者: 民折功利
第二章 冒険者のお兄様

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ヘルアーク武闘大会-血は咲き散る

 

 やぁ、みんな!


 名のある強者をフルボッコだドン!して来たアレクだよ!


 そして、貴賓席からこんにちは!今、獅子王と魔王と聖王子と視界の端の金持ち連中と一緒に試合観戦中!


 内容は簡単っ!


 我がパーティー『銀の翼』の一翼!


 銀竜姫ニーファ (その正体は誰もが畏れる最強の神竜二ールファリス)と、今大会一の問題児である血液大好き殺人鬼!血濡れ剣ムラツっ!!


 さぁ、勝つのはどっちかぁー!!


「アレク君、心の声が漏れてるよ」


「ん?マジ?」


 ここで聖王子(笑)からツッコミがきたーー!


「…………笑って何だい?」


「あ、本当に漏れてんだ。へーー」


 ふざけたテンションを戻しまして、前述の通り現在二人の試合が始まった所だ。


 ムラツの武器は血痕がこびりついた蛇腹剣で、伸びた時の長さは目測で十メートルもあった。恐らく魔道具による効果だろうが、射程範囲が広いので敵味方問わず攻撃してしまうタイプだろう。


 対するニーファが持つ武器は巨大な魔鋼と紫紅石の大剣で紫色の光を持つ刀身が美しい。

 紫紅石とは、赤色素が強い紫色の魔石で、魔大陸でも採掘できるが、超希少な鉱石だ。

 それで造られたニーファの大剣、『天罪紫刀』。


 天罪紫刀:魔王の兄が造った紫紅石の大剣。罪人を許さず、罪人を裁く天の剣。魔力を浴び続ける事で成長を続ける。銀竜姫ニーファ専用の武器。ランク-S。


 俺が武器造りをしていたら珍しく駄竜に強請られたので、当時龍泉霊峰で見つけた紫紅石の鉱脈を発見したので、それをふんだんに使って生み出したのが、あの大剣。


「キヒヒッ!小娘ぇ、鉄剣に勝ったからって良い気になってんじゃねぇゾォ?俺様がテメェから血の花を咲かせてやるからヨォ」


「ふむ…………貴様、キモいな」


 どうやらニーファさんは彼の存在を否定したくて堪らんようですね。

 俺と他の観客者を見てもムラツの戦い方は忌避してしまう。必要以上に対戦相手を嬲り、死ぬ寸前にまで体を斬り裂き続ける戦法を好み、殺人鬼とも揶揄される程の狂った男だ。

 ムラツの挑発で観客達の反応は二つに別れた。


 片方は劇物を見るかの様な拒絶の目で。

 片方は彼女が勝つ事を良しと思わない者の目で。


 後者は今すぐに殺したいですね。


 そして、試合が始まったと同時にニーファが動き出した。脚を曲げ、大地を蹴り、跳躍する。上空からの切り下ろし。ムラツを脳天からかち割る様に天罪紫刀を振り下ろす。


 ガキィィンッ!!


 ムラツはそれを危なげなく蛇腹剣で防御する。普通の武器や俺の不思議武器達も、あの大剣で斬られては一溜まりもない、が………あの蛇腹剣は魔法強化が施されているのか、難なく大剣を防いでしまった。これには流石にニーファも目を見開いて驚いた。


「キィヒャヒャヒャヒャ!」


 甲高く気色悪い笑い声を叫びながら、蛇腹剣を振り回す。伸び縮みする刀身がニーファの体を、大剣を潜り抜けて傷つけて行き、上下左右を豪快に動きながら戦う為、身体から地面までを真っ赤な血を咲き散らす。

 ………おかしい。本来のニーファ、人型でもあの程度の攻撃で傷を付けることは無いはずだ。たかが魔法強化如きで怪我をするのは……持ち上げ過ぎかもしれないが、ありえない。


 俺が疑問符を無数に浮かべ続ける中、試合は続き地面を彩る血は広がり続ける。

 普通なら失血で倒れてしまうのでは……と言うところになっても動き続けるニーファ。

 ムラツは、血の色と匂いで興奮しているのか、観客全員が抱く疑問にも気付けず、彼女を痛めつける事を続ける。時間を掛けて、ねっとりと。


 すると。


「はぁ……出来るかと思っていたが、そろそろ飽きたのでな。大人しく死ね、社会のゴミ」


「ヘッ、え?」


 グシャアァァァァァ!!!


 傷だらけのニーファの体がブレて、ムラツの体を天罪紫刀が通り過ぎ、上半身と下半身がサヨナラしてしまう。


「ギ、ガアァァァっ!?お、俺様の体ガァァッ!?」


「…………天罪紫刀。罪人を許さず、裁きを下す正義の剣。貴様が死ぬのは仕方ないかもしれんのぉ?」


 自信満々に語り、俺の方向を見て言るニーファは。全くもって傷など無い・・・・・・・・・・・・、美しい姿で現れる。

 そして、トドメの一撃として。


 ムラツの汚れた首を両断した。


「しょ、勝者、銀竜姫ニーファぁ!!!」


 司会の勝利宣言と、観客の大歓声が沸き起こってニーファの勝利を祝福する。ムラツの戦闘を好まぬ者達が、彼に敗北した戦士達が。彼女を大いに祝福したのだった。


 そして、丁度俺に視線を向けるニーファが、ニッコリと笑ってサムズアップ。

 俺もそれに合わせて、手を動かし、彼女の勝利を褒め称えるのだった。






 ……その後、結界から出て蘇生したムラツが数年間引きこもり、後に行方が分からなくなるのは途轍も無くどうでもいいだろう。



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