ヘルアーク武闘大会-VS聖王子round1
ミラノの名前を少し変更。
途轍もなくどうでも良い小デブ子爵とさよならバイバイして、リングに到着した俺氏。
目の前には、すらりとした長身に鮮やかに映えるプラチナブロンドの髪、それと同じ色の黄金の鷲の刺繍をあしらった、見るからに上質な軍服に身を包む一人の青年。
濁りの無い澄んだ蒼色の双眸が、美丈夫の彼を引き立てている。
ヘルアーク王国の麗しき第一王子、ミラノ=ヘルアーク。
またの名を、聖王子。太陽神ソレイユの寵愛を授かる神子。
「お初にお目にかかります。アレク殿。私はミラノ。よろしくお願いします」
「此方こそ宜しくお願いします、ミラノ様」
「敬語は使わなくても良い。本来なら私と君は対等の存在ですから」
言い方からして……俺の地位を知ってる?
「………何のことやら…」
「そう警戒しなくても良い。魔王陛下が教えてくださっただけだ」
「……余計なことするなよなぁ」
どうやら内の父上は俺の正体を言いふらしているらしい。やめてほしいよ。
「まぁ、勇者殿を下した君に勝てる気はしないが……胸を貸してくれると嬉しいな」
「はぁ………兎に角、楽しく殺り合いますか、聖王子」
「ふふ……そうだね」
さっきの糞貴族と違って話がわかる奴らしいが…
どっちにしろ、コイツは前座。勝つだけだ。
ニーファをボコす為の戦路が繋がるだけ。
そして、大勢の観客と主審一人副審二人の前で、司会が開始の合図を出しーーーー試合が始まる。
最初に動いたのはミラノ。
腰に構えていた剣を素早く抜き、俺に向かって足を踏み込む。
その剣は太陽のように紅い西洋剣。
「随分、カッコいい武器だな!」
「…《紅陽剣シェメッシュ》私の相棒です」
徐々に熱が入るように、剣が紅く、紅く、綺麗な緋色の炎を宿し始める。
そして彼は無防備に佇む俺にその燃える剣を振り下ろす。
「《黒鉄巨人》」
俺は即座に黒光りする巨腕を喚び出し、紅陽剣をクロスさせた巨腕で防ぎ、跳ね返す。
その腕は、見た目は黒い金属装甲に紅いラインが引かれた三メートル程の大きさで、肘関節から下部分のみがそこに存在する。
「くっ……また不思議な武器、ですか?」
ミラノは跳ね返されてから、燃える剣を振り返し体勢を整えるながら問う。
「いいや。これは俺が魔法で予め造った奴の一部分なだけで、例の不思議な武器とは関係ない。つまり、魔法だ」
この腕はただの一部分でしか無く、本来ならこの魔法は対軍殲滅兵器として俺が暇潰しに造った巨人の腕だ。
材質は全身を魔鋼で固めて魔法強化を施した、絶対の自信がある防御力と攻撃力を誇る。
巨人の全部位を召喚するときは、某アニメの様になるのだが、これは後の秘密だ。
「まぁ、これだけじゃないんだが……《武器召喚》」
武器召喚とは。
ただ言ってみたらカッコいいかなと思って三秒で考えた技名?である。
結局、アイテムボックスから武器を取り出すだけだが。
現れたのは黒き腕とは対比的な白い無骨な大剣。
それも二振り。
全長六メートル、柄を含まなければ四メートル程の大きさを誇るドラゴンの骨と金属を魔都の職人さんの鍛治技術で組み合わせて生み出した大剣。
土龍骨剣:魔王の兄と魔王国名誉職人が生み出した龍骨の大剣。骨そのものを崩さずに使用した巨人用の武器。その力は山を切り裂き、大地を揺らす。ランク-A。
ウラバラの森に出没した土龍を仕留めて、高純度の魔力が染み込んだ鉄……魔鉄。その上位互換でより濃厚な魔力が含まれた魔鋼を組み合わせた骨の剣。
大剣を巨腕の手におさめ、戦闘準備を整える。
「行くぞ?聖王子。死なぬとは言え……潰されんようにな?」
言葉と共に俺は両腕を魔力で動かし、骨大剣を大振りに振るう。
その動きだけで風が巻き起こり、ミラノは耐えるようにその場に立ち、紅陽剣を前に掲げ……大剣を防がずに横に跳ね避ける。
ドゴォォンッ!!
鈍い打撃音と土が潰れる音の発生源は、巨大な剣の痕の穴。
もし、ミラノがそこで防いだだけだったら……一瞬で勝敗が着いたのだろう。
「……やはり、避けて正解、ですねっ!」
彼は不敵に笑いながらまた武器を構え、走り出す。
「はあああぁぁっ!!」
巨腕と大剣から避ける様に飛び、走り、動き、俺を斬ろう、刺そうと燃え盛る剣を振るう。
その姿を見ながら、俺は両腕を動かし、彼を倒すための、算段を考えるのだった。
一応補足だが、この腕一本動かすのに、普通の魔術師なら五秒で屁古垂れるレベルの魔力量が必要である。
今回は腕二本を使っており、全身……頭と腕に腰、脚も加えると、一種の精密作業で頭が痛くなる程、今回は慣れていない為、腕だけを出した。
まぁ、勝てる自信しかないけど。




