ヘルアーク武闘大会-証拠隠滅
次の対戦相手であるミラノ王子との試合に向けて控室を案内人が来るよりも早く出る。
この試合に勝ち、順調に進めば、ほぼ確実にニーファとの決勝戦になる。
お互い負けるとは思ってはいないが、相手が歴戦の猛者だろうが何だろうが潰すつもりだ。
と、俺が意気込んで前を向いたら、道を塞ぐ奴等が十名程。
俺はソレを無視して進むのだが……
「おい、貴様!止まれ!」
中でも偉そうな小デブが俺の方向に指を指すが、俺はわざと辺りを見回すフリをしてから小馬鹿にするように首を傾げ、そのまま前に進む。
「貴様!私の声が聴こえんのか!止まれといっているのだぞ!」
「初対面の奴の言う事を聞くほど優しくは無い」
「なっ……!?」
何か驚いてるけど放置放置。
怒りに顔を真っ赤に染めた小デブと俺に槍や剣を向ける護衛らしき男達。
「貴様!私に対してそのような態度を!許すと思って」
「たかが貴族の一人が俺に文句を言うのか?馬鹿馬鹿しい。あと、後ろの護衛らは武器を下ろさないと消すぞ?まぁともかく要件をいってさっさと消えろ」
「くっ…生意気なっ!」
いや、生意気なのはお前だよ。めんどくせぇ。
あと、小デブの護衛共は武器を下ろさねぇ。
「ふん。まあ良い。私はゴンベル=フォン=グルーベン子爵である!貴様、アレクという小僧だな!」
「それがどうしたダンベル」
「ゴンベルだ!間違えるなよ小僧!本来なら不敬罪で殺す所だが……貴様、次の試合を棄権しろ!」
何かとんでもなくどうでも良い事を言いやがった。
「その理由は?」
「ふん。よくわからん奴に我が国の王子が負けたら問題であろう?故に、大人しく…」
「じゃ、要件は言い終わったな?じゃぁ、大人しく消えろ」
「は?貴様、話を聞いて…」
何故か困惑した小デブ子爵。
「俺は要件を言えとしか言ってないだろ?お前の戯言に付き合うとは言ってないぞ?」
「なっ……貴様、私に逆ら」
「うるせぇ消えろ《地獄烟火》」
問答無用。
俺は小デブ子爵とモブ護衛に炎の魔法を放つ。
奴等は黒い炎に包まれ、消し炭になる準備が整う。
大人気ない?いや、ちょうど良いぐらいだよ。
「ギャ、ギャァ…………」
「も、燃え」「な、なん」「ガァァ…」
叫び出す寸前に防音結界を張って野次馬が来るのを防ぐ。
そして、黒炭になった十の人型のゴミに向かって、
「《虚数崩壊》」
全てを無に還す破壊魔法が痕跡残さず消滅させる。
……………証拠隠滅完了。
いやー。途轍もなくテンプレなクソキャラが現れたから黙って聞いてみたらとんでもない事言いやがるから……やっちゃったぜ☆
どこの世界でも、あんなクズはいるもんだな。
まぁ、問題になっても事情を話した上で俺の権力を行使して何とかしましょう。
俺は何も無かったかの如くリングに向けて足を進める。
………あんな糞貴族を向ける程、その王子は弱いのだろうか?
それとも、アイツが自分勝手に動いたか、上の何かが命じたか。
まぁ、疑問に思っても、何の問題もないか。
そして今後、俺はこの事を頭から完全に忘れてしまい、またある事で思い出す事をまだ知らない。
ごめんなさい!
王子との対面&戦闘は次の回で!




