地下大図書館
現状確認が一通り終わったところで、俺は自室を出る。
我が家…もとい魔王城は、とにかくデカイ。故に、迷いやすい構造になっているのだが、俺は迷わず、ある場所に向かう。
そこは、図書館。魔王城地下大図書館。視界に入るは一面の本棚で、その数は司書すらも把握できないほどの膨大な数。仄かなカビ…つまり本の匂いを嗅ぎながら、図書館の奥へ奥へと進んでいく。
30分程進んだところで、視界が開ける。
そこにあるのは、重厚な金属扉。素材はオリハルコンで出来ており、淡い金色を放っている。
俺はそんな扉に手を当てて……
「《開け、常闇の扉》」
一種の呪文を魔力を込めて発した瞬間。
ゴォォ………
音を立てて、禁書庫の扉が開く。流れ出る冷気がこの身を震わせる。
「……よし」
少し身震いし、気合いを入れ直して、俺は禁書庫の門をくぐり抜けた。
カツ…カツ…カツ…
俺の足音のみ響き渡る静寂に包まれた果てが見えない程長い一本道。仄かに灯り続ける魔道具のランプのみが足場を照らし、先への一歩を進ませる。恐怖で足が竦む思いだが、ある目的の為に歩き続ける。
やがて、呆れるほど長い一本道は終わり、無数の本棚が立ち並ぶ、禁書庫へと到着する。
俺の目的は二つ。
一つ目は「禁忌とされる魔術の会得」
二つ目は「異世界転生について」
既にいくつかの禁術は手に入れ、扱うことができてはいるが、俺の好奇心と知識欲の為にまだ手に触れる必要があるだろう。
二つ目については、何故突然前世の記憶が蘇ったのか、自分の記憶が本当に前世の物なのかを確かめる為である。まぁ、これにはあまり期待していない。
既に、親に帰りは遅くなると伝えている為、のんびりと作業ができる。
「さ、始めますか」
そして、俺は地下大図書館もとい禁書庫に入り浸り、父や四天王達から武術などの修行をつけてもらう日々が始まるのだった。