幕間:勇者参戦
武術大会を武闘大会に変更
◆勇者マサキ
異世界に来てから早一年。
あの日、異世界転生をした後に世界同盟のお偉いさんから、太陽神からの天啓とこれからに付いての頼みとお礼を言われた。
自分自身、死んだのに第2の人生を歩む事を許されたのだから、礼を言われる気は無かった。
クリアス枢機卿という方に、
「何かあれば、我々を頼ってください。必ず、力になります故に。…………それと、ソフィアの事、宜しくお願いしますね?」
と。
後日わかった事だが、ソフィアは僕の補佐として活動するらしい。
聖女だからかな?……まぁ、最初は滅茶苦茶美人なソフィアとの生活は、ドギマギしたけれど、何だか、慣れてしまった……良いのか悪いのか…。
その後、世界都市を中心に勇者として活動する中で、様々な人と交流を深めたり、新たな仲間を加えたりしながら、頑張って行った。
あぁ、僕には勇者としてのスキルがある。
『勇者スキル』と言われ、歴代の勇者達も持っていたらしい。
僕のスキルは、『聖剣錬成』。
自らの手で聖剣を生み出す力だ。
………まぁ、今では聖“剣”には、見えない武器も作れるようになったけれど。
僕に着いて来てくれている仲間は計4人。
一番親交が深い癒し聖女のソフィア。
ある事を調査するエルフのシリシカ。
家の復権を目指す元令嬢のクレハ。
天真爛漫な元奴隷で獣人のミュニク。
…………………はい。見事なハーレムを形成しています。
前世の僕は、
『は?ハーレム?有る訳ないじゃんwww』
と、ラノベを読んで思っていたけれど、ありました。現実に、ありました。
ごめんなさい、作者さん。異世界から謝罪致します。
まぁ、まとめてはっきり言うのなら。
一年で僕は異世界に順応しました。
………早いかな?
大変な事になった。
僕等のパーティの回復担当のソフィアがダンジョン探索で重傷を負い、左腕を失ってしまった。
教会の持つ医療技術でも、腕の再生は無理だ。と、クリアス枢機卿が青い顔をして項垂れていた。
例外に、聖女自身は部位欠損や死一歩手前を魔力を引き換えに再生、回復させることができるらしい。
左腕は重要な器官の一つらしい。
魔力の循環がしやすく、魔術を振るう心臓に最も近い左腕。それが使えないとなると………魔力制御や行使が格段に難しくなり、左腕を使って魔法を詠唱していたソフィアは……所謂、魔法や魔術が使えない状況になる。
当のソフィアは、
「ご、ごめんさい……私のせいで、皆を混乱させて……」
と、自己嫌悪になってしまっている。現在は勇者活動を一時休止して、彼女の看護に力を入れている。
しかし、それにも限界がある。
彼女を癒し、元のソフィアに戻す為の方法を、僕達は探した。
……そして、呆気なく見つかった方法は、霊薬を使った治療法。
霊薬。全てを癒す伝説の薬で、不老不死になる可能性がある神の秘宝だ。
これを保持している大物貴族や大商人、王族も少なからずいる。
が、勇者特権で霊薬の貸出を願っても嫌がられるはずだ。
だから僕は、優勝者に賞品として『霊薬』が授与される世界規模の祭、『ヘルアーク武闘大会』に出場して、霊薬を取る事を目標に参戦する事にした。
元々は、世界都市の大闘技場で行われていた大会だが、ヘルアーク王国と獣王国の二カ国でも開催する事を昔決定したらしく、それが今も続いている。
僕は、勇者として大会に出場して、霊薬を手に入れる。仲間の為に、ソフィアの為に。そして………自分の為にも。
必ず勝たねばならない。
予選を難なく乗り越えた僕は…他の出場者の力に驚愕と最悪の想定をしてしまった。
負けてしまうのではないかと。
でも……勝たなければ。
僕は、強く意思を持って、本戦出場の為の控室に足を運ぼうとする。
「マサキ!」
後ろから声を掛けられ、振り返ると鎧服を着たをクレハと、ミュニクとシリシカ、そして………ソフィアが。
「頑張りなさいよ!」
「マサキ様…ミュニク達も応援頑張るから!」
「………勝ちなさいよ」
「うん……ありがとう」
三人の声援に身を固める。
「マサキ様………私のせいで…いや、私も恐れるのを辞めます……頑張ってくださいね!皆で、応援してますから!」
「!……はいっ!」
悩みを振り切れた訳でも無いのに、ソフィアは笑顔で答えてくれた。
僕も、全力で。今を超えて。全てを尽くそう。




