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魔王の兄は転生者  作者: 民折功利
第二章 冒険者のお兄様

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ヘルアーク武闘大会-予選その3

武術大会を武闘大会に変更

 

 さて……既に予選5回戦。次が俺の番だ。

 昼を回り皆が屋台の食べ物や弁当を食べながら試合を観戦する。


 今までの戦いで、注目されている選手は五人。

 勇者マサキ。

 土槌の戦鬼ライアック。

 銀竜姫ニーファ。

 麗しき武士ノブメ。

 血塗れ剣ムラツ。


 マサキは異界から呼ばれた世界の救世主で恐らく日本の元高校生の勇者。

 ライアックはAランク冒険者のドワーフで、大槌を使って戦う重戦士。

 ノブメはヒューマンド大陸の東にある島国……昔の日本の様な国の流れの武士。

 ムラツはヒョロリとした風貌に狂気を宿し、敵を切り刻む異世界のジャック・ザ・リッパー。

 ニーファは……何故か『銀竜姫』という異名を語られている。生意気な。

 あいつは神竜だぞ。姫なんかじゃないぞ。暴君だぞ。


 そう考えている内に5回戦が終わったらしく、俺の参加する予選6回戦の準備時間に入る。


 いやー。ニーファに負けないぐらい派手に行こうかな。


「おーい。頑張れよお主」


「誰に物を言ってるんだ?」


「頭のおかしい魔族」


「全力で否定したいなぁー」


「ま、頑張れ」


「おう。派手に暴れてくる」


 ニーファとハイタッチしながら扉を抜け、最後の予選に俺は向かった。





「さぁて、本日最後の試合……予選6回戦となりました!既に何人もの強者が出ましたが、今回の試合では何が起きるか……乞うご期待!ということで、予選6回戦……開始デェスゥッ!」


 司会の合図と共にリング上の戦士達が暴れまくる。

 時には剣を。槍を。杖を振るって。自らが本戦に出場するが為に、死力を尽くそうとする参戦者達。

 俺はそんな戦士達の勇姿をリングの端っこ…結界に触れるか触れないかの所で見ていた。


 いや、別にサボってる訳じゃないよ?

 目立たない様にしてるだけ。


 俺が欠伸を噛み殺しながらも敵の数は勝手に減っていく。

 たまに隙を狙ったつもりなのか、俺を攻撃してくる小児虐待者を肉片宜しくで潰したりする。


「あぁー、そろそろ行くか………」


 俺はユラリと足を前に動かす。未だに戦う参戦者達に向けて俺は最後の一言を放つ。


「《狂殺幻夢》」


 俺の右手から放たれる黒い瘴気。

 魔王城の禁書庫でみっけた催眠系の禁術。

 リング上で戦う俺以外の全ての参戦者を一瞬で瘴気が覆い、民に絶望と恐怖を与える。


「う、うわ」


「な、何だこれ!?」


 そして、彼等に変化が起き始める。


「ひ、やめろ、来るな……来るな…」


「あぁ……、おぇ…」


 参戦者達が何かを恐れ、狂ったように悶え始める。自ら命を落とし、共倒れの様に敗残する。


 本来なら一撃必殺の即死技。しかし、このリング内である限り、彼等はこの死の恐怖を蘇らせてしまう。


 まぁ、試合終わったら参戦者全員に『記憶浄清』をかけて、恐怖を和らげるつもりだが。


「………はい、終わり」


 俺以外に誰もリング上に立つ者は無く。


 ただ静かに惨劇は終わりを迎えた。


「よ、予選6回戦……しゅ、終了です!残ったのは…Dランク冒険者、アレク!」


 司会が震える声を振り絞って試合終了を宣言し、俺はただ真っ直ぐに控室に戻ろうと踵を返す。


 パチパチパチパチ……


 最初に拍手したのは魔王シルヴァトス。

 父は俺を面白そうに見やりながら勝利を讃える。


 おおおおおおおおおおぉぉぉぉぉっ!


 それに続いて叫び出す観戦者達。彼等は自分がやられた訳じゃないから、現実味が無い。

 だから、余興の一つとして楽しめる。


 俺は右手を上げて勝利の喝采を全身に浴びた。





「おい、今回の出場者ヤバくないか……?」


「おう。予選でこんなになるとはな…」


「お、おい……アイツが来たぞ…」


「『銀色の死神(シルバーデッド)』………!」


「あ、アイツが……?」


「『銀竜姫』もいるぞ……!」


「ほ、ほんとだ…」


 さっきの予選が終わり、明日から始まる本戦の出場権利を得た俺とニーファは、大通りを歩く。


「いやー。随分恐怖されとるのー」


「一度使ってみたい術だったから仕方ない」


 先の惨劇で俺の勇姿を見ていた人々に厨二臭い異名が付いてしまった。

銀色の死神(シルバーデッド)

 まったく。俺はこんなにも可愛いキャラなんだぞ。プンプン。


「まぁ、本戦でもっと暴れさせてもらうよ」


「クハハハハ!なら私も本来の姿になって……」


「止めろ。世界が終わる」


「終わらんわ!」


 いやー。本戦出場が決まったんだ。

 楽しみだぜ。


『マシタ、眠いー』


 いつのまにか帰ってきたプニエルが頭に乗っかる。


「お前、父さんのところに行ってたのか?」


『うんっ!マオパパに会ってきたの!』


 プニエルは父さんの事をマオパパと呼ぶ。


 あの厳つい見た目の魔王をマオパパって……地味に度胸あるんじゃないかな?


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