ヘルアーク武闘大会-予選その2
武術大会を武闘大会に変更
その後も予選は順調に進んで行き、ニーファが出場する試合の時間になる。
「よし、じゃあ行ってくるの」
「観客が度肝を抜くレベルで暴れて来い」
「ほう……言ったな?言っちゃったな?」
そのままニヤニヤしながらリングに向かう最強種。少しヤル気を出させてしまったみたいだ。すまんな他の参戦者諸君。
「それではっ!予選第三回、開始でぇすっ!」
リングに集まった参戦者の姿を見て、司会者が予選の開始を叫ぶ。
瞬間。
ドコォンッ!?
リング中央が爆発し、大量の土塊と参戦者が爆煙と共に空を舞う。
「こ、これは一体っ…………?!」
司会も、観戦者も、他の参戦者も皆が驚き、中央を見やる。
リング全体を覆う爆煙が晴れ、中央に立つのは銀色の少女。堂々とした佇まいで、全てを睥睨する。
「む……派手にやろうとは思ったが………呆気ないのぉ」
敵全てを挑発する発言に、全員が反応するも、動けない。彼女から発せられる圧に誰も動かない。
「誰も来んのか?……………なら、こちらから潰させてもらうぞ?」
ニーファの姿は言葉と共に消失。
参戦者も観戦者も全員が彼女を探す。
参戦者は恐怖から怯え、敵に対抗するために。
観戦者は始まる惨劇を、この目に写すために。
ズドォーン!!!
今度はリングの東側が爆発。
例え、途轍も無く広いリングの上でも、その爆煙は張られた結界内を覆うように広がる。
また始まる惨劇。
誰も対抗できず。ただ一人の少女に対して、されるがままに殲滅される。
少女は何の問題も無いと知っているから。怪我が元に戻ることを知っているから。地上の全てを破壊するように、一方的に殲滅する。
結果。文字通り観客や戦士の度肝を抜いたニーファは本戦出場決定。奇跡的に生き残った二人も実力不足ながら本戦に出場が決まった。
今の動きで全てがニーファを警戒した。
相手になれば勝ち目はないと。
「いやー。暴れてきたぞ」
派手に暴れてきたニーファが笑みを浮かべながら此方にやってくる。
「えー。こっち来ないで欲しいんだけど…」
「何故じゃっ!?」
「いやー目立つじゃん?仲間だと思われたく無いじゃん?」
「今始まったことじゃないだろうに……」
それもそうか。
まぁ、控室にいる参戦者全員の目線がコッチに向いてんのよ。辛いのよ結構。
まったく。コッチはプニエルを抱き締めるのに精一ぱ……………
プニエルどこ行ったっ!?
「………《味方探知:プニエル》」
小声で俺はプニエルの居場所を探す。
どこだどこだ……?
あっ、みっけた。
何故かプニエルは貴賓席に居た。
しかも、魔王シルヴァトス…父様の膝の上に。
うん…………問題ないな。気にしない方向性で。
「ん?そう言えばプニエルは?」
「貴賓席」
「あぁーなるほどな」
ニーファも気づいたようだ。
俺に居場所を言われたから、眼に魔力を込めて貴賓席周辺を見たのだろう。俗に言う千里眼だ。
壁を透かして、遠くを見ることができる。
やったね、皆んな!覗き放題だよ!
まぁ、熟練の魔術師ぐらいしか使えないんだけど。
父さんがプニエルを膝に乗せながら、闘技場外を囲む屋台の焼鳥を食べながら観戦している。
あ、コッチに気づいたみたいだ。壁を挟んだ先を通り越して何だけど。
少し微笑みながら、此方を見やり、うなづく様に頭を振って、元の姿勢に戻る。
「……我が頑張ったからお主も頑張れってところか?」
「そう言うことだな」
いやー、プレッシャーがかかるねぇ。
早く六戦目にならないかな?




