ヘルアーク武闘大会-予選その1
武術大会を武闘大会に変更
国王の名前を少し変更。
俺とニーファの冒険者パーティ『銀の翼』は今日に迫った『ヘルアーク武闘大会』に出場する為にこの一週間を準備に使った。
まず、ランクをFからDに上げ、カードの色も鈍い銅色に変えた。様々な依頼を同時並行して行った結果だ。普通ならこんなに早くはない。
頑張ったよ俺達。最初の四日間はランク上げに費やした。
残りの日数は大会の準備に走った。勿論、ニーファとは別行動して、本戦の試合でぶつかり合う約束をした。
まぁ、今日はまず……大勢いる参戦者達の中から本戦行きを決める為の予選があるのだが。
王都の西側に位置する大闘技場に集まった参戦者達はそれぞれの戦局の控え室に入る。
観戦者達は今か今かと闘技場上の観戦席で待ち、既に熱気に溢れている。
そして、『ヘルアーク武闘大会予選』が始まる。
「さぁ、みなさま御機嫌よう!本日は大変素晴らしい天気に恵まれた訳ですが……これより!死屍累々の手汗握る『ヘルアーク武闘大会』の予選を開始いたしまぁ〜〜すっ!」
オォォォォッー!?
音を遠くに響かせる魔道具………マイクを持った司会の女性が最初の挨拶を行う。
「それではまずは、我がヘルアーク王国の獅子王、 ハイリッヒ様から開会宣言を頂きます」
そう言って、司会は隣に座っていた男性にマイクを渡す。
名は、ハイリッヒ=ヘルアーク。この国の国王で獅子王の異名を持つ男性だ。その姿は老いに蝕まれながらも、力強さを感じられる。
キツく尖った碧眼と、逆立つ金髪で厳格さと強さも感じられる。
「皆の者、本日はよく集まってくれた。堅苦しい話は無しにしようと思うが…これより、第三十二回ヘルアーク武闘大会予選開会式を開式する!」
そして、開会式が滞りなく始まり、王国や各国の来賓などの挨拶などが続く。
「ん……?アレって父さんじゃね?」
「む?……本当だな」
なんと、貴賓席には我が父の魔王シルヴァトスが。まぁ、毎年恒例で呼ばれてたからな。俺は行かなかったし、呼ばれなかったけれど。
「んー。これじゃカッコ悪い姿見せられんわ」
「ふん。予選で当たらんかっただけマシか」
既に俺達の予選順番は教えられており、俺は六番目、ニーファは三番目だ。六番目まで行われる予選は、大勢でフィールドにて戦い、最後まで残っていた三人が本戦に出場できる仕組みだ。
つまり、最低で十八人出場して、前回優勝者や特別参加枠の者達が入り、二十五人が本戦で戦う。
その説明も司会が終えたようで、開会式が終わり、予選一回目と入る。続々と中央のリングに集まる一番目に出場する挑戦者達。
「このリングは古代世界から残る魔道具による時間逆行の機能が付いており、リング内でついた傷や部位欠損、死亡した場合でも、試合開始前まで時間が戻りますし、リングに張られた結界が観客達をお守りいたします!なので皆さま、存分に戦いをお楽しみください!」
おう…。とんでも機能付き闘技場だった。
つまり、どれほど相手を痛め付けても問題無いわけだ。派手に暴れられるな。
まぁ、予選では力抜くけどね。
「そぉれぇでは!予選第一回、開始です!」
そして始まった最初の予選。
その中でも注目すべきなのは……一人。
中肉中背の黒髪黒眼の若い青年。
選手名簿には、『マサキ・テンドウ』。
はい。どう見ても日本人です。ありがとうございます。
まぁ、風の噂で世界同盟…世界都市の上層部が勇者を召喚したらしい事を聞いていたが………
恐らく、彼がそうだろう。
見た目は高校生ぐらいだ。
……この世界に勇者がいるのはわかっていた。
魔王城の地下大図書館に『異界から召喚されし戦士』と称されていた勇者。
歴代の勇者リストを見たのだが……どれも日本人名だった事に驚いた。
後、歴代勇者は全員が死んでからこの世界に来ているらしい。
つまり、マサキ君も若くして死んでしまったわけだ。俺と仲間だな!
まぁ、今世の年齢加えると俺の方が倍年上なんだけども。
そして、視線を戦いの舞台に向ける。
勇者マサキがリングの上を舞うようにして戦い、他の参戦者を蹴散らして行く。
その手に持つのは神々しさを感じる一振りの剣。
恐らく、勇者が持つとされる『聖剣』だろう。
剣から迸る光の線が尾を作り、戦場に幻想的な光景を生み出しながら、彼は勝ち進む。
結果。ものの数分で予選第一回は終わり、勇者マサキを含めて三人の挑戦者が残ったのだった。
今のところ懸念すべきは、神竜ニーファと勇者マサキ、そして前大会優勝者と特別枠で参戦するヘルアークの第一王子。
いやー。楽しくなってきたな。
俺はこれからの戦を思い描き密かに笑う。
大会中はなるべく魔神杖を使わない方針で行こう。まぁ、隠し球にしたいのもあるし、他にもヤバイ武器はたくさん持ってるからな。
いやー。本当に。本当に楽しみだよ。
できれば、勇者と戦うなんて面倒な事にならんでほしんだけど。




