狂いしコボルト
ヒリング草の乱か……採集を終えて今度はコボルトの討伐を始める。
同時並行でも良かったのだが、コボルトに遭遇しなかったのでヒリング草を重視した。
そう。コボルトに遭遇しなかったのだ。
本来なら森を歩いていれば、確率的には低いがコボルトやゴブリンに見つかる、見つけることが出来るはずだ。しかし、今回はゴブリンばっかりでコボルトが見当たらない。
「コボルトはどこじゃ?」
「竜の嗅覚でわからんの?」
「残念ながら、竜形態じゃないと本領発揮は無理じゃ。ここで姿を戻しても良いのならいいが」
「騒ぎになるから遠慮しとく」
仕方ない。森の奥地に突っ込みますか。
そんなこんなでだだっ広い森の奥地に向かった俺達は衝撃的なものを見てしまった。
大きな屍肉らしき物を貪る十匹のコボルト……のようなもの。
その体は本来のチワワサイズではなく、大きく膨れ上がり、体毛は血で汚れ逆立っている。眼は大きく開き、焦点が合っていない。獰猛さと狂気を感じさせる姿をするコボルトらしきもの。
俺達は木の枝の上からそれを覗く。
「なんじゃ…あれは」
「んー……変異種?…なのか?」
『怖い〜…』
変異種。通常の魔物が特異な魔力溜まりによって変質して脅威となる不思議生物。
「倒します?」
「うーむ……ギルドに貢献して早くランクを上げるか。余裕じゃろうし」
「だな」
『おー!』
シュタっ!
俊敏に動き、コボルト変異種に奇襲をかける。
俺は魔神杖カドケウスを一匹のコボルトに串刺し…
「《百花伝雷》」
「グギャァァァッ!?」
首筋の血管から直接電流を流して一匹排除。
「斬れろ」
ニーファの真空圧縮術の不可視の刃でコボルト三匹の首を両断する。
『スゥ〜〜ペッ!』
プニエルが口?から小石を高速で打ち出し、コボルト一匹の脳天を穿つ。
残り五匹…といったところで、相手のコボルト変異種が反撃をしてくる。
「グルルッ!」
牙を剥き出しながら手に持つ棍棒でこちらを狙う二匹のコボルト。三匹で連携して突撃してくるコボルトもいる。俺はそれに向かい魔法を詠唱する。
「《撹乱香霧》」
嗅覚に優れた犬…コボルト変異種の鼻を使えなくする。
「グオッ!?」
嗅覚が鈍くなって右往左往する五匹。
それを機にニーファは懐から竜鱗の刃…『月夜の刃』を振るう。この短剣はニーファの神竜の鱗を使って作った簡単な武器だ。
言霊魔法で鱗同士を熱して溶接して作った短剣。一応、武器を持ってないと疑われることもあるので、即席の物としてニーファに渡したのだが、随分と喜んでくれていた。
ザシュッ!ザシュッ!ザシュッ!
「「「ギャォッ?」」」
三匹のコボルト変異種は訳もわからず頚動脈を切られて即死する。
「《土針棘串》」
「「グギャ、ガァァッ!?」」
断末魔を上げ、土の棘に串刺しにされるコボルト変異種二匹。口から大量の血を吐いてその場に倒れる。
「ふむ…呆気なかったが…普通なら危険だろうな」
「む?そうなのか?」
「俺達は例外だ」
にしても…謎だな。自然にこうなったのか…人工的に変異したのか…ギルドがしっかり調べてくれると良いのだが(人任せ)
まぁ、クエストが終わったことには変わらない。コボルト変異種の死体をアイテムボックスに入れる。
「まぁ、今日の晩御飯は確保できたかな」
「え、ちょっとまて。さっきの食うのか!?」
「ヒリング草と炒めて…」
「止めろー!?」
あはは。冗談だけどね。流石に俺も食いたくない。




