市場散策
滞在する為の宿を決め、先払いをした俺達は泊まる宿の部屋に入室する。
二人部屋で然程広く無いが、充分睡眠は取れるだろう。俺とニーファは荷物の整理を行い、プニエルは日当たりの良い窓辺に陣取って外の景色を楽しげに見ている。
「お主、王都でまず何するんじゃ?」
「市場散策をする予定」
「ほう。美味い物にありつけるかのぉ」
「飯の事しか考えてないのかよ」
『マシタ!食べたい!』
「お前もか」
市場を散策する事を決めた俺達は王都の宿…『陽だまりの丘』を出る。黒馬車は宿主に管理を任せているし、邪魔なので徒歩で行く。
「お、市場でも行くのかい?」
宿の女将さんが気前よく話しかけてくる。恰幅の人好きの良い表情を浮かべた中年の女性だ。子持ちで家族全員で宿を経営している。
「はい。この大陸の品も興味があるし、王都に来たのも初めてなので」
「食べ物を買い漁りたいんでな」
「あぁ、そう言えばアンタらは魔族と竜人族だったかえ。あたしらは気にしないけど、気をつけなよ?まだ他種族をよく思ってない馬鹿共がいっぱいいるからね。何かあったら頼りなよ」
「はい。お気遣いありがとう。じゃ」
「じゃあ言ってくるの、女将」
『バイバーイ!』
「はいよ、いってらっしゃい」
女将さんの元気な声を背中に受けながら、『陽だまりの丘』を出て、市場の散策を始めるのだった。
「おぉ!見るからにすごい活気が凄いな!」
「語彙力の無さが草」
「なんじゃと?!」
語彙力ゼロのニーファが言う通り、王都の市場は今まで見てきた場所よりも格段に規模と熱気が違かった。
さすが大国、と言ったところか。
市場の露店を冷やかしながら歩き、物珍しい物を手に取ったり、買ったりしながら広場に着く。
「あ、二人共迷子にならないように昼飯を買ってきて良いよ」
「『はーい』」
素直に金を持って食関係の露店を探すニーファとプニエルを横目に見ながら俺は空いていたベンチに座る。
実は、既に昼飯としてカツサンド三人分を買ったのだが、二人は別のが良いとねだってきたので、自ら好きに買わせに行かせた。
まぁ、超大量に買ってくる姿が脳裏に写るのだが。
そう思考している間に随分と時間が経ったのか、俺が3つ目のカツサンドに手を触れた瞬間、
「おーい。買ってきたぞー」
『買った!買った!』
周囲のドン引き驚愕な表情を向けられているのを気にせずに歩いて来るニーファとプニエル。
やべぇ。凄い他人です感を出したいんだけど。
ニーファは頭の上にプニエルを乗せながらも、三人で食い切れないんじゃと思う程の串焼やらを持ってきている。
「お前らそんな買ってきて食えるん?」
「まぁ、正直言って買い過ぎたと思ってるが……お主の魔法鞄に入れれば大丈夫じゃろ?」
そろそろコイツらに金の使い方をしっかり教えるべきかもな。




