喧嘩は買う主義
「あ、受付嬢さん、今換金って出来ますか?剥ぎ取る部位とかはわからなかったんですけど」
「は、はい?出来ますよ?」
そう言って案内されたのは、魔物換金のカウンター。十メートル級の魔物でも載せられるレベル。
「んじゃぁーほいっと」
「え?」
俺は魔法鞄(アイテムボックスを隠す為のダミー。許容量は五十メートル四方の国宝レベル)を通してアイテムボックスから軽く捻って来た魔物達をカウンターに置く。……カウンターの上に置ききれないので床の上にも置く。
「お、おい………あれって、もしかしてヘルバウンドじゃねぇか?」
「あっちは、ホーンタイガーじゃねぇか!?」
「ブラッディバードまでいるぞっ!?」
こっちの様子を何となく見ていた先輩冒険者達が驚きの声を上げ、その声に反応した他の冒険者達もこちらを向いて、驚きの声を上げる。
「えっと……換金できます?」
「ーーーーは、はい!今すぐに!」
呆けていた受付嬢に続いて、他の職員が超スピードで作業を始める。
すると、
「おいおい。こんなガキ二人がヤベェ魔物なんて狩れる訳ねぇだろ。なぁおい。お前ら、何処の高ランク冒険者からその魔法鞄奪ったんだ?答えろよ」
ガラの悪い厳つい冒険者が文句を言ってくる。頰に赤みが指してる事から、酒で酔っ払ってるのか?
確かに疑問を持つだろうな。でも関わるのめんどくさい……無視するか。
「「………」」
「おいガキ共、無視したんじゃねぇよ!」
「「うるせぇ三下」」
「んなっ!?」
あ、つい口が滑った。ニーファさんもイライラしてるっぽいぞ。
「てめぇら、ガキだからって調子乗ってんじゃねぇよ……!」
そう言って、得物の大斧に手をかけて、こちらに振り下ろしてきた。
「お、おいガルツっ!それはやり過ぎだ…!」
仲間と思わしき奴に止められそうになるが、それを奴は振り切り、
「るっせんだよ!オラァ!」
振り下ろされた大斧は俺の脳天目掛けて……
ガキィンッ!
硬い金属音をあげながら、斧の刃は木っ端微塵になって散ってしまう。
「「「「………は?」」」」
俺は右手で斧を掴み握り潰した。
「喧嘩なら買いますよ?」
俺はニッコリと笑って、コイツに殺気を向けて放つ。
ゾワッ…………
「ヒィッ!?」
男は恐怖の表情で後ずさり、尻餅をつく。
「いやー。自分、売られた喧嘩は買う主義でしてねー」
「奇遇じゃな。我もこういう馬鹿な愚か者を破滅させる主義でのー」
ニーファも同調してドスを効かしてくる。……コイツも殺気を向けてやがるな。そんなに子供扱いは嫌だったか…
「まだ何か文句ありますか?」
「んん?どうなんじゃ?」
「ヒッ……ナマ言ってすいませんでした……」
おー。失禁しないだけマシだなこの冒険者。
「あ、受付嬢さん?換金出来ました?」
「………は!は、はい出来ました。合計80,000ロールです」
金貨8枚ね。
いやー。定番だよね?ギルドに行ったら頭悪そうな先輩冒険者に絡まれる奴。
まぁ、何の問題もなかったのだが。
「ふむ。これが定番と言う奴なのか?」
「そうだな!」
もう用は無いとギルドを出た俺達は久し振りに殺気を向けることが出来たので良い気分で宿に帰って行ったのだった。




