航海三日目
航海三日目。今日が最後の船旅で、昼過ぎにヒューマンド大陸の港街に到着する予定だ。
…………そう、予定だ。
今、カイオウ号の目の前にある海竜が航路を塞いでいるのだ。
シーサーペント。大海を泳ぐ獰猛な竜の一種で、蛇のような体躯を持つ海竜。
それが、三体。この巨船を囲んでいる。
正面に一体、船を挟むように左右に一体ずつ。
本来ならニーファの神竜オーラで近寄らないはずだが、あいつ人間形態の時に迷惑にならないよう力を完全に遮断しやがる術を構築しやがった。
俺はアイテムボックス内で常時発動する妨害の宝珠により、俺の魔力を乱し、相手に実力を測らせない事ができている。
だが結果的に面倒な蛇どもが腹を空かせて現れた。
乗客達は恐怖に震えて船室に避難し、船員や冒険者達は果敢にも船と客を守るためにシーサーペント達と睨み合っている。
そして……俺とニーファからすれば即終わるようでも、目の前の戦士達からすれば死線を潜るような戦いの火蓋が切られたのだった。
最初に動いたのは正面にいるシーサーペント。
「グルルルァァッ!」
船に向けて口から大量の水をビームの如く打ち出した。水魔法によるものだろう。
「うおおぉぉぉっ!」
ザバーーンッ!
その攻撃を、カイオウ号船長のザニックが防いだ。彼が手にしている武器は、本来なら武器じゃなくね?と思うものだった。
それは錨。五メートル近い大きさの鉄の塊を振り回し、時に鎖で遠距離に叩き込みながらシーサーペントと渡り合って行く。
カイオウ号に何度も衝撃を与えながら、シーサーペントは傷付き、赤き血を流していく。
「グロォォっ!」
「はっ!おいそこ、下がれ!」
「おう!」
「ギャゴォ…!」
「テメェら!海の男の力を見せてやれ!行くぞ!」
「「「「「「「おうっ!」」」」」」」
船員達はともかく、冒険者達も海の戦いに慣れた者が多いのか、経験豊富なようだ。しっかりと左右のシーサーペント二体と戦っている。
しかし、長い。時間をかけすぎだ。
一人で一体のシーサーペントを相手にしているザニックは他の奴と比べてズバ抜けているが……あ、今倒した。シーサーペントが断末魔を上げながら沈んでったぞ。
あ、俺たちは避難なんてせずに観客してます。
「にしても、遅いな。時間かけすぎじゃね?」
「……ふむ。お主なら難なく殺れるだろうが、普通の人間共じゃ難しいんじゃよ。一般常識を持て……」
「いや、神竜に言われても困るし」
「む………」
結局、残りの二体の内、一体には逃げられ、計二体を討伐できたのは僥倖だったのだろう。
「「「「勝ったゾォォ!」」」」
「「「「うおぉぉぉ!」」」」
そして、恐怖していた乗客達も安心して、歓喜ムードに戦いの跡が残るカイオウ号は包まれたのだった。
それから数時間後。予定より少し遅れて、カイオウ号はヒューマンド大陸の港街シーイールに到着しのだった。




