妹と四天王のお粥
3部と4部を結合させました。
内容に変化はありません。
食堂へと向かう俺と父と母。
母エリザベートは器用に歩きながら俺の頭を豊満な胸を押し続けている。というか、挟まれている。……無心だ。無心でいこう。親に欲情はしないぞ!たぶん。俺まだ六歳だし。
「さぁ、もうじき到着だ。……む?ムジカか?」
シルヴァトスの声が聞こえたのか、一人の女性がスッと現れる。
「はい。魔王陛下、エリザベート様、お勤めご苦労様です」
「うむ」
「こんばんわ〜」
「…おや?お目覚めになられたのですね?アレク様」
メイド服を着た乳白色の髪を持つ無表情な女性。名はムジカ。
宮廷メイド長で王族の身の回りの世話を主に行う完璧超人である。
「あぁ、ムジカさん。この通り、超元気です」
「それは良かったです。さぁ、お食事の準備は出来ておりますので」
「あぁ、ムジカ、アンデュラーに粥を一つ頼めんか?」
「アレク様のですね?かしこまりました」
そう言ってムジカはスッと影に隠れるように消えた。
………ん?消えた?マジ?忍者?ジャパニーズ?
「消えた…」
「あぁ、ムジカは影を移動できるからな」
影を移動して隠密行動をするのかな?
そして、俺たちは食堂の扉前に着く。
「さぁ、到着しましたよ〜」
エリザベートの声と共に扉が開く。
「お待ちしておりました」
扉の向こう側にいたムジカの声を聞きながら俺たちは食堂へと入っていった。
本当、このメイド神出鬼没だな……。
そして、食堂には。
「あ!お兄ちゃん、起きたの!」
食堂に入って早く飯を食べたい俺の目に写るのはテーブルにある椅子に座った一人の少女。
美しい黒髪に真っ赤な目を持ち、俺よりも低い身長の美少女。彼女の名はユーメリア=ルノワール。
俺の妹だ。ついでに言うと五歳児。
非常に言いづらいが、彼女は現時点の俺よりも強い。
「うん。おはよう!ユメ」
「おはよ!お兄ちゃん!」
仲良く挨拶をする俺たち。
「相変わらず仲良いわね〜」
「良いことだ」
親二人は微笑ましい物を見るようにこちらを見ている。少しくすぐったい感じだ…
「ようこそ皆様、我が食の舞台へ!お待ちしておりましたぞー!……って、おぉ!目覚めたのか!坊ちゃん!」
滅茶苦茶大きな声と共に現れた五月蝿い男。その体は山のように大きく、その筋肉モリモリな体を料理人の服で無理矢理しまった姿。その顔には一筋の剣の傷が付いている。
「おはようございます。相変わらず元気ですねアンデュラーさん」
その名もアンデュラー=アームストロング。魔王城の総料理長であり、魔王国の四人の武の守護者である四天王の一柱。《力》のアンデュラー。魔王に次ぐ力を持つ魔王国の武将である。
…何故、総料理長なのかと言うと、武人であるのに料理が得意であり、食材を求めて魔境に一人で突っ込み、すぐに高級で貴重な食材を持ってくるからだ。あとワンパンで若い竜を消しとばす。
一言でいうとマジ怖いけど頼りになる兄貴。
「うむ。息災であるなアンデュラー」
「これは陛下、夕食の準備は整っておりますよ!」
「うむ、それからアレクの飯は…」
「もちろん、病人である坊ちゃんのためにお粥をと、ムジカ嬢に頼まれましたので、準備は出来ておりますぞ」
そう言って出されたテーブルに出されたお粥の山。 ……多くないですかね〜?アンデュの兄貴?
「あぁ、三日も食べちゃあいないと思うんで、少し大盛りにしていただきました」
「あらあら〜それはさすがに…」
「ありがとうアンデュの兄貴!これでも、お腹減ってたんですよ!」
「そいつぁ良かったってもんよ!」
「「ハッハッハッハッハッ!」」
「…仲良いわね〜」
「お兄ちゃん元気〜!私も混ざる〜!」
「こらユメ。男の友情に手を出してはならんぞ」
「? はーい!」
そうして俺は、三日ぶりの飯にありつけたのだった。
……マジうまい。アンデュラーの飯は世界最高だ!身に染みるぜ!パクパクパクパクパク……