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魔王の兄は転生者  作者: 民折功利
第十章 非日常とお兄様

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悪魔漫才

お久

「クハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!」


 耳を劈く高笑い。

 脳がぐちゃぐちゃになるような錯覚を、王座にて俺を指差し笑う人型から受けながら、俺は呼吸を入れることなく笑い続けるゴミを睨みつける。


「うるせぇ!!!」

「のわっ!? ……声音で衝撃波とかお前ホントに魔族か!?」

「半神半魔異世界仕様だ」

「成程わからん」


 なんか出来た衝撃波で髪がブワッて上に上がって驚いている老人の名は、ローグライム。地獄の大悪魔であり、この城の主。あとなんか公爵らしい。


 ………久々の再会に感動もクソもない。

 なんだろう、有難みの一つでも感じられたら良かったのに。特に意味はないが。


 てか見た目が全然違うな。

 前見た時は……いや、ダンジョンで会った時は黒いモヤの集合体みたいな奴だったのに。今、目の前にいるローグライムの姿はイケてる老人って感じ。

 逆立つ白髪、浅黒い肌、尖った耳には鎖のついたピヤス、後頭部には四本の角、地獄産の高級素材を幾つも費やしたような黒いタキシード。

 サングラスの奥には紅い虹彩を持つ黒い眼球。


 人型だ。ダンディ?なジジイって感じ。


 多分、前回のあの姿は受肉していなかった故の姿だったのだろう。

 これがこの悪魔の真の姿か……なんかムカつく見た目してんな。


「クハハハハハ、まぁいい。久しいな坊主!!」

「どーも。ちょうど寄るタイミング出来たから寄ってやたぞ喜べ。飯はいらんぞ」

「安心しろ。我輩の飯を我輩以外にくれてやるわけがないだろう?」

「お前、性格悪いって言われない?」

「閻魔がめっちゃ言ってくる」

「草」


 地獄とか冥界のご飯を食べたら帰って来れないって言うよね。黄泉戸喫って言うんだっけ?

 ちょっとそういう詳しい事わかんないし怖いから天界でしか飯は食わん。あそこは死後の世界じゃないからね。……地獄って死後の世界なんか?この異世界の基準がわからん。

 確か……天界に神と天使が住んでて、地獄には悪魔とか鬼とか、冥界は魂と混沌……あ、死後の世界は冥界ってことでいいのか?地獄は別に……?


 なんかようわからんけど怖いからやめとこ。

 結局やめるに行く着くのだよ。


「というかお前死んだのか。我輩ビックリだぞ」

「死んでねぇ」

「え?」

「え?」

「……………死んどらんのか?」

「生物学的には死んだ」

「死んだのではないか!!!!!」


 死んだよ?

 ……あぁ、今なんか否定したな俺。ノリと勢いで否定しちゃったわ。まぁ肉体を破棄しただけで魂は平常だから死んで、は……………うーん???

 うん、考えるだけ無駄だわ。うん。


「まぁ、なんだ。今さ、新しい身体作るために色々と準備し始めようとしてんのよ」

「む、そうなのか。それで?」

「天界にはもう拠点あるんだけど、地獄にはないからこの家貰おっかなって」

「強情すぎん???許可するわけないよなぁ」

「冗談。部屋貸して?住まわせて?」

「玩具を壊さぬのなら良いぞ」

「即答。お前、気前良いな……好感度普通から良に一ミリ上がったぞ。喜べ。そしてありがとう」


 それ喜べなくね?と首を傾げるローグライムを横目に、俺は地獄での活動拠点が手に入った事に安堵の溜息を吐いた。

 いやぁ、こんな俺から攻撃できない世界で野宿とかしたくなかったのよね。え?異空間に行けばいいだって?死んだ今、現世組と鉢合わせたら……なんか言い詰め寄られそうじゃん?まぁ何れにしてもやってくる受難ではあるのだが……問題の先送りだ。

 先送りって良いよね(現実逃避)。


 ……あ、そうだ。


「なぁ、ローグライムって管理者権限とかある?」

「あるぞ」

「戦闘許可ちょうだい?殺害はしないから」

「……………あぁ、あの面倒な法か……別に破っても良いとは思うがな。良いぞ。くれてやる」

「あざす」


 地獄現住民が忘れかけてる法律って何よ。


「閻魔はルールルール煩いからなぁ……」

「まぁ閻魔大王って言うぐらいだからそうなんじゃないの?」

「いーや、アイツは異常だ。異常異常。息を吸うように裁判して息を吐くように説教する奴だからな」

「異常だな」

「だろ?」


 関わりたくない類いの神だな。


「どんな見た目なの?」

「幼女」

「ヤマザトゥ?」

「あれはどっちかと言うと少女だろ。こっちの閻魔はめちゃんこちっちゃい。武力なら我輩が勝つ」

「最高神に勝つなよ」

「五千年前にはKOしとったな」

「今更の話だがお前の凄さがよくわかったよ」


 大丈夫?地獄の公爵なんかに負けた最高神様、威厳とか保ててる?大丈夫?意気消沈してない?

 てかなんでヤマザトゥで通じんだよ。まぁアンテラもそういうの詳しいから気にするだけ負けか。

 現実逃避、最高!


「というか我輩とお前って元敵よな?何故にそんなフランクに話しかけてくる?お前狂人か?」

「自他共に認める狂人だよ」

「あ、認めるんか……てっきり否定するかと」

「るっせぇ」


 地獄で暇潰しする為に、一回だけ戦ったって理由のツテでこいつをあてにしたのだ。戦闘許可も貰ったので、ちょっと修行とかしてもいいかもね。

 

 ………アイツら、今何してんかな?


「我輩の前で他人を思うとは、良い度胸だな」

「……お前との会話ってポンポン進むな」

「ノリと勢いで合わせてるからだろ」

「同類か」

「であろう?」

「………同類やめます」

「ぬぁぜだ!!」


 激昂するローグライムを横目に、酷使しすぎた喉を癒すために小さく唸る。

 こんなに喋ったのは初めてかもしれない。……いやニーファと言い争う時はもっと喋ってるか?理由がなんか悲しい。復活したらもっと喋ろう。


「まぁいいや。ローグライム……贅沢な名だな。今日からお前のなはライムだ」

「穀すぞ?」

「じゃあイムな」

「吊すぞ?」

「じゃあロで」

「刺すぞ?」

「じゃあローグライムな」

「消すぞ?…………………………………………………………………………………………あっ」

「成程、愛称付けるのは諦めよう。えーっと……ゴミカス?」

「クソがァァァァァァァァァァァァァ!!!!」


 優位に立ってるから楽しい。

 ……でも相手は悪魔だしなぁ。気が付いたら手玉に取られてるんだろうな。色々と種族の枠を飛び出ているやべーやつだという自覚はあるが、悪魔との会話はやっぱり精神を使う。

 気付いたら契約書とか書かされてそう。


 ……書かせるか?


「書かぬぞ」

「心読むな」


 やっぱコイツ嫌い。


 ニーファこっち来ーい!!一緒に地獄でランデブーしようぜぇー!!!!

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