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魔王の兄は転生者  作者: 民折功利
第十章 非日常とお兄様

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廃城


 現在空を爆走……じゃなくて爆飛行中。

 後ろから迫り来る有象無象を相手に逃亡劇を繰り広げております、どうもアレクです。


「GRYUUUUUUUUUUUUUUU!!!」

「URAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!」

「くぁwせdrftgyふじこlp!!!」

「Guraaaaaaaaaaaaaaaaa!!!」


「うるせぇぇぇ!!!」


 形容し難い叫び声を上げて追ってくる地獄の魔獣たち。

 先程からずーっと執拗に追ってくる紅いワーム、怒りの表情で跳ね飛ぶ巨大猿、紫色の雲を纏った巨大な骸骨、緑色の炎で構築された暴れ獅子。

 他にもいっぱい居るが、この四体が一番目立つ。


 あぁ、攻撃できないのが厄介。

 一方的に殴られなきゃいけなくなるとか何だよ。これアレだろ?魔法とか逃走とかの二次被害で地獄の生物が傷つくのもアウトとか言い出すんだろ?

 どんだけ地獄大事にしてんだよ。現世の善良な一般魔族にも優しくしろよ。


「……………もっと上飛ぶか」


 埒が明かないので。

 黄色い雲が浮かぶ紅い空へと飛び上がる。眼下の異形達は天空に飛ぶ術は無いのか、天に向かって吠えるばかり。よっしゃ勝ったぁ!

 俺はしたり顔で頷きながら、剣山を飛び越えようと直進し……


 また阻まれる。


「はっ!?」

「KYOEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEE!!!」


 なんか顔面がぐちゃぐちゃしてる鳥来た……


 空も逃げ場はありませんのね。

 ふーん、成程。地獄って物騒ね。つか眼球飛び出てる鳥とか生物学的に有り得なくね?なんでモロに風圧受けて普通に生きてけるの?


 つか追いつかれる!!


 色々と疑問は尽きないが、取り敢えず全力飛行。

 叫んで飛んでくるゾンビ風コンドルを相手する暇は無い。


「足伸ばすな!嘴を近付けんな!!」

「KYOEEEEEEEEEEE!!!」

「きょえー!じゃねぇ!」


 足で掴まれそうになったり、嘴に啄まれそうになったりしたが、小柄な体躯を活かして旋回。

 あぁ!もう!ヤダ!コイツら嫌い!


 二度と地獄になんか来ねぇ!!

 目的済んだらすぐ天界に引っ込んでやる!!


「よしっ……剣山、越えた!!」


 俺ぐらいのサイズの生命ならなんて事はないだろうけど、巨人サイズだったら串刺しになってるような鋭い針を持つ剣山の山脈を、ついに飛び越える。


 よっし、後は撒けば……


「………ん?なにだと?」


 山脈を越えたら、鳥が追って来なくなった。

 俺を一睨みした後、咆哮を上げながら旋回して森の方へと帰っていく。


 ……縄張りか何かか?


「まぁ、良いか……追って来ないならそれで良い」


 てか、取り敢えず体力回復したい。

 ずーっと飛び続けたから疲れた。流石にね。ここまで全力飛行するのは久しぶりだよ。


 久々に見た黒い大地に飛び降り、立つのも面倒臭いので座る。黒い土が着くかなと思ったが、どうやら魔力の体に土汚れという概念はないらしい。

 汚れないのを活かす理由はない。

 俺はゴロンと寝転んで、真っ赤な空を見上げる。


「……随分と遠くに来たもんだ」


 ちょっと言ってみたかった言葉。

 でも本当にその通りで。感慨深くそう口ずさみながら、目を瞑る。

 瞑想。…………………………………すやぁ。


「はっ! ……あっぶね、寝るとこだった」


 簡単に寝ちゃう俺ってば禅宗の適性ないな。

 座禅しても無理そう。多分、途中で転移して逃げると思う。または住職さんをボコして逃げる。

 ……サイテーだな!


「ふわぁっ……《遠視》」


 欠伸を噛み殺しながら魔法発動。

 両目に魔力を通して視力を上げ、剣山に囲まれた盆地のようなこの地を見る。

 ……ほほう。ちょっと進めば廃城が肉眼で見れる距離にあるな。


 歩こう。ちょっとだけ魔力を無駄遣いにした感じがあるな……


「おぉ……」


 The廃城。

 ロココ様式とかゴシック様式とかとはまた違う模様の建築様式……なのか?かなり風化してたり、尖塔が折れてたりしてるから余計わかんないんだよね。


 だがそれよりも目を惹くのは……廃城かは湯気のように立ち昇る濃厚な魔力だ。

 集団で威圧する為に出してるとかじゃなく、一個人が何気なく意図せず垂れ流しているような魔力。

 魔法耐性とかSAN値とか低い奴らは殺到して発狂してパァってなるんじゃないかな。俺の周りのヤツらはちょっと身構えるぐらいの影響しか受けないだろうけど。


「多分……ここ、だな」


 恐らくここが、目的の悪魔───ローグライムの住処だろう。

 迷宮で接した覚えのある魔力も察知できるし。

 招待状も城を前にしたら、共鳴でもしてるのか不自然に震えてるし。ホラーかよ。


「突撃、今日の────今何時だ?何ご飯だ?」


 定番ネタが使えん。これは訴訟。

 錆びた鉄扉に手をかける。ドアノブを握り、自分の方に引いてみる。……開かない。

 まさかの押戸?引戸じゃなくて?


「……………マジかよ」


 押戸だった。

 引戸じゃないのか……認識の差か?玄関だと言ったら引戸が当たり前だと思ってんだけど……

 まぁ俺の家じゃないから別にいいや。


「おじゃましま〜す……?」


 なんやかんやでやって来ました悪魔の根城。

 室内は……あら、綺麗。てか外観がボロいから中身もそうかと覚悟してたんだけど?なんだこのチグハグさは。外にも力入れろや。


 豪奢な金のシャンデリアには魂を焚べた青い炎が灯り、壁際に並ぶ鎧は時折カタカタと揺れ動く。血を零しても気付けなそうな真紅の絨毯には魔法陣が幾つも煌めいている。

 少しホラーめいたものを感じるが、取り敢えず目的の悪魔を探そう。


「………………上か」


 上階から俺に向けて放たれた殺気。

 それを察知してすぐ、俺は螺旋階段の側面を駆け上がる。階段には罠があったので素直には登らん。足を踏み入れた瞬間に爆発……いや、違う、な?

 ……なんだこの巫山戯た罠は。手縫い人形になる罠って何?何処のホラーファンタジーだよ。


 掛け登った上階に着陸して、殺気の出処を探す。

 どういう訳か探知魔法がジャミングされて位置情報を割出せないので、肉眼で探すしかない。魔力の流れも悪いし、下手に魔法を使って暴発……なんて可能性もこの城ではあるかもしれない。

 極力、人力で。

 まぁ殺気が強すぎて方向とかすぐわかるんですけどね!あっちは隠れる気とかないでしょうし。


 やがて目の前に一際目立つ荘厳な扉が目に入る。


 俺はその扉に手を当てて、押す。ついに……地獄にまで足を運んだ理由である、奥で待っている殺気の主と対面する。


 扉の先には─────…

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