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魔王の兄は転生者  作者: 民折功利
第九章 掌の上のお兄様

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姉妹のお話

添削しました


「お兄ちゃんの企みを暴く?」

「その通りです!」


 夜の密会、ベッドの上で。

 ルーシィのあれこれを聞かされた日の夜、ユメは自分の寝室に義姉を呼んで話し合っていた。

 新しい姉、新しい妹。この二人は親密度を深める為に今此処に集まっており……今、共通の兄の話題で寝るまでの時間までに潰していた。

 あと数分もすれば、一緒に寝ようと言うだろう。


「目を離した隙に、私達に隠れて何かをしているお兄様……やっぱり家族に隠し事なんて、して欲しくないじゃないですか?」

「まぁ確かに何か企んでそうだったけど……」


 人のことを言えないルーシィは推測する。

 自分の中にいる神をどうこうするといった時にアレクの顔が悪巧みをしている時の笑顔だった。

 身体を乗っ取ったゼシアも、あれから眠ったように静かで気配も希薄……不気味なほどに。


 自分を取り巻くあれこれを深く考えるが、三千年という無駄に長い時間を眠った寝起きの頭と、元から優れていない彼女の頭では答えには至らない。


「お兄様が考えそうなこと……」


 ユメも推測する。

 深愛する兄の考えをトレースしようとルーシィよりも早い思考で巡らせるが、兄の可愛い格好やら意味の無い数式が浮かんだだけで意味を成さない。

 頭が良くても答えには至らなかった。


「「うーん……」」


 何分も悩んでみるが、ほんの少し狂った兄の思考回路を読む事は叶わなかった。

 兄に関してはかなり狂っている妹でも、生きる事に絶望して全世界に戦争を吹っかけた狂った姉でもわからないものである。困った困った。


 やがて、二人は考えることを諦めた。


「……もう寝ません?一緒に」

「うん、寝よっか」


 眠気に負けた二人はユメの布団を共に被って、隣り合わせで並んで寝る。


 無言、無音…否、柱時計が定期的に刻む音だけが響く夜の寝室。天蓋のカーテンに包まれた中で、二人は目を瞑り……ふと、隣を見た。見てしまった。

 当たり前だが目が合った。


 片や魔王の血族の証とも言える真紅の瞳。

 片や吸血鬼として、神の器としての影響によってオッドアイとなった赤と青の瞳。


「……ふふっ」

「……ははっ」


 互いに笑い合い、手を繋いだ。そして、二人の乙女は朗らかな笑みを浮かべる。

 確認し合うように、手を握り返しながら。


「姉妹なら……これぐらい、するのかな?」

「どうなんでしょ? でも確か……こういうの、お兄様の部屋の絵本に描いてありましたね」

「その絵本全年齢対象?大丈夫?」


 魔王と真祖、本来なら出会う事の無い時間軸にいた二人が、封印という代償をて手に入れた奇跡。当時の誰も思い至らなかった吸血鬼の道筋。

 それに不思議な思いを抱きながら、家族という枠組みになった二人は眠りに誘われる。


「おやすみ、ユメちゃん」

「おやすみなさい、ルーシィお姉ちゃん」


 新しく生まれた姉妹の上で、夜を守る神の月は嫌という程に鮮やかに、眩しく光を灯していた。

 ……誰もが寝静まった頃に、蠢く闇も、月は優しく照らしてまう。


【───全ては神の掌の上】


 真夜中の呟きは、誰にも届かない───…


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