タネも仕掛けもゴザイマセン
ニーファが魔王城に食客として居候し始めた。
一応、突然現れた竜の特徴がある銀色少女なので、俺が連れて来たとしても、軽い監視が付いている。
まぁ、特に気にせず好き勝手している。俺と一緒に。挙げ句の果てにユメも参加しているため、注意しそうにもできないだろう。
そして今。俺とニーファとユメとプニエルの四人で集まり俺の部屋で思い思いに過ごしている。
……あれ?男は俺一人?……ハッハッハッ。
よくよく考えたら、俺同年代の友達いないや。
ハハッ。
「おいアレク。暇だ」
どうやら居候の駄竜様は俺をダシに遊びたいらしい。まったく。こちとらナーバスな雰囲気だっつーの。
「あ、兄さん、私も暇!」
『ヒマー!』
全員が俺に何かやれと要求してくる。
そう言えば、ユメとニーファは直ぐに打ち解けた。ユメはまだ九歳児だし、ニーファは最高齢だからな……話を振るのも上手かな?
「今なんか失礼なこと考えたじゃろ」
「き、気のせいじゃぁないかな!?」
おぉ。怖い怖い。そんなに握り拳を作んなって。
………前世で得意だったアレやるか。
「……仕方ない。よーく見てろよ」
そう言いながら、俺はポケットから拳大の卵を取り出す。
これから行うのは手品だ。
俺が前世で唯一得意だったかもしれない奇術。この世界の魔法を組み合わせれば最強かも知れない。微弱な魔力すらも気づけぬように日々過ごしているので、完璧な手品ができるはず。というか、何度もやって確認済みである。
「今、ここに大きな卵がーーー「「いや、待て待て待て待て」」……………何?」
今からが良いところなのに。
「何故、そのポケットからそんなデカい卵が出てくるんじゃ!」
「そうだよ!お兄のポケットどうなってんの!?」
『すごーい!マシタすごーい!』
「俺のポケットは四次元ポケットなんだ」
「説明になっとらんぞ!」
まったく。四次元ポケットがわからないとは……まぁ、只の空間魔法のアイテムボックスをポケットに繋げただけなんだけどな。
「まぁ、それは置いといて、続き行くぞー」
「う、うん」
「置いて欲しくないんじゃが………」
はい。文句は受け付けません。
「今、ここに大きな卵があります。これに三角マークを書きます。これが目印です。そして、これを俺の合図と同時に消します」
「いや、無理でしょ」
「無理じゃな」
「まぁ見てろって」
そして俺は右手に持った卵を左手で隠して、
「……3……2……1…ハイ!」
すると、右手にあった三角印付き卵はどこにもない。
「な!」
「嘘でしょ……」
『すごーい!』
おぉ。驚いてる驚いてる。てか、プニエルさん。さっきからずっと『すごーい!』としか言ってなくないですか?
「ど、どこにやったんじゃ!」
「どこ!?ポケットの中!?」
ユメさん、俺のポケットを弄っても何も入ってないよ。
「どこにあるか知りたい?」
「教えろ!」
「知りたい!」
『知りたーい!』
「はい。そこにある」
俺が指差したのはユメの漆黒のゴシックドレスのポケットがある腰の部分。
「いや、流石にそれは……」
「い、一応確認…ってあった!」
ユメがポケットから出したのは、三角マークの描かれた印付きデカ卵。
「はい。ありがとうございました」
言いながら、俺は袖から大量のトランプを降らせるのだった。
「いや、そのトランプもツッコミどころ満載なんだが」
『マシタすごーい!』
「わぁ……」
「で、どうやってやったんじゃ?」
「タネを教えたらつまらないじゃん?」
「グッ…た、確かに」
まぁ、これだけは言わせてもらおう。
「タネも仕掛けもゴザイマセン」
ふっ……決まったな。
「最後がカタコトだよ兄さん」
「なにドヤ顔しとるんじゃ?殴るぞ」
『すごーい!』
最後まで締まらないなー。
物騒やつが一名いるが、無視。
っていうか、プニエル、すごーい!しか言ってなくない?言語能力低下?大丈夫?
『マシタ、教えて!』
あ、大丈夫だったっぽい。
教えないからね?そんな可愛く目をウルウルさせてもダメだよ?ユメちゃん。




