季節SS:ハロウィンin異世界
ここで日常成分を回復させるぞ!
時間軸的には……オークション前ぐらいを想定して書かせて頂きました。
ハロウィン、あるいはハロウィーンとは。
地球の10月31日に毎年行われる、古代ケルト人が起源と考えられている祭のことを指す。もともとは悪魔やサウィン(一年の始まり的なヤツ)などを崇拝し、生贄を捧げる宗教的な意味合いのある行事であった……
が、現代では民間行事として定着。祝祭本来の宗教的な意味合いはほとんどなくなっているようだ。
まぁ、そうだよね。
基本的にハロウィン=お菓子パーティor鬱憤晴らし程度の悪戯をするしか思ってないから、宗教とか歴史とか普通考えないよね。みんな楽しみたいもんね。
まぁ残りの説明は辞書でも引いてもらえれば一発でわかると思うので、俺は一言、最後に添えよう。
異世界に、ハロウィンは……ない!
「だから勝手に始める事にした」
……お、お菓子の在庫が心許ないから集めに行ったなんて口が裂けても言えないね!
というわけで、事前にこーゆーの暇だからやるよーって知り合いに連絡して開催した。
会場とかはない。勝手に俺が家に突撃するんだ!
はた迷惑?いやいや俺がルールだ!問題なし!
この日に可愛い魔物の仮装をして、『トリック・オア・トリート』という呪文を唱えて、唱えられた人はお菓子を渡さなきゃ悪戯されるって教えた。
一応、アンテラに頼って、肩を揉んだり腰を叩いてやったりしてご機嫌取りを行い、ハロウィンの仮装服の例がプリントアウトされた写真集を貰い、異世界人のハロウィン知らない勢に渡してあげた。
みんな割と楽しそうな雰囲気を感じ取ってくれたみたいで、ちょっと張り切ってたから楽しみだね!
「で、この服はなんじゃ?」
「キョンシー」
「え……露出度高くないか?」
「コンセプトです」
ニーファの仮装は、水着の上に横が丸見えなチャイナドレス、頭に中国風のあの帽子と御札を貼っつけたキョンシー風のコスプレ。造ったのは俺。欲望モレモレ?気の所為じゃないかな?
一応、冬に近付いているので寒そうだが、術式付与で温度調節はバッチリ。当人の羞恥心のみが問題として浮き彫りになるが、些細なことである。
あ、横乳見えてる……ま、いっか。
「お主のソレは……」
「幽霊」
「なんでブカブカなんじゃ!お主も我と似たようなの着ろ!こら逃げるでない!」
「やー!見るのは良いけど見せるのは違うー!」
俺ことアレクが着ていた仮装は、幽霊をモチーフにした白いブカブカローブで、幽霊の可愛い顔つきフードで頭を隠す。
全身が白い布オバケだった……だったんだ……
「奥様、ハサミです」
「でかした」
「おい待て何を───」
ジャキン!
「……え?」
ジャキン!!
「よし、これでOKじゃな」
「なんかスースーする!?」
幽霊ローブが大胆にカットされた挙句スリッドが加えられた。うん、男の子が着るものじゃないと思います。……おいそこの駄女神。仕事サボってまで俺の姿を笑いに来るな。帰れ!けーれけーれ!
「まぁ、お二人ともお似合いですよ?」
「「バニーガールが何か言ってる」」
「わざわざ言わないでくださいッ!!」
メリアは兎の獣人だからバニーガールだよ!
綺麗なスタイルが丸わかりだけど、主様的にはアリアリの有りなので許す。普段はメイド服でしっかりしてる人がこーゆー日にバニーガールコスとか悪くないよね。
まぁ着用になんやかんやあって、俺とニーファはお菓子を集りにいった。
悪戯の道具をいっぱい手に持って。
あ、切られた幽霊ローブは替えの物を裁断者の目の前で取り出して着替えてやった。唸られた。
メリアは異空間の拠点で今夜のハロウィンパーティの準備をする様なので集りは不参加。まぁ恥ずかしさが勝ったんだろうけど。
あ、プニエル達はなんかカグヤを連れてお菓子貰いに何処かへ走っていった。……子供の気力が凄すぎてお兄さん眩しかったです。
一番手。聖剣の勇者マサキ!
「Trick or Treat?」
「お菓子くれなきゃ絞め殺すぞ勇者ァ!」
「俗世に触れた神竜が物騒」
まず勇者の屋敷に訪れてみた。門にくり抜いたかぼちゃが置いてあって好感度高いよ。
「あれ、いつものハーレムは?」
「ソフィアは教会に用事、クレハは縁故の貴族に顔見せ、シリシカとミュニクは二人に名指しで種族的な依頼が来たからそれの対応中だよ。帰ってくるのは夜かな」
「そうか、お前は暇なんだな」
「普段は忙しいんだよ?今日はたまたま!」
成程、女の子たちの仮装は見れない、と。
まぁ無理矢理着させるものじゃないし……正樹がしっかり仮装してるから良いか。
うん、多分スケルトン。顔の横に骸骨の仮面をかけていて、肋骨みたいな骨の絵が並んだ服。背中には弓矢……某有名クラフトゲームの骨助だな?
あれだな。日本人だからか何だか知らんけど、仮装に力が入ってる。
こいつアキバで暴れる系パリピだったりした?
いや、そんなのが勇者になれるわけないか。
「はい、チーズケーキです。そこの商店街には店舗を出していない秘密の老舗が造った一級品です」
「マジかでかした流石は勇者!」
「我、お主の事を見直したぞ!」
「二人が僕の事をどう思ってるのか察したよ」
正樹が冷蔵庫から取り出してきたチーズケーキのホールを、俺が背負っていた持ち運び冷蔵ボックスに入れて保存する。
え、異空間があるだろうだって?
ほらほら、気分とか、風情とかがあるじゃない?
手にいっぱいのお菓子とか夢あるじゃん?
……あ、背中いっぱいのお菓子になりそう。
「んじゃな正樹〜。来年は……嫁候補(四人)の予定も合わせておけよ〜!」
「はー、いっ!?何言ってるんですか!?ま、まだ皆とそんな関係じゃ……」
「ウブじゃの〜」
「あれが普通なんだと思う。うん」
俺だったら面倒だから好意を寄せた子の気分が変わらない限り傍に置いとくよ! 離れた時はその時!
ニーファ(最終兵器)とメリア(専属従者)は死んでも離さん。冥土でも傍にいてもらおう。
さて、顔を赤くしながりも将来の事を考えている正樹を置いてって、次の人の場所に向かった。
二番手。鉄剣リョーマ!
「イタズラしに来た!」
「せめて定型文ぐらい言ってから来いよ!?」
マンネリは行けない思うの(=企画崩壊)。
尚、ニーファはお菓子を貰うつもりなのか、フランケンシュタイン風の仮装をしているリョーマの服の裾を掴んで下から彼の顔を覗く。
頭に綺麗にネジ刺さってるし、ツギハギの刺青も魔術で入れた様だ。服装もボロ衣だし、かなり本格的なもの。それを引っ張る我らがニーファ。
「の、の。お主は何をくれるんじゃ?」
「おい引っ張んな神りゅ……え?なにその格好。それで俺の服の裾を引っ張るのやめて?ほら、周りの視線が……」
「「計画通り」」
「お前ら俺の事嫌いだろ!?」
露出系キョンシー仮装神竜を前に、ハーレム持ちのリョーマはたじろんでいる!
こいつの嫁さん三人に伝えてやろ!
「おーい、クレアさーん。ルフさーん。シェーンさーん」
「「「はーい?」」」
「旦那が俺の嫁に欲情してるー」
「「「ガタッ」」」
「おいこら誤情報垂れ流すんじゃねぇ!?あ、ちが、違うぞ?ほら、神竜が……あ?」
現れたエルフと狼獣人と魔族娘に弁解をするリョーマだったが、既にニーファは彼から離れている。
「悪戯成功じゃな」
「計画通りだな」
「全部てめぇらの予定通りかぁーー!!!!」
リョーマの断末魔をBGMに、俺達は次の人の場所に向かうのだった。
あ、クレアさんがお菓子をちゃんとくれました。
美味しそうなシナモンロールとお酒だった。誰が贈り主なのか丸分かりだな……ハロウィンに酒はないだろ人類最強。社畜は脳まで酒に浸ってるのか?
三番手。孤高の魔工学師クロエラと氷心の魔女マール!
「え、ないよ?」
「…ん、あげる」
「「良かろう、貴様を血祭にあげてやる」」
俺とニーファは彼の秘密の地下研究室で決心した。
マールは、クッキーありがとう。ちょっと離れててね。
魔女コス…いや仮装をしたマールは帽子を深く被って、ブカブカのローブを着ているが女の子らしく可愛らしい刺繍やワッペンがついている。
だというのに。
クロエラはいつもの白衣に血糊をつけてるだけ。
「お前は普段からマッドサイエンティストだ!」
「普段となーんも変わっとらんではないか!!」
「そ、そんなぁ!?渾身の出来だよ!?」
は?渾身?何が?……いつもの魔工学への情熱と同じくらいの出せよ!自分には無頓着かっ!!
しかも!お菓子を用意してないだと!?
「これは血祭だな」
「じゃの」
「……あー、そういえばお菓子いるんだっけ。いやでも悪戯じゃなかったかい!?血祭なんでぇ!?」
今更嘆いても慈悲は無し。誅罰である!
「マイムマイムマイムマイム……」
「水の儀式は関係ないよね!?」
「マイムマイム、マイム……?」
「ニーファくんもわかってないなら真似しなくて良いんだよ!?」
クロエラの周りを二人で奇妙な動きをしながら囲う。ニーファはただ踊ってるだけだが、俺は違う。
「……イム。よし、ニーファ帰るぞ〜」
「む?え、終わったのかの?」
「うん……マール、こっちおいで」
「…? ん。わかった」
俺はニーファと手を繋いで研究室から出る。危ないからマールも手招きして脱出させる。
「え、何を……、足が動かない……!?」
クロエラの足元に構築された魔法陣。
俺は指パッチンで起動。
ドパァァァァァァーーーンン!!
赤い液体がクロエラの足元から湧き上がり、彼は全身赤まみれになった。
爆音と突然視界が真っ赤になったことでクロエラは気絶した。お前のことは忘れないよ…キリッ。
「……なんじゃアレ」
「…なにアレ?」
「魔物から搾り取ったレッドベリージャムの間欠泉だね」
日本語で言うイチゴのジャムである。
この世界には苺型の三頭身の魔物がいるのだ。レッドヘッドベリーって言う、小悪魔の羽とつぶらな瞳がついた苺の魔物。取り敢えずそれの狩場を見つけたので、魔法で集めてまとめて搾り取った。
在庫は他所に売っても有り余るぐらいあるので、非常にダメかもしれないが悪戯に使った。
ま、目覚めたらイチゴジャムの中で彼も幸せでしょう。イチゴ好きかどうか知らないけど。
そんなこんなでマールに手を振って、クロエラの事を全て放り投げ、もとい任せて次へ。
四番手。聖王子ミラノ!
「Trick or Treat?」
「Trick or Treat?」
「はい、うちの王族御用達の店が造ったプリンだよ。えーっと、子供達は抜きでいいから五つあげるね」
ミラノ好き。
「「はーい♪」」
「わぁ満面の笑み」
「……あれ、なんで子供達は抜きなの?」
「む、確かに」
どゆこと?
俺は神様の仮装をしているミラノに聞く。なにやら白い布を逸話の神様っぽく着飾ってて、頭に天使の輪が浮いてる。そこに魔術使うか。やる気高。
「さっきプニエルちゃん、デミエルちゃん、ウェパルちゃん、エノムルちゃん、タマノちゃん来たよ」
「あ、そうなんだ」
「あとお守りで小鳥のカグヤちゃん」
「ちゃんと言いつけを守っとるようで何より」
成程、子供達も此処に来てたのか……あれか、ウェパルが先導して行ってる感じか。あの子多分道覚えてるし。あの中でタマノちゃんと知能を競えあえるレベルには頭良いし。
プニエルとデミエルとエノムル?
可愛いから知能なんていらないんだよ!(勉強させると反抗されちゃうかもだからさせてない人)
カグヤはどうせ暇だろうし魔法的に逆らえないから強制労働。
馴染んでるっぽいから逆らわないと思うけどさ。
そんで、ミラノと楽しく談笑をし終えて、俺とニーファは次なる目的地へと向かう。
五番手。吸血鬼のルーシィ!
「Trick or Trick?」
「Dead or Alive?」
「お菓子いらないの!?」
いやつい癖で。なんか虐めたくなるんだ、君は。
あとニーファは何を言ってるの?
吸血鬼なのにドラキュラの仮装をしているルーシィ。似合ってないのに付け髭もしている。
凄く立った襟を気にしてるのか、そこを常に触りながら彼女は俺に籠を渡してきた。
「……て、手作りクッキー」
「「わーい♪」」
「あれ、知能指数低下してない?」
食べる食べる。お前のなら黒焦げでも食べたる。
「んまー」
「美味いの」
「アレクくん幼児退行してるよね?」
「してないよー」
クッキー職人にでもなれば?ってレベルの美味しさだな。……料理の取り柄はこれだけだったかな?
「よし、お前暇だろ、ついて来い!」
「うえっ!?」
「寝室に篭ってないでさ!」
無理矢理、ルーシィの手を引っ張って……
「ハロウィン、楽しもうぜ?」
声を失ったのか、ルーシィは顔を硬直させたまま俺に引っ張っられている。はぁ、これだから……
「ニーファ、こちょこちょ」
「うむ、こちょこちょ〜♪」
「にゃっ!?ひゃい!?やめ、やめっ……!アハハハハハハハ!!アハ、や、アハハハハハハハ!!」
よし、笑顔になったな。目がトロンとして焦点あってないし、涎垂れて身体がガクガクだけど、元気になったね!
あ、ルーシィから付け髭落ちた……まぁ、似合ってなかったから別にいらないな、行こう。
「次行くぞ次ー!」
「のじゃー!」
「アハハハ、キャ、ひゃいッ、にゃハハハ!!」
六番手。黒薔薇の魔王姫ユメ!
「何もせずに菓子だけ寄越せ」
「アレクに何もするなよ変態」
「うわっユメちゃんサイテー」
「初手で貶されるって何!?」
目の前にハレンチプリーストが現れた!
Q.どうする?
→揉む
→触る
→見る
「煩悩の塊じゃん!?」
「そんなに言うなら見せますよ、ほら♪」
「あ、汚ねぇ足」
「じゃの」
「はぁぁーーー!?スネ毛ひとつない真っ白な肌なんですが!?痣も黒子もない綺麗な足なんですが!?どこがどう汚れてるんですか!?えぇ!?」
「「心」」
「そっか心かー」
「いや納得するんかい」
そろそろルーシィがツッコミ過多で死にそう。
我ながら酷い言い様で可哀想だけど、ここまで言わないとユメの闇深は治らないと思うんだ。
……手遅れ?うん、そうだよ?今更?
ユメは魔王なのに聖職者の仮装をしている。創作的に祓われる側なのに祓う側に立っている。しかも堕天してるよこの聖職者。スリッド激しい、胸元空いてる、背中も大胆に空いてる、偶にチラ見せしてくる。こんな聖職者、現実にいねぇよ。
そして『お兄様大好きもっと見て♡』ってオーラが凄い。だけど一つだけ言わせて欲しいんだ。
「そういう事してると婚期逃すぞ」
「お兄様!」
「近親相姦はしないぞ」
「「………」」
「ルーシィ?」
「はっ!?うん、近親相姦とか常識的に考えてダメだと思うよ!わかったユメちゃん!?」
「ダメだこいつら」
「ダメじゃの」
俺とニーファは例の記憶を共有してるので、ある程度分かり合えるのでこういう時話が通じやすい。
「はぁ……お兄様、お菓子です。ご賞味ください」
「良かろう、許す」
「良かろう、処す」
「ニーファちゃん???」
うちの嫁がハイテンション。尻尾ゆらゆら可愛いので取り敢えず握っとく……可愛い声出すじゃん。
話を戻そう。ユメがくれたお菓子は……うん?
「愛を込めた手作りダグラカナンです」
こいつ、新生魔王城をお菓子の城として再現しやがった……!
主材料はクッキーか。手が込みすぎてて、食べるの勿体ないから防腐と不壊の魔法かけて宝物庫に飾っとくね。
「いや食べてください!?」
「えー、勿体ない……」
「うむ、美味いの」
「「「あっ」」」
……いただきまーす。
「味はマイナス」
「甘いから許す」
「この批評家たち辛辣っ……!」
「日頃の行いじゃない?」
魔王だからって全知全能じゃなくても良いんだ。料理の腕がそこそこでも良いんだ……そういうのは役割分担で料理人に任せて、お前は政務してろ。
メリアを買収して異空間に乱入して布団に潜って触ってくるのは金輪際禁止な。
「そ、そんな……」
「なんかユメちゃんと居ると魔王の概念が崩れる」
「諦めろ、これが王族だ」
「納得しちゃダメなやつだコレ」
膝をつき絶望に沈むユメを置いて、次なるお菓子をくれる人達の元へ向かうのだった。
ま、どちらにせよお菓子美味しかったよ。でも要らぬ愛を感じました。ご馳走様です。
七番手。実家の保護者たち!
「「「「Trick or Treat!」」」」
「よく来たな」
「みーんな可愛いわ〜♪」
「おいユメや、それはちと攻めすぎでじゃろ?」
「眼福じゃの……む、茶が足りん」
先代魔王にして父シルヴァトスと先々代魔王で祖父ジークフリード、母エリザベートと祖母ルミニスの四人は……年齢ゆえか、仮装はしてくれて無かったが、お菓子の用意はしてくれていた。
「儂からは欲張り団子セット」
「私は抹茶スイーツだね」
「うふふ〜、はいドラゴンアイス〜」
「餞別だ。名前は忘れた」
爺ちゃんは色んな種類の串団子が入ったセット、婆ちゃんが抹茶の小さなケーキとか色々。
母さんは何故か知らんがドラゴンフルーツを使ったアイス、父さんは…………なにこれ?
「お父様、このダークマターは一体……?」
「食べたら三途の川が見えそう」
「え、これ食べれるの?父さん大丈夫?」
「アレク、毒味は任せたぞ」
「おい」
四人でワイワイとやる理由。
父さんが皿に置いたのは、黒い瘴気を放つお団子みたいな固形物。
匂いは……うわ、意外と甘い。へぇ〜。
「……父さん、説明」
「そこの骨董屋で買ったぞ」
「なんで骨董っ……あ」
骨董屋。骨董屋ねぇ〜……
俺は仮装着替え中に部屋にいたある月の女神を思い浮かべていた。いつの間にか消えてたけど、後で新作ゲームでも掻っ攫って行こう、そうしよう。
夜天神には何をしてもいいと思ってる。
ていうか父さん、骨董屋でお菓子を買うな。魔王やめてからだいぶ脳トロけてません?
「取り敢えず、はい」
「えっ、あむ……!?」
隣にいたルーシィの口にダークマターを突っ込んでみた。吐き出さないように口を押える。
拷問?いいえ違います。
顔を青ざめながらも必死に咀嚼するルーシィの顔は、だんだんと……なんか、えぇ……?
「普通に美味しかった、だと……!?」
本人曰くゴマ団子っぽかったらしい。
取り敢えず頭が緩くなってきた先代魔王の口の中に酒を魔術的に煮詰めたカラメルを放り込んだ。
失敗作なので悪戯に入……入るかなぁ?
あ、他の三人から頂いたお菓子は大変美味でございました。母さんによる無許可写真撮影が始まったけど拒否って拗ねられても困るので好きにさせた。
さて、それじゃあ締めに行こうか。
「おかえりなさいませ」
バニーガールメイドの出迎えを受けながら、手を洗ってうがいをして椅子に座る。
異空間に入ったのは俺とニーファ、ルーシィとユメ。ハロウィンということを理由にユメは職務を部下に采配して、自由な時間をいつも通りもぎ取ってきたらしい。
ミカエラとヒルデが視界の端で死んでたのはきっと気の所為だ。ポーズ付きで写真撮られたからヒルデはかなり元気っぽいけど。
「マシタ!マシタ!」
「あるじぃ〜」
「ご主人様!」
「〜〜〜♪(マスター♪)」
「父様!」
そして、子供たち。
全員が以前やったゲームで着た魔法少女ミラクル・スライミーの仮装をしていた。
プニエルはピンク色、デミエルは黒色、ウェパルは青色、エノムルは緑色、タマノが黄色の服。それぞれのコスチュームが各々の特性に合ってて〇。
プニエルだったら天使、デミエルは悪魔、ウェパルはメイドでエノムルは萌え袖、タマノは和服って感じで統一感のない魔法少女仮装だった。
取り敢えず可愛かったのでペロペロキャンディを五人にあげた。舐める姿が大変可愛い。
「ピィ……(疲れたわ……)」
「あ、カグヤだ」
「む、非常食ではないか」
「あ、神鳥」
「わ、燃えてる人だ!」
「ピィ?(なんか好き勝手言われてる気がするわ)」
子供たちの引率をしてくれていたカグヤ。小鳥形態とは言え、見てわかる程に披露していた。
そして、こっちから聞いてないにも関わらず慰めて欲しいのかめちゃめちゃ喋り出す。
曰く。
プニエルが覚えている範囲の知り合いの家を粗方走り回って、お菓子というお菓子を掻っ攫っただの。
曰く。
ウェパルの案内を無視してみんな道をすぐ逸れるし、団体行動させようにも個々に動こうとするから手に負えないだの。
曰く。
鳥籠にしまわれてブンブン振り回されただの。
まぁ久方ぶりにこいつに同情というか色々と可哀想な念を抱かされた。取り敢えず生意気だからニーファが捕まえて羽根を毟っている。理不尽。
「今日は特別に、カボチャパーティです」
神獣で遊んでいる間に、メリアは料理を全て運び終わったようだ。
カボチャサラダ、カボチャキッシュ、カボチャグラタン、カボチャスープ、カボチャケーキ、カボチャプリン、etc……これでもかと、ふんだんにカボチャを使ったメリアの絶品料理の数々。
なんか一年分のカボチャ料理を見た気分。
ハロウィンだから特別仕様、今日を締め括る完璧な終わりでは?
「じゃあ、いただきます」
『いただきます!』
大変美味でございました。カボチャが全体的に甘かったので女性陣は大変満足、甘味大好きの俺もお腹がモチモチになるまで食べれました、まる。
その後。
「んにゅ…ぅ♪」
「んくっ、んくっ……血、美味しい……」
「お兄様ぁ〜」
「すー、すー、すー……」
「アレクぅ〜?」
パーティ中、恒例行事と言わんばかりに今回もニーファがいつの間にか取り出したお酒。
それによって酔ったルーシィは俺の吸血に励み、俺は襲う快楽に悶絶。ユメとニーファは人様の体に抱きついて顔を擦りつけ、メリアは酔い潰れて俺の膝の上で寝ていたらしい。
らしい、ってのは一部始終を知ってたのがカグヤだけだったから。お世話になっております。
子供たち?ニーファが酒を持ち出した時点で察した俺とメリアで歯を磨かせて寝かせたよ。
ぶっちゃけあの子らスライムと神の子だからお風呂には入れないで良いかなって思って今日は入れなかった。明日は入れる。
かくして、突拍子もなく始まったハロウィンは少ない犠牲を残して終わったのだった。
……あれ、悪戯そんなしてない?
ま、いいや。皆さんハッピーハロウィン!アデュ〜!
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