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魔王の兄は転生者  作者: 民折功利
第八章 吸血鬼とお兄様

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機兵剣閃

各神徒、組織構成員、神という順で投稿していきます。


 ◆VS兵装の神徒ソルト


「マサキ様!お待たせしました!」

「加勢するわよ!」

「にゃっ、邪魔するなです!」

「……やっと追いついたわ」


 戦闘中。円形ホールの中央部にて。

 長女神徒ソルトと斬りあっていた正樹の所に、シリシカの精霊魔法で浮かび上がってきたソフィア、クレハ、ミュニクの四人が加勢する。

 全員が戦闘態勢に入っていて、いつでも勇者を援護できる形だった。


「うん、ありがとう!頼むよ!」


 それを邪険に扱わず、戦力として、共に戦ってくれる信頼ある仲間として協力を受け入れる。

 拒む理由など無いのだから。


「ふん!今更増兵したって無駄よ!」


 兵装の神徒ソルトは、勇者パーティの集合を前にしてもおくびにも出さずに動き出す。

 手には水色のギザギザ付きの刀身、見た目はシリコンのような材質──尚、シリコンのような見た目なだけであって硬いという詐欺のような見た目の剣である──の刃が一方向に回転するブレードを持っている。


 ……彼等はこれを高振動ブレードと呼んでいるが、果たしてどうなのだろうか? いや、どうでもいいか。


 顔以外の全てが機械化している彼女。頬にも固定具なのかよく分からない機械器具があり、側頭部から角のように機械部品が生えている半人の神徒が、高振動ブレードを持って技を放つ。


「《術式起動:マスタースラッシュ》!!」


 ソルトの右腕に刻まれている魔術紋章が妖しく光り、その光が剣にまで浸透して強化する。

 右腕の穴から蒸気が噴出し、加熱される腕を少しでも冷やして威力を制御する。

 高振動ブレードは回転を加速させ、火花を散らしながら空間を震わせ───それを、ソルトは唐竹割りの要領で、正樹の聖剣を斬る。


 振り下ろされた刃は正樹の聖剣に触れ、聖剣は拮抗する間もなく粉砕する。

 バラバラになる聖剣の欠片。迫り来る機械剣。

 正樹は冷静に、新たな聖剣を錬成して壁とし、その隙を縫って強固な盾を作る。


「《聖刻の天護》っ!」


 時間をかけて作ることで硬度と防護力を上げた聖なる盾を多重展開し、ソルトを囲ませる。

 それこそ、あちらからこちらが見えなくなる程の物量で盾を作る。


「無駄ぁ!!」


 回転斬りで聖盾の幾つかを斬り、割り、幾つかは吹き飛ばして進路を阻む物を排除する。

 それはまさに鬼のような荒々しさ。

 それを前にしながら、さも読んでいたと言わんばかりに冷静に、状況を把握して戦う正樹。

 そこに、仲間からの援護が入る。


「《聖女の施し》」

「焼き廻せ《クリム・サンダー》!!」

「呪符ほいほい!なのです!」

「《水の精霊よ》!」


 聖女ソフィアの祝福が勇者の身を守り、クレハの真紅の雷がソルトを足踏みさせ、ミュニクが投げた呪符がソルトに向かって飛んでいき、シリシカの精霊魔法による聖なる清流がソルトを襲う。


「ふん!呪詛の類が機械兵たる私に効くわけないでしょう!!他は……うん、無理!」


 パーティの連携によってたたらを踏むソルトは、一度大きく飛び退いて旋回。

 しかし、強化された正樹が逃すわけがない。


「絶技《身一心・明星》!!」

【汝、我を剣となす】


 一瞬だけ、正樹以外にも、剣に宿る魂エインシアの声が聞こえた気がした。

 形状剣アインシュッドと勇者の心を一つとし、ただ目の前の敵を斬るためだけの心身一刀となる。

 踏み込み、されどその場に不動。虚空に向けて抜刀し……空気の斬撃が飛来する。


 この絶技は、発動時から一歩も足を動かせば発動出来ないという不動の技。刀身の周りにある空気を無作為に集積して一筋の斬撃と成す。


「なっ!?」


 直撃。翼型加速装置(ウイングスラスター)の左翼が切り裂かれ、飛行制御が出来ずに墜落する。

 客席に墜ちたソルトに向かって、追撃とばかりに先程放たれた真紅の雷と精霊の水が追撃とばかりに、発動から少し遅れて襲いかかる。


「きゃあぁぁ!!」


 着弾、感電、被弾、水没。


 そこにダメ押しと言わんばかりに、一枚の呪符が顔に貼り付いて。


「ぁぁぁぁぁぁぁぁあああああ!?」

 

 ソルトの身体で、唯一人間の特徴が残っていたその顔に、呪符による力……束縛の呪いがかかる。

 顔から全身にまで這う黒い布のような闇がギチギチに身体に巻いて動けなくする。


 彼女は呪詛は効かないと言った。

 機械兵には、確かに効かない。それは事実だ。だが人間の特徴を残していた頭部には効いてしまう。それがソルトの誤算であり、想定外の話だった。


 全身の機械武装を封じられたソルト、だと思われたが。


「小癪なぁ……!」


 怒り心頭のソルトは高振動ブレードの二刀流で呪縛を無理矢理、斬り裂いて破壊。

 身体から煙を吐き、排水口から体内に侵入した水を取り除く。


 顔に貼り付いた呪符を手で無理矢理引き剥がし、回復術式で顔面の怪我を修復。元の可憐な素顔に早戻りする。

 残滓レベルで残っていた束縛の呪いは膂力で破壊する。


「私の顔を!汚すなぁ!!」


 唯一残った人としての名残を汚されて怒ったソルトは吠え、瞬きの一瞬の内に破損した翼を再構築。

 勢いよく飛び上がって、ゲルヴェーアが開けた円形ホールの天井の穴の縁に足をかけ、そこから二刀流ブレードを振り下ろし、斬撃を飛ばす。


「死になさい!《術式起動:ダストクロス》!!」


 十字に切り裂かれる円形ホール。

 形状剣アインシュッドの刀身六割と、展開していた聖盾を全て消し去った。

 巻き添えを他の機械兵がくらったのは言うまでもない。


 その場所に向かって一閃、正樹が盾を足場にして天井付近まで飛んできた。


「はぁぁぁぁあああ!!」


 肉薄してからの聖剣の一振り、それは神秘の輝きを纏ってソルトの二刀流ブレードを粉砕する。

 しかし、王手を打てそうだったが危機を感じた正樹は一度後退して大きくソルトから飛び退ける。


 それは、ソルトは高振動ブレードを再度展開して……今度は、両手に二本。そして自分に追随する形で六本の機械剣を召喚したからだった。

 計八本の高振動ブレードだ。


「《術式起動:メテオブレイカー》ぁぁ!!」


 上空からの地上への落下斬撃。

 轟音と共に、隕石の如く落ちてくるソルト。彼女の目論見は落下の衝撃と八本の剣によって会場を破壊し、そのまま全てを沈めようとする事。

 仲間達への被害など度外視した攻撃であった。


 迎え撃つ正樹。ソルトの考えを先読みした上で、元のサイズに直った形状剣アインシュッドと聖剣を交差させて、ソルトの両手の二本剣にぶつける。

 残り六本の剣には、空中に展開した盾を押し当てて侵攻を防ぐ。足場が沈むのは困るから。


「邪魔をするな勇者ぁぁ!!」

「邪魔するよ!神徒ソルト!!」


 膂力のぶつかり合い。


「《剛力の光》!《増強の灯》!《保護の明》!」


 聖女の身体強化魔法が付与され、正樹の押し込む力が数段上がる。


「お、おぉぉぉ!!」

「く、んんぅぅ!! あぁあ"!?」


 ほんの少しの拮抗、からの吹き飛ばし。

 ソルトに押し勝ち、全ての高振動ブレードを衝撃で破壊しながら彼女を上空に吹き飛ばす。


 空気の層をぶち破る様な衝撃をくらいながら、ソルトは円形ホールの空いた空へ、会場兼本拠地【蜘蛛の巣(ダレニェ・フロート)】の遥か上空まで飛ばされる。

 翼型加速装置(ウイングスラスター)で何とか勢いを弱めて停止、なんとか滞空する。


「……はぁ。冷静に、冷静に……。よし!」


 冷却水で沸騰していた頭を冷却したソルトは、思考を正して冷静になった頭で此方を悠然とした姿で見る勇者と、同じく此方を睨みつけている勇者の仲間達を、ソルトも見る。

 そこに重なる、かつて見た大家族の幻影。


「───卑怯な手口は使えない。正攻法で、纏めて全てを斬り倒す……!!それが、私の使命……!!」


 戦への決心、自分のエゴ。それに挟まりながら、機械兵達の姉貴分たる彼女は猛進する。


 戦いは始まったばかりである。

 神徒ソルトは、再び勇者へと突撃していった。


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