神竜が仲間になった
『ところでお前は何故この山に来たのだ?』
神竜二ールファリスが俺に無難な質問をしてくる。
ハイ。現在、龍泉霊峰の何処かにある洞窟、神竜の巣らしき場所にいます。
絶賛、談笑中です。
「なんか、亀の爺に行けって言われた」
『亀の爺?………もしや仙老亀か?』
「あー?仙老亀?……神獣グラン・タラスクスとしか知らないな」
『亀のおじいちゃん!』
『うむ。そいつの本名が仙老亀だな。千年以上前は東方の内海に居たのだが……そうか、奴はのそう呼ばれておるのか…』
神獣の区別、ということは種族名が神獣、的な感じの集まりに数えられてんのかな?あの老害亀。
つか、グラン・タラスクスって本名じゃないの?種族名的な奴?
「ふーん。まぁ、いいや。そういえば、何で俺をここに運んだの?」
『いや、お主の魔力と神気が気になってな。まぁ、興味が湧いたと言える』
神気ねー。ぶっちゃけ魔族って悪のイメージだから、邪気の方があってる気がしなくもないんだ。
「なー?帰っていい?」
『む……帰るのか?』
「うん。飽きたし」
『そうか……よし、帰る前に我と戦え!』
ごめん。意味わからん。
「何で」
『いやー。ここ数年は戦闘をしてなくてな。数百年前ぐらいは、我を倒そうと人間共が群がってきたのだがな。それにお主と戦うのも面白そうだ』
「あーはいはい、めんどくせー」
仕方ない。一応、神竜だし、経験的な問題で戦ってみるか。ゴネられても困るし。適当にやっとくか。
『よし、我が勝ったらお主の大切な物を貰おう!お主が勝ったら我がお主の仲間になってやる!』
「よし。やろう」
神竜が仲間になるのはそれなりに心強いと思う。仲間は多いだけ無駄にならないしな。多分。失った困るもの?大切なもの?……考えても見つからんな。
ということで戦闘が開始した。
俺は魔神杖カドケウスを片手に魔法詠唱を一つ、そして密かに二つ追加で隠れて発動させる。
「《死神一線》」
闇魔法で作られた黒い刃が神竜の首を狙う。
ガキンッ!
しかし、首にあたるも、龍鱗によって防がれる。
おいおい。滅茶苦茶硬いな。
『ほう。オリハルコンでも傷がつかぬし、音も鳴らない我が鱗から音が鳴るとは……』
化け物だなあいつの龍鱗。さすが神竜。
『ふっ……』
神竜が俺の方に手を向けた。すると、俺の頭周辺の空気が揺らいだ。
そして。
グチャァ!
俺の頭は肉片となってしまった。
『む……しまった!手加減を間違えて死んでしまったか……まずいな』
『あー!マシタ!』
いやまぁ、死んでないけど。
「呼んだ?」
俺は神竜の背の上に立っていた。
『は?な、何だと?お主の頭周辺の空気を凝縮させて潰したはず……』
「物騒な技だな……。まぁ、お前が相手にしてたのは俺の幻影だよ」
『幻影……だと?我に見抜けなかったとでも言うのかっ!』
「うん。ザーコザーコ。俺の《幻影分身》に気づかないのがお前の敗因だ!」
『く……』
俺は《死神一線》に隠れて同時に使った《幻影分身》による魔法で、自分の分身を作り、同時に発動した《隠密移動》により気配を消して背に飛び乗っただけだ。
「《風神雷葬》!」
風と雷の融合によって生まれた殺戮魔法が、神竜を襲う。暴風が神竜の体を傷つけることはできなかったが、雷によって怯ませた。
怯ませた程度で終わる魔法じゃないんだけどな。
『ククク……素晴らしい魔法だ!しかし、これならどうだ!』
そして、神竜は俺に向かって口を広げて、
『《神殺龍皇砲》っ!』
莫大な光の熱線を俺に撃ってきた。
「《四面防御》っ!」
立方体の障壁が俺とプニエルを守る。が、耐え切れずにヒビが入り始める
ヤバイな………魔法詠唱が間に合わない!
障壁が木っ端微塵になり、俺は熱線を直に浴びてしまう。プニエルを自分を盾にして守りながら。
「ぐぅぅぅぅ……っ!」
凄まじい痛みが伴う中、俺は魔法詠唱を即座に開始し、戦闘をいち早く終わらせる為の一手をした。
「《滅却大砲》っ!」
殺意満々の攻撃砲により、いつまでも出続けている《神殺竜皇砲》に向けて発射。
『な、これを受けても立っていられるとは…』
結果、二つの魔法は相殺し、相打ちとなった。
「……ちっ。いってぇ。恨みのパンチ!」
『グハッ!貴様、これでも喰らえ!』
「効くかバーカ!」
『頑張れー二人ともー!』
しかし、痛そうな顔している俺たちはまだ戦い、竜の巣が半壊しかけるまで争い続けたのだった。
戦闘後。
『仕方ない。我の負けとしよう……』
「お?いいの?」
『まぁ、お主の隣に居れば面白そうだしな!』
俺たちは半壊して空が見える竜の巣の中にいた。
『よし!約束通り、我が仲間になってやる!しっかり世話しろよ!』
「え、めんど。つか、何でだし」
『我は基本働きたくないんでな。ゴロゴロしてたいのだ。よろしく』
「ニートかよ。つか、その巨体のままだと邪魔だよ。小さくなれ」
『む?人化したほうがいいか?』
「できんのならやって!」
『うむ……久しぶりにやるな……』
神竜が淡い光に包まれて、光が消えたらその巨体は見えなくなった。変わりにいたのは……
「これでいいだろう。よし、アレク!よろしく頼むぞ!」
ドヤ顔でこちらにサムズアップしてくる、長く伸びた銀髪に紅眼を持ち、小さくした竜の角を頭に生やし、可愛く動く小さな翼を持つ、銀色の少女が立っていた。
「なんで少女の姿なん?」
『わー!可愛ー!ニーファよろしくねー!』
「この姿は初めて人間の姿を真似た時の影響がまだ残ってるからだな。っていうかプニエル、ニーファとは、我のあだ名かっ?」
『うん!』
「よし、俺もそう呼んでやろう。こき使ってやるからな、ニーファ」
「ニーファ。ニーファ、か。ってまてまて!何我を働かせようとしとるのだ!この馬鹿!」
「馬鹿って言った方が馬鹿なんですぅー」
「なんだと!」
こいつとは楽しくやっていけそうだ。
こうして、ドラゴン史上最強の神竜二ールファリス改め、銀色少女ニーファが仲間になった。
……親への説明がめんどいな。




