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魔王の兄は転生者  作者: 民折功利
第八章 吸血鬼とお兄様

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やっぱり危険人物


 昼下がりの学園にて。


「お前を殺すのは得意だが泣かせるつもりは無いんだ信じてくれセリヌンティウス」

「なんだいそれ」

「前世の文学作品の名言」

「へぇ〜」

「名作への侮辱……」


 俺とミラノと正樹の三人で、お茶会中。


「自殺大好き人間には容赦ないよ俺は」

「命は尊いからとか?」

「自分の都合が悪くなったり恥ずかしくなると窓枠に手をかける様な身内がいたから……なんかもう止めるので一苦労して以降は、自殺志願者は嫌いに近しい感情を持っている」

「はへぇ……」


 正樹は聴かなきゃ良かったと顔を暗くする。


「ついでに述べると自殺以外で死んだ」

「あへぇ……」


 更に顔を暗くする勇者。ワロス。


「アヒャヒャヒャヒャ!……そう気にすんな、過去の話だ」

「何ですかその笑い方」

「唯一の友人がヘマした時に対する俺の笑い方」

「んー、酷い」


 ミラノからの酷評を受けながら、俺たちは置かれたクッキーを啄み、紅茶を啜る。


『うるせぇ!万引きバレて何が悪い!』

『アヒャヒャヒャヒャ!……あばよ親友。シャバで待ってるわァ』

『しんじぃー!?頼む!ぼかぁまだ死にたくない!それに未遂だから!ほんと!信じて警官さん!?』

『罪を償え低学歴』

『お前ほんと辛辣だな!?』


 思い出す価値もない回想だったわ。

 あ、詳しく言うと警察に既に捕らえられパトカーに乗せられるその時の会話ね。

 いやほんと、覆面警官の前でパピコを盗む馬鹿を見たのは初めてで笑いを堪えるのが……ふふ。

 傑作だった。


 さて、どうでもいい過去語りは置いといて、学園でお茶会をしているわけだが。

 学生でもない正樹が来ているのは勇者としての別件で訪れていたのを捕まえて此処に座らせている。

 やるべき事は午前中に済ませたとの話なので、今こうして茶会に応じているというわけだ。


「にしても、アレクさんあのニャル……なんでしたっけ?クトゥルフみたいな名前の組織見つけたらしいじゃないですか……勲章ものですよ?」

「【這い寄る闇(ニャルラトーテ)】な。目星を付けて探索してたら、紫の女と黒い男が警戒せず会話してた」

「……彼等なりに警戒はしてたんだろうなぁ」


 悟ったように紅茶を飲むなミラノ。

 確かに使い魔の警戒網とかも全て突破したが。


 名前も知らないかの二人は誰かさんの潜水艇で海に潜り……大海に浮かぶ浮島、それも文字通りの人工島へと消えていった。

 それに気付かない我らのガバガバさよ。

 なんで把握してないんだよ世界同盟。まぁ都市からはかなり離れてたけどさ。


 潜水艇に付けた追跡装置は、自立移動とか出来ないのでもうお役御免だと思う。

 でも潜水艇がある場所=敵の所在地だからわかりやすくて良か。


 この件は魔王ユメと両親二人、世界同盟の代表五人には既に話を通してある。

 魔王国はともかく、世界同盟には内通者や組織の関係者が居ることを踏まえて、ある程度信頼はある種族代表の五人にだけ報告した。

 各員が己の信じる者だけに伝え……それが正樹やミラノにも通達されたので、今こうして会話に出せる。


「根回しとかその他諸々も全部上層部がやってくれるらしいから、それまで呑気に茶でも飲もうぜ」

「現在進行形ですけどね」

「んー、これどこの紅茶?」

「トウマさんから日頃のお詫びで貰った。産地も獣王国らへんじゃね?」

「「なるほど〜」」


 フェメロナの暴力沙汰関係である。

 ……いやまぁそこまで大袈裟な事では無いけど。


「あぁ、それと。冒険者組合に掛け合ってSランクを三人連れてくるって話ですよ」

「……な、なるほど」


 現在のSランク冒険者は三人のみ。

 その全員を呼び出して来てもらうと考える程、かの組織は深刻な相手なのだろう。


「《鉄剣》に《夢幻創師》……あと《塔の魔術師》の三人だったかな?」

「俺はリョーマしか知らないけどな」

「あはは。彼等の中では比較的マトモですよリョーマさんは……」


 そんなヤバいの?Sランクの性格って。


 《鉄剣》のリョーマ。

 人類最強という肩書きをもつ転生者で、元社畜の酒好きハーレム野郎だ。

 ぶっちゃけ大会でニーファと戦った時も手抜いてた上に、余興だからどんな強者を前にしても自重して戦ってた節があるからな。


 現にデコピン(・・・・)だけで大きな魔獣が吹き飛んで森が粉々になった、その跡地を見たことあるし……


 もし仮にアイツに命を狙われたら、今の俺には異空間に籠るぐらいしか選択肢がない。

 そう断言するね。


「まぁ人類強者の皆さんとかは置いといて、実りある確かな話題をしましょう」


 正樹が俺に向かって顔を突き出す。


「あの吸血鬼ちゃんはアレクさんの何ですか?」


 …………………。

 …………………………………。


「…………壊れない玩具……?」

「倫理観に問題が」

「大丈夫?犯罪してない?」

「うん」


 冗談だよ安心してくれたまえ。


「ぶっちゃけ彼女なんなんです?何処か普通の吸血鬼には見えませんが……」

「マサキくん、なんでそう思んだい?」

「勇者の勘、ですかね」

「ふーん……まぁこれは推測だが………」


 その時。


「いや!いやです拒絶します!?」

「そんな事言わずに!ボクの実験に協力してくれるだけで人生幸せになれるから!!」

「なんか詐欺っぽい!?」


 話題のルーシィが……何故かクロエラに追いかけられてる。

 吸血鬼の脚力で狂人を置いてこうとする彼女だったが、クロエラは小型戦車に乗りその機動力で笑いながら迫って来てるからもう恐怖以上の何ものでないな。


 小型戦車は、本当に小さい。

 一人乗りで、見た目は本来の物と同じだが下半身を埋め込める程度の大きさしかない。


「いや何あれ」

「冷静に思考したけど何あれ……?」

「止めた方が、いいんじゃない?」


 三人揃って食べ物に触れる手を止めて、立ち上がろうとすると……

 ルーシィが俺に気付いて保護者を見つけた顔をして全力疾走して逃げてくる。


「助けてアレクくん!死にたくない!?」

「あぁ!アレクくん!彼女を捕まえてくれ!」


 二人に要請されちゃったよぉ。


「どっちに与すればいいと思う?」

「「ルーシィさん」」

「やっぱりぃ?」


 満場一致の決断で、俺が重力操作によりルーシィを引き寄せて救出。

 ミラノがクロエラが走る地面を融解されて進行を妨害させた上に事故らせる。

 正樹は聖剣を飛ばして、テコの要領でクロエラを戦車から離脱させる。


「きゃっ!」

「うわっとぉ!?」


ドガァーン!!!


 俺の胸に抱かれるルーシィと、対比的に戦車の爆発に巻き込まれ宙を舞うクロエラ。

 学園に響き渡る爆音で校舎が震動し、小型戦車の成れの果てから生存を果たした阿呆。

 華麗に着地しようとして失敗し足をくじく。


「あっいったー!?」


「悪いヤツは放置が1番!」

「賛成」

「一応マールさん呼んできますね」

「いってら〜」


 正樹が痙攣するクロエラの横を通り去って氷のストッパー会長を呼びに駆ける。

 氷漬けの運命は避けられまい。


「で、何があったの?」

「目が合ったらキラキラした目で追いかけられた」

「アイツ、ホラー路線でも目指してんのか?」


 怖すぎだろ。

 目と目が逢う瞬間に襲われるって誰もが体験したくない恐怖体験だと思うんだ。

 有名曲が一気にホラーになる。


「まぁ……なんだ。根っから悪では無いんだ。ただ知識欲に純粋で従順で理解不能なだけで……」

「うん、うん……否定はしないよ? でも……あれは流石に怖すぎるよ……っ!」


 トラウマ植え付けられてない?


「ぐ、ぐぐぐ……!!」


 クロエラが再起した。


Q.トドメを刺しますか?

 →世界の為だ仕方ない……せめて笑顔で送ろう!

  いやダメだろ常識的に考えて!やれ!

  お前の脳ミソは再利用してやる、さぁ死ね。


 ふむ。どれを選ぶべきか……


「死ぬ未来しか見えないよやめてくれないかな!?」

「あれ、口に出てた?」

「うん」

「凄い真剣な顔で物騒な事、言わないで……?」


 あらヤダ恥ずかしい。

 これは有言実行せねばいけないのでは……?


「アレクくんアレクくん。ボクを殺すって展開はやめにしないかい?」

「それは出来ない相談だなぁ」

「なんで!?」

「ヤラカシが多いんだよ」

「ぐふっ……!」


 言葉の刃がクロエラに致命傷を与える。

 勿論奴が勝手にダメージを受けてるだけでそんな刃放ってもいないが。


 とりま立ち上がらせて反省会開始。


「えーっと、いきなり襲ってゴメンね?」

「は、はい……」

「でも人類の進歩の為には必要な事なんだ!信じて全てをボクに任せてくれ!」

「えぇ……」

「反省って言葉知ってる?」


 その後。


「…《氷像化(スカルプチャー)》」

「ちべたっ」


 正樹が連れて来た氷心の魔女マールによる氷獄制裁によって沈黙。

 小一時間ほど物言わぬ氷像になってしまった……


 まぁ妥当な処罰だよね。


「……またアレに狙われたら、俺を呼んで」

「お願いします」


 ルーシィを抱き寄せていた腕を解いて、彼女を自由にする。

 ほんのり顔を赤くするのやめてください。


「んー、もう午後の授業サボるか?」

「え、いいの?」

「咎めやしないさ……マサキとミラノ、口裏合わせよろしく」

「「いや」」

「………」


 物分りの悪いイケメンは嫌われるぞ(偏見)。


 そして、俺はルーシィを連れて学園を出る。


「……あれ、ニーファちゃんは?」

「カグヤを連れて飛んでった」


 そう、あの女は小鳥を抱えて空に消えた。


「ちと用事ができた」

「ピィ!?(妾は行きたくないわ!?)」


 とか言ってそのまま大空に飛んでったから、止める隙も無かった。


「なにしてるんだろ……?」

「さなー?」


 その後、ルーシィと二人っきりで世界都市を観光して……プレゼントを買ったのはまた別の話。


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