災害の連戦
まず俺たちが突入したのは、魔力濃度の高さによって木々が進化し、真っ白に染まった森『白森』だ。
そして、入って直ぐに、
「エンカウントぉっ!!!」
現れたのはマンティコア。
虐殺大好きな人間似の顔にライオンの巨体、蠍の毒尾を持つアイツだ。
「ゲヒャヒャヒャッ!」
気持ち悪い鳴き声で走り寄ってくるマンティコア。しかも親子連れ。
計三匹のウザい奴らがつき向かってくる。
父親っぽいのが俺に毒の尾を向けながら突っ込む。
しかし、俺とプニエルはその程度で止まらない。
瞬時に得物の魔神杖カドケウスを取り出し、そのまま全力疾走で、魔法を唱える。
「《灼熱溶脚》っ!」
白くなる程、燃え盛る炎を纏った俺の足が、マンティコア(父)の顔面を溶かしながら蹴り捨てる。
「グ、グギャギャガガっ!?」
そして白い炎で全身を焦がした人面獣父がゆっくりと倒れた。
ふむ。普通なら結構苦戦するはず……弱い?
「グギャァ!」
夫を殺されて怒り狂った人面獣母と子が襲いかかってくる。
「悪いな!親子諸共楽になってくれ!《風棘流路》っ!」
凝縮された風の棘がすれ違いざまにマンティコア(母と子)を串刺しグロ描写に変えてしまう。
「ふーーー。勝った」
『わーしゅごーい!』
圧勝だ。しかし、たった二手で決まるのは異常だな……もっと魔法行使すると思っていたのだが。
疑問を頭に浮かべたまま、俺たちは山頂に向けて走り去っていく。
その道中の事を一言で語るなら、『災害級の奴等との連戦』、だ。
マンティコア親子の次は、かのデス・ブラットハント、軍隊狼にデビルフロッグ、彷徨える廃人、ジャイアントイーグルなどの面倒な奴と連戦しまくった。
デス・ブラットハントは、ウラバラの森で殺りあった、あの毒虎。今回は番いだった。クソ……俺よりも早く恋人見つけやがって……と怒りの炎をぶちつけて、森ごと燃やした。森林火災は大惨事になる前になんとか食い止めた。まじ焦った。
軍隊狼は、黒い毛を持ち隊列を持ってコンビネーションを得意とするグレイウルフの上位種共。もうね。数の暴力はいかんよ?だから、ゴーレムを大量に作って戦争させた。軍配はこちらに上がったぜ。はん。たかが狼が、俺に勝てるとも?と、油断していたら別の軍隊狼共に奇襲をかけられた。
デビルフロッグは、三つの頭がある巨大な蛙で、力士が五人呑み込まれても余裕がありそうな巨体を持っており、様々な毒を使い分けて戦ってきた。長く伸びる舌が俺の体を舐めてきて、体が痺れて動かないところをプニエルが瞬時に癒して遊ばずに即殺した。
彷徨える廃人は、人型のアンデッドが長き年を経て進化しまくって生まれた負の存在で、今回のは巨人が素体の奴等だった。手に持つ大剣が森を綺麗に伐採しやがるからやばかった。まぁ、耐久値も低かったので、遠くから風の刃でシュパ!と瞬殺してやった……と思ったら、なんか再生してのっそり歩いてやがった。
ジャイアントイーグルは、巨大で美しい羽を持つ鷲で、大きい羽を矢のようにて撃ってきた。攻撃しても避けられたり、口から凝縮した風の球を撃たれたりと、超高空での戦いだったので、周辺被害が最も多かったと思う。
本来なら、軍隊を率いて戦うタイプの災害級の魔物なのだが……意外と呆気ない戦いだった。
これは、俺が可笑しいのだろうか?
ありえる。あの神獣グラン・タラ……長いから老害亀でいいや。アイツは俺のことを神に近き少年とかほざいていたから、きっとヤバイ分類に含まれているだろう。ドヤァ。
現在は、龍泉酒が湧き出る泉に到着した。高濃度な酒の匂いがプンプン漂っている。
ヤバイ。もう酔いそう………
現にプニエルは、
『プニュ〜〜。………zzz』
眠りました。
「う……」
興味本位で龍泉酒を採取したのは良いのだが、酒臭が凄すぎて、もう倒れそう。ってか、ヤバイ。
やはり、連戦での疲れが蓄積したのだろうか?それが酒臭とコラボしてヤバイ。
そして、俺も酔いで眠りそうになった時に、
視界の片隅に、巨大なトカゲのような影を、立ち昇る湯気の影から見たのだった。




