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魔王の兄は転生者  作者: 民折功利
第七章 新婚旅行とお兄様

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古神との会合


 稲荷子金神社。

 その裏側に存在する異空間へと俺達は足を踏み入れた。


 金色の霞が漂う和式回廊。

 立ち並ぶ襖が真っ直ぐ伸びて、俺達の進行方向を前方だけへと制限する。

 朱と白をメインとした内装が神社の一部なのではと錯覚させ……

 空間全域を占める濃い神気が頬を撫でる。


「………」


 自ずと無言の足取りになってしまう。

 子供達はメリアの手元に移り、大事に抱えられた彼女達は興味深げに空間を見渡す。

 ニーファは何も言わず、事の成り行きを見守るつもりか静かに俺の後についてくる。


 タマノちゃんも俺の頭から降りて、小走りで俺達の前を進み先導する。

 霞がかった回廊を数分かけて進み、やがて視界が大きく開ける。


 目の前に立つのは巨大な朱色の扉。


 タマノちゃんが片手をあげると、独りでにそれは開いて俺達を出迎える。

 開かれた世界の先には────────




 膨大な神気の奔流。

 それに飲み込まれ、メリアが後退り、俺とニーファは意に介さず歩を進める。


 巨大な宴会場のような空間。

 畳の上に机や座布団は置かれてないが、代わりとばかりに壁際には高く積み上げられた金銀財宝があり、王冠や勾玉、神剣やら鎧まで無造作に存在しているのが遠目からでもよくわかる。


 その奥には、タマノちゃんと類似点の多いちびっ子狐面達がズラリと並び。


 見上げなければ視界に入り切らぬ白金の狐が腰を下ろしていた。

 太く逞しい九つの尻尾と、叡智を感じる瞳を此方に向ける獣。

 獣だ。獣の姿を持つ神の一柱。

 それも高位に位置する存在。


『おおお……よくぞ参った客人達よ………』


 タマノちゃんが止まり正座する。

 それに倣って俺達も止まり……しかし、正座はせずに見上げると、口を開く狐。


「どうも」

「誰じゃお主」

『………少年は良いが、神竜よ…貴様酷くない?』

「いやじゃって初対面じゃろ」

『我、時空神なんだが?』

「………あぁ、お前か」

『なんだコイツ』


 知り合いかな?


『こほん……客人達よ。我が名を伝えよう。

 我の名は時空神タマモミヅキなり……創造神の手によって直に生み出された古神である』


 うわぉ。時間と空間を司る神様来ちゃったよ。

 てか名前。日本史で有名な妖怪とは無関係ですよね?そうであってくれよ?

 いやここ日本じゃないから無関係かな。


 てか、これ転移で逃げるの無理じゃね?

 空間魔法に関しては格上じゃねぇの?


「アレクです。宜しくお願いします」

『うむ……存外礼儀正しい子ではないか………まったく。月の娘が言うよりも良さそうだ』


 ふーん。見た感じアンテラよりも高位に位置しそうな神なんだけど?

 でも最高神ではないっぽい……?


『我ら《十天神》は本来なら位階などに当て嵌る存在ではない。そんなもの唯の制度。天父も地母も閻魔も自らのルールに縛られているだけよ。

 破壊神はあの性格ゆえ別枠だかな』


 なにそれなにそれ。

 てか思考読まれた?


「質問よろし?」

『好きにせよ』

「《十天神》って何?」

『……なんだ知らんのか。

 創造神が世界の管理の為に最後に創造した十の神の事だ。まぁ、総称にすぎんがな』


 ふーん。

 てか創造神は別に居たのか。天父神が創造じゃなかったのか?


『天父は創造の力を惜しみなく与えられた云わば創造の継承者だ。《十天神》の創造後、(くだん)の神は力を使い果たし虚空に霧散した』

「………」


 なんかさっきから思考読まれてるのは置いといて……天父神って割とヤバい敵だな。

 かなり念入りに気をつけよう。

 てか創造神様はもう死んでるのね。


「破壊神は違うの?」

『あれは創造神と共に無から生まれた原初だ。我らよりも格上であり、創造の力を受け継ぐ天父ですら叶わぬはずだ』

「すげぇ」


 やっぱり破壊神って凄いんだね。

 確か冥界を縄張りにしてるんだったよな……


「あ、じゃあ二つ目の質問」

『なんだ』

「なんで呼んだ?」


 これ大事。なんで俺達を誘い込んだのか不明。


『簡単な話よ……少年と神竜に用があったからだ』

「「ん?」」


 俺とニーファが目的?

 メリアは空気になる事を徹してるが、俺も空気になるレベルで気配薄くしていいですか?

 てかウチの子たちつまらなそうにウトウトしてるですけど。


『まず少年よ。貴様、魔神の力を持っているな?』

「………? あぁ、はいはい」


 言われて直ぐは気付かなかったが、確かに俺は魔神の力を持つ神器を持っている。


「これ?」


 魔神杖カドケウス。


『………二つも所持しているのか』

「あれバレた?」


 凄いなこの神。目が鋭い。


『魔神は《十天神》の一柱である古神だったのを知ってるか?』

「いや全然」


 お前、十天神とか凄そうな神の一派だったの?

 まぁ納得だけど……

 いや、ごめんって……そんなに怒るなよ。


『そうか……まぁいい。その縁、大事にするがいい……後に響くぞ』

「ご忠告ありがとうございます」


 素直に感謝する。普通の助言だったし。


『次に……神竜よ』

「なんじゃ駄狐」

『相変わらず我に対する扱い酷ない?』

「悪事を働いて我を唆したのが悪い」

『……いやホントにそれは悪いと思ってる』


 やっぱり玉藻前的な要素あったのかよこの神。

 いったいどんなヤンチャな行動をしたんだ……


『まぁ、昔の事は忘れよ。貴様に言いたい事は……いやまぁ言わなくてもいいんだが本当は』

「なんじゃ早う言え」

『貴様が嫌いな雌がこの島にいるぞ』

「……………………………うわぁ」


 ニーファが本気で嫌そうな顔してるぅ。

 いったい誰なんだその雌って……


『夫の事を思うなら、しっかり相手してやれ……面倒なこと変わりないがな』

「本当じゃ……お主といい彼奴といいマシなのはおらんのか」


 なんか波乱の予感がするっ……!!

 俺の知らぬ所で怒涛の展開になってる……!


『ところでタマノ……お前、なぜに幼き子に呼びかけたのだ?』

「……神気が暖かかったから」

『………そうか。珍しいものを見た』


 ケラケラと笑うタマモミヅキは、子を慈しむ目でタマノちゃんを見て、尻尾一本で器用に撫でる。

 少しくすぐったそうに頬を緩めるタマノちゃん。


 そして、神は頼み事を述べる。


『少年よ。一つ頼み事を良いか?』

「はぁ……なんでしょう?」

『すっごい言い難いのだがな……』


 意を決して、唾を飲み込み要求を述べられる。


『個人的にお前の異空間を少しだけ見せてほしい』

「……はぁ?なんで?」


 プライベート空間を晒せと?

 理由が分からんでござる。


『我は時間と空間の神だぞ?

 この異空間も我が作ったものだが……貴様の空間魔法、特に異空間の作成は我に及ぶものとみた』


 けっこう絶賛されてるが………要するに。


「自分が負けてると思いたくないから事実を突きつけられる前に自分から見せろと要求したって事?」

『ズバズバ言うな少年』

「物事をハッキリ言わないと生きてけない世の中なので」

『そうか……で、答えは?』


 期待するような目で見られてもなぁ……

 はぁ、仕方ない。


 時空神の座を奪われそうで焦ってる古神に手を差し伸べますか……古神の座なんていらねぇよ。

 まったく。心配する方向性がおかしい。


「妙な動き見せたらニーファを動かしますからね」

『それで構わん。我の興味本位もあるが、子供らの教育と言っても過言でないからな……』


 そう言って、周りに群がる狐面たちを流し見る。

 やっとこの子達に関してもツッコミできるのね?


「子沢山?」

『気付いたら尾から生まれるようになってだな』

「どういうことだよ」

『知らん。だが、数千年も前からポンポン生まれる癖に知能とかはゼロに等しくてな。数が多くて命令に従うしか脳のないお荷物にすぎん』

「えぇ……」


 えぇ………?

 子供に対する評価ならクソがとか言いたいけど、本人からしたら知らないうちに産んでるようなものだからな…………いや怖いなホントに。

 でも殺さずに手元に残してる当たり優しそうな雰囲気あるよね。


『で、他の子供とは違う別格の存在がそこのタマノだ』

「お前、凄かったんだな」

「んくぅ……」


 取り敢えず頭を撫でてやる。

 そうか、所謂突然変異種がタマノちゃんか。


「なぁメリア」

「は、はい!」

「うち家さぁ、他人に見せれる程度は綺麗になってるよね今」

「その点に関しては大丈夫かと」

「おけー」


 決まりだな。

 コネクション的な意味合いで仲良くなるのに損はないだろう。

 それに、要望は少しだけ見せて、だし。


「じゃあ、行く?今から」

『構わん……少年、お前この短時間で我に対する態度が砕けてる気がするのだが?』

「ニーファが敬う必要はないって」

『神竜ぅ!?』

「事実じゃろうが」


 この神様おもしろいな。


 んじゃあ異空間にご招待……する前にさ。


「アンタの神気のせいで入口が開かんのですが」

『む……そうか。今開きやすいようにする』


 苦情を入れると、しっかりと受け入れて俺達の周りの神気が除けてくる。

 ここだけ無くなったような感じだな。


「そい………普通に入ってくる感じ?」

『なんでも構わん早うせい』

「はいはい」


 門を開け、急かされたので自宅に入る。

 それに続いて、のっそりと立ち上がった時空神とタマノちゃんが入ってくる。

 あと他の子達も無言でゾロゾロと入ってくる。


『おおお……』

「…………」


 ちょっとだけ見るなら、ここが一番だろうな。


 連れてきた場所は博物館のような空間。

 魔導具や武器、鎧がガラスケースに飾ってあり、壁や柱の彫刻も細部まで拘っている。


 魔導倉庫空間とは名ばかりの博物館にご招待だ。


『これは……お前が作った物が大半なのだな』

「ご名答」


 タマモミヅキの言う通り、天敗釘打棒や虹の砲、

音のトレブルクレフ、土龍骨剣、避雷針などが飾っている。

 これから使うか分からない、使うかもしれないもの達だ。

 ネタ武器と化しているが役に立つんだよなぁ……


「で、どっすか俺の異空間の一部は」

『うむ……異空間の作成と改良の努力がよく見える。ここまで手を込める空間魔法の使い手はお前が初めてだ……我が知る限りだがな』


 褒められたってことかな。

 これからも異空間作りには精を出すよ……それこそ城でも創るか。


「ん?」


 お腹を擦りながら俺の着物の袖を何度もクイッと引っ張るタマノちゃん。

 ………………餌付け成功してるなぁ。










『時間を取らせて悪かったな』

「んー、まぁ時間はいっぱいあったから良いよ」


 タマモミヅキの異空間に戻ってきた。

 雑に増える子供たちがあっちこっちに移動したり止まったりしてその回収が一番大変だった。


 ということで、今現在起きている問題を解決しようではないか。


「………」

「………うん」


 タマノちゃんが離れてくれません。

 油揚げを美味しそうに齧りながら俺の袖を掴んで離さない。


『タマノ』

母様(かかさま)?」

『……少年が気に入ったのか?』

「…………(高速縦振首肯定)」

『そうか………』


 この流れは────……


「まさか……」

『すまんが……頼めるか?』

「……ん」

「……しゃあないなぁ」


 俺はニーファに向かって身体を回し、目を合わせ口を開く。


「子供が増えたね!!」

「……………そうじゃの」


 タマノちゃんが仲間に加わった!!


『はぁ……油揚げなどという物をなぜに寄越したのだ……!!』

「いや何となく」

『やはり月の娘が正しかったのか……!?』

「いやアンテラは全面的に間違ってるんで」


 いやー、全体年齢がホントに低い。

 ニーファがインフレしてるけど。


「おい何じゃインフレって」

「へ?……いや年の功って奴をですね?我々若人に見せてくださると嬉しいなぁと」

「殴るぞ!?」

「もう殴ってるぅ!?」


 数メートル飛びながら何とか着地に成功する。


『愉快な奴らだ……これなら大丈夫そうだな』


 なんか納得されたし。


『では時間を取らせてすまなかったな!

 新婚旅行とやら、存分に楽しんでいけ。この国は昔から我が巣くってるからの。楽しいぞ』

「えぇ、そのつもりです」

「まぁの……」


 歯切れ悪いな……そんなに嫌いな雌がいるの?

 じゃあ早く始末して楽しい旅行再開しようね。






 こうして。

 日輪の国アマツキミに住む古神との出会いを終え、その子供神の保護者となった俺達は無事に異空間から帰り。


 新たな難所を迎えるのである。





 ──────タマノ が 仲間に なった!


稲荷子金神社は、時空神タマモミヅキの身体から生まれた子供達の神格を保つ為の場所です。

子供達は神社の中と異空間しか行動出来ませんが、何故かタマノちゃんだけ行動できる設定です。

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