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魔王の兄は転生者  作者: 民折功利
第七章 新婚旅行とお兄様

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旅行の行き先

新章開幕


 ◆アレク=ルノワール


 新婚旅行に行こうと提案したものの、それを叶える為には越えなきゃいけない壁がある。

 ということで、俺は魔王城に来ていた。


 再建された新生魔王城。

 魔皇城エグメニオンと混ざりあい、以前よりもその威容を大きく再構築してみたものである。

 新たに術式を書き加え、火災も浸水も地震も魔法も全ての災害レベル攻撃を耐えれるようになった。

 例え上から城が落ちてきても形が崩れずに逆に相手が崩壊するレベルの強度を誇る。


 今の俺に出来る最高建築である!


「で、何の用だ?アレク」


 ということで、俺が作った魔王の執務室にて父さんに相談をしましょう。


「ニーファと新婚旅行、行きます。以上」

「……………なに?」


 なんの間ですか?

 なんでそんな信じられない物を見る目なの?


「……アレク、状況わかってるのか?」

「わかってるからこそだよ!!」

「いや気持ちはわかるんだが……俺だって行きたいし……」


 父さんの一人称は、我から俺に戻っている。

 魔王として公私混同は避ける父が、一人称を俺にする程の事態だともいうんですか?

 これ以上働いて身体壊して母さんを悲しませたりしないでね?

 で、俺が新婚旅行行くのに何の問題が……


「ユメだって遊びたいの我慢してるんだぞ……?」

「じゃあユメも連れてくわ」

「ダメだ絶対にダメだ」


 ですよねー。

 今の時期に魔王の娘が旅行!?次期魔王の自覚はないのか!?なーんて言われちゃうよね。

 え、俺?

 魔王の息子が旅行!?そんなのいたっけ?

 だろ多分。そうであってくれ。


「はぁ……まぁ、お前が居ないだけで機能しないなんて名折れだし恥だからな……。

 仕方ない。世界同盟や各国の王には俺から伝えておく。その分土産は楽しみにしていいんだな?」

「勿論!美味しいの買ってくるね!」

「食いもん限定なのか」

「いやそんなことないけど……」


 結局、父さんは新婚旅行に行く事を許可してくれた。

 ここで世界同盟やらに俺の動向を連絡するのは、四堕神が俺に対して《大天敵(アークエネミー)》と言うほどに警戒しているから。警戒されている分、闇討ちされたら困るし、最大限こき使って神を倒そうっていう思考があるんじゃないかな。


「で?何処に行くのだ?」

「んとねー……」


 俺は地図を取りだし、指をさす。


「ここは……」


 ヒューマンド大陸から東に海を越えた先。

 豊かな自然と独自の文化を持ち、外から見れば異質な世界であり、ある者から見れば懐かしさを抱く大きな有人島。


「日輪の国アマツキミ」


 異世界にある侍の国であり、島そのものが一つの国となった和風国家。

 そこが新婚旅行の舞台となるのである。







 



 面倒くさい事は全て父さんに任せ、俺は城を出てからニーファを呼び、世界都市のヘルアーク大使館に来ていた。

 ここに、お目当ての人物がいるのだ。


「で、どうしたんだい?アレク君」

「お前の近衛のさぁ……えっと……男の人いたじゃん?」

「ん?シュンの事かい?」

「そうそう」


 ミラノの近衛兵の片割れである、シュンさんに用がある。

 ということで呼んでもらった。


「拙者、でございますか?」

「うん。アレク君が君に用だって」

「拙者が出来ることですか……はい、承りました」


 シュンさんは、和装に近衛の印を背中に刻んだ、鎧を着てない侍さん。

 黒髪黒目、この見た目。

 確実に日輪の国の人だろう。

 それじゃなかったら江戸から転生した人かな。


「実はさ、日輪の国に新婚旅行しようと思ってるんだ」

「ほう!我が故郷に……」


 ビンゴ。

 やっぱり現地民だったか、ありがたい。


「つまり、拙者に観光名所を教えろという事で?」

「その通り、察しが良くて助かります」

「ははは。しかし、何分拙者が故郷を出てから六年は立ってます故……幾分か昔の物となりますが、宜しいですかな?」

「んー、まぁいいよ。参考程度に、だからね」

「承りました」


 新旧変わらず、一度でも名所になった場所ならだいたいは隠れスポット的なものとなって生き残っていると俺は思っている。

 ただ、お店とかは影も形も無いかもしれないね。


「ちと昔の地図ですが……」


 シュンさんは懐から丸めた地図を取り出して紐を解き、机一杯に地図が広げる。


「ははは。こう見えて故郷を憂う事があってでですな……時偶こう開いて見るのです」

「へぇ……」


 俺は、日本に対しての哀愁……ないな!

 前世に対しては割り切っている箇所が多い。


「拙者が観光目的でオススメするなら……ここはどうですかな?」


 指した箇所には、日本の旧字体のような文字で『桜廻道』と書かれている。


「ふむ。浪人、ここは?」


 興味を示したニーファが問う。

 多分、文字は読めないけど地図に書いてあるピンクの柄に惹かれたのかな?


「桜廻道。四方八方全てを神酒桜が囲む絶景の場所ですな」

「神酒桜ってのは?」


 何それ知らない。てかまだ秋終盤だぜ?

 そろそろ肌寒くなってるから桜……よく良く考えれば和の国なら桜だよな。春に行くべきだったか?


「アマツキミに居るとされる大神から溢れる力の影響で年中咲き続ける桜です。学術的な事は拙者には分かりませぬが……この近くにある神社から力が流れて来ているとの事で、古くから関連性は確実とされております」

「ふーん……また神か」

「何処にでもいるのぉ〜」


 つまり、神様の力で季節関係なく咲き続ける桜が見れると。それが神酒桜と。

 神酒の桜なんて大層な名称だな。


「ここでしか見れないの?」

「はい。拙者が知る限りは、ですが……この『桜廻道』とその神社のみが特殊で、他は普通の桜だったと記憶しております」

「へぇ……特別感満載だね」

「えぇ。国の誇りかと」


 確定だな。

 お花見とかしたいな〜、ここで。


「あ、その例の神社は高台にありまして、ここからの景色は遮蔽物があまりないので、良いですよ」

「絶景もありと。流石だな」


 本心では行きたくない。

 だって神様、居るんでしょ?

 流石にエンカウントは無いと思うが……今までの傾向上、対策を練ってもダメな気がしてきた。

 でも絶景かぁ〜……見たいなぁ……


「ふむ。甘味処はどうじゃ?」

「えぇ、あるにはありますが……そうですな。今もあるであろう店を紹介しましょう」

「うむ」


 ニーファは食い物に大きな興味を抱いてる様だ。

 いやまぁ、空を飛ぶ神竜にとって絶景なんて見慣れてるのかもしれないけど。

 シュンさんが事細かく説明してくれてる間に、俺はふと思う。

 日本の江戸に近い国なら……あるんじゃね?


「ねぇねぇ。着物とか買える店あるの?」

「ありますよ。……うむ、あの店から六年そこらで潰れんでしょうし……えぇありますよ」

「よし、どこ?」

「えーっと………確かここら辺でしたかな?」


 俺が着物というものに全力を注ぎ出したのを見て、ニーファは疑問の目で見てくる。


「キモノとはなんじゃ?」

「ん?んー……シュンさんの服みたいな民族衣装的なやつだよ」

「拙者の服は無地ですが、女性の着物は基本的に華やかなで美しいですよ」

「ほーう」


 ほんの少し興味を持ったみたいだが……いや、尻尾が凄い動いてるから興味湧いてるなコレ。

 わかりやすっ!

 可愛いの着せよっと。

 あ、助平なやつがいいかな?


 そんなこんなでシュンさんから観光スポット的なものをいくつか教えてもらった。


「お土産は期待していいのかな?」

「納豆でいいかな?」

「なんだいそれは?」

「腐った豆」

「えぇ……?」

「いえ王子!れっきとした食料です!ご安心を!」

「おいシェン、そんなものを王子に食わせる気か?」

「テオラ!?そんなことするわけなかろう!?」


 ミラノと近衛兵二人で遊んだりしてからお礼を言って帰った。

 テオラさんは近衛兵の片割れの女性の方ね。結構な美人さんだけど強そうに見えるね。


 さて話を戻して。

 新婚旅行の事をユメとか母さんとか正樹とかに一言告げるべきだよね。

 あ、クロエラにも言った方がいい感じ?








「ってことで、新婚旅行いくから」

「おにぃさまぁー!?!?」

「楽しんでくるね!!」

「おぉにぃいさぁまぁーー!!!!!!?!?」


 ユメ。怒る。羨ましがる。泣く。あやす。以上。


「ってことで、新婚旅行いくから」

「あらあら〜羨ましいわ〜」

「父さんが退任したら行けるんじゃない?」

「期待するわね〜」


 母さん。父さんへの期待の目線が強くなる。

 それを聞いていた父さんの仕事のスピードが上がった。


「ってことで、新婚旅行いくから」

「えぇ……どこに?」

「江戸っぽい国」

「いいなぁー!!!!!」


 正樹。怒る。羨ましがる。発狂。沈黙。以上。


「ってことで、新婚旅行いくから」

「おう。行ってこい」

「場所は日輪の国ね」

「土産は酒とツマミを所望する!!」


 リョーマ。社会人としての冷静さを見せつける。

 あと何か知らんが正樹の家に居たのでついでに報告した。決して忘れていたわけではない。


「ってことで、新婚旅行いくから」

「はーい、いってらー」

「…ん。行ってらっしゃい」

「行ってきます〜」


 クロエラ、マール。興味示さず。

 もっとリアクションをください。

 皆に迷惑をかけないレベルのリアクションを。


「あ、そうだアレクくん!新兵器の武装のことなんだけど……」


 違う、そうじゃない。







「メリアー、準備できた?」

「はい……といっても、転移すれば何でも出来るので準備とかもそれなりに、ですが」

「だよね〜。一応、詳しい人に名所とかは聞いた」


 異空間に戻って、プニエル達の世話をしていたメリアの隣に座り、デミエルを抱えて頭を撫でながら聞いてみた。

 概ね準備は出来たとの事なので、朝になったら行こうと思う。つまり明日だな。


「のぅ、アレク」

「ん?」


 ニーファがエノムルに乗って質問を。


「日輪の国とやらに我は行ったことないが、行ってなんになるんじゃ?」

「………んー。俺自身も新婚旅行とかよくわかってないけど、夫婦の絆とかそんなのを深める為の行事だよ行事。日輪の国は単に遠方に行きたいから」

「ふむ」


 後は未知の和風文化に浸りたい、的な?

 京都とか行ったのも中学の時だけだったし、俺の生活域に和風物なんて神社ぐらいしか無かったし。

 ぶっちゃけ身近に和風文化なかったから感傷に浸るものもないな。


「まぁ、物見遊山ってやつだ」

「なるほどの」


 日輪の国アマツキミ。

 どれだけ日本風なのか……というか異世界にもそーゆー世界観があるのが不思議だよね。

 やっぱどの世界も近しい歴史と存在を抱くのかなって思ってみたり。


 いやー、平穏無事に旅行が終わりますように!!



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