Project:AVALON
本日は自分と本作の一周年記念日でございます。
今度とも是非よろしくお願い申し上げます。
休日二日目。
一応補足で魔都エーテルハイトの現状を伝えておこうと思う。
元から開発する予定もあった……というか中心に近い所から開発が始まっていたスラム街は戦場となった為、廃屋や建設中に放棄された施設などは
諸共破壊されてある程度の更地となっている。
……その原因は敵の攻撃と言うより、味方である星宮蓮夜の能力で召喚された戦車による破壊工作なのだけども。
そして『偽りの魔都』に避難させていた魔都の住民や観光客達は未だに避難生活を強いられている。
一応、魔王国内からの国内観光者は危険性もあって実家に帰せてないが、他国からの観光客は転移魔法で世界都市へ転送。
世界同盟の指示の元、自国へお帰りになった。
いつまでも他国で避難生活は嫌だろうしな……てか突然戦争に巻き込まれるとか不運すぎだろ。
「取り敢えず連中がダンジョン攻略して……美味しい所は俺が貰って……くくっ。楽しくなりそうだ」
あ、今いるのは世界都市の魔法学総合研究所。
クロエラの研究室である。
悪巧みの顔をしながら俺は遊びながら椅子で足を組み、アイスクリームを食べていた。
クロエラは机に向かって工作をしており、オーガの頭サイズの鉄球体…パイプやメーター、結晶などが付属されている機械を弄っている。
マールは魔王城の地下図書館から俺が持ってきた魔術の本を静かに読み、偶に魔術行使をして確認作業をしている。
ニーファは静かに鼾をしながら寝ている。
少し垂れてる涎がチャームポイントね。
そしてもう一人、普段はいない顔があった。
「ねぇ……あなた達はいつもこんな感じなの…?」
正樹の勇者パーティのエルフ、シリシカだ。
彼女は今回、大好きな勇者の元を離れて魔王の兄の元で働いてもらうこととなっている。
字面だけ見たら俺が完全に悪役だね!
「…慣れた方がいい」
「……貴女も大概よ」
マールの助言なのか諦めとも取れる言葉を、客観的に見た結果を冷静に言うシリシカ。
勇者パーティには個人個人に二つ名がある。
《聖剣の勇者》は聖剣を錬成し味方を守る為にその柄を握り続ける正義の救済者。
《聖女》は慈愛の心を持ち傷づいたものを癒しつづけ勇者と苦難を共にする聖職者。
《赤の令嬢》は赤く染まった魔法を多用し荒れた戦場を色付け家訓を受け継ぐ魔術師。
《猫手の閃光》は矮躯を利用して縦横無尽に柱の影を移動する純粋無垢な獣人の先行者。
そして……《先見の精霊士》シリシカ。
精霊界から呼び出した友に力を借りて行く手を阻む障害を退けるエルフの求道者。
そんな精霊術を巧みに使うシリシカの協力を今回は要請して、快く承諾してくれた。
理由は「ソフィアの腕を治してくれたから」。
そういえばそんなこともあったなと思いながら今回の趣旨を思考で纏める。
「取り敢えず四人に集まってもらった理由を最初に喋らせてもらうね」
キャスター付きホワイトボードを風魔法でこちらに引き寄せて黒ペンで文字を書く。
『Project:AVALON』
魔王国アヴァロンの首都である魔都エーテルハイトの地下に広がるダンジョン、アヴァロン大迷宮。
迷宮に存在すると云われる世界樹。
そして、かつて栄えていた妖精郷アヴァロン。
そんな個人的に気になることを調べようっていう計画である。
まぁ、ダンジョン特攻メンバーが攻略しながら魔統神の居場所へと向かってる間に、俺達も別に潜入して迷宮のことを調べつくそうって話だ。
別働隊にしたのは、特攻メンバーが行く手を阻む魔物を狩り尽くして何も残らぬ道を気軽に通って楽に解析できたらなーという思惑があるのだが……
倒した魔物が一定時間後に再登場とかされたら色々とめんどくさい。
……これ言うと本当に出てきそうだからやめよ。
「じゃあ、私を呼んだのは……」
「精霊術師であるシリシカさんに妖精の名残とか普通じゃ見つからない物を探してもらいたい」
「わかったわ」
「ま、もし特攻メンバーが危機に陥った時の為に即座に救出、戦闘入りするのが第二目的」
「なるほど」
まぁ、そうなることはないと思うけどね。
神に選ばれた魔王、聖剣を錬成する勇者と仲間達、神の加護を持つ王子、獣人の暴れん坊王女、そして俺のメイドさん。
ラスボス戦はともかく、その道中はなんの問題もないだろう。
「うーん、にしても、アレク君ならダンジョン攻略に乗り気で真っ先に行くと思ってたんだけど?」
クロエラが作業の手を止めずに質問してくる。
「普通のダンジョン攻略は飽きた」
「そうか…」
もっと激しくて楽しいダンジョン攻略をしよう。
でも遊ぶより調べる方が大事だ。うんうん。
「取り敢えず目標はダンジョン内部にあるって云われてる世界樹を見つけて調べる」
「ある程度の目星はついてるのかい?」
「地下図書館から持ってきた資料曰く中層にあるらしいが……百年以上前のだから確証はない」
魔統神に城を破壊されたのはキツかったが、地下図書館は奇跡的に無事だった。
まぁ、所々が半壊してたり本や瓦礫が散乱してたりする場所も見られたが。
魔法を使った復興ならある程度の時間削減は出来ると思われるが……まぁ手伝うと言った手前、というか故郷だし本気で頑張るとしよう。
さて、少し気になる事柄に集中しよう。
「………zzz」
「ふむ…………にやり」
ニーファは眠っている。
涎を垂らして静かに寝息を立てている。
けっこう重要な話をしてるのに気持ちよさそうに寝やがって………楽しいことしてやるよ。
「悪い顔してるね」
「……うん」
「してるわね」
俺は異空間からパーテーションを取り出して俺とニーファ、三人を隔てる壁にする。
そして部外者の目が見えてない内に……
「えへへ」
更に取り出したのはピンク色の動く球。
さぁなんでしょう……ボクニハワカラナイナ!
複数個取り出したそれをニーファの上半身に二つ、下半身に一つ取り付けて……作動!
そしてカメラを起動して構える。
「ふにゃあっ!?」
良い感じの蕩け顔で驚きの声……ちょっと甘い声を出してニーファが起き上がる。
状況がわからずに身を襲う振動にただただ動揺しているニーファをカメラに抑えながら微笑む。
「おはよ〜♪」
「お、お主……こ、これはっ」
「はい」
「んうっ!?、くぅ……っ!」
返答と共に球体の振動を強くする。
顔を赤らめて悶え善がるニーファが見られたので悪戯は終わりにする。
やっぱ嫁さん可愛いわ。
「いい目覚めになった?」
「っ……お主、やり方が……はぁ…ふぅ……」
ニーファの身体に取り付けていた球を素早く撤去して異空間にしまい、証拠映像も消される前に魔法で瞬時に複製してカメラも異空間にしまう。
これでコレクションが増えたな。
コレクションの正式総称はまだまだ考えてないから決まってないぞ!
「はぁ……普通におこさんかい」
「俺が健気に説明してる所を気持ちよく寝てるのが悪い」
「むぅ…」
なんか納得してるけど……こいつ、喜んでね?
妙に顔が綻んでるんだが?
Mか?Mなのか?
……俺がそうしたのか?
なゆほど好都合。いやー、ほんと。うんうん。
「なゆほどね?」
「アレク君〜?何してるの?」
「なゆなゆしてる」
「なにその隠語」
ちなみに、このパーテーションは防音結界が展開される仕組みがあるのでニーファの嬌声は三人には聴こえていない。
クロエラの魔工学で生まれた魔導具なんだぜ。
凄いだろ?
「なゆなゆしてた」
「気に入ったのかその言葉…」
「ニーファがなゆなゆされてなゆなゆしてた」
「おいっ!?」
「なゆなゆ」楽しいな。
なゆなゆ活用系とか考えてみるか?
まぁ話題をダンジョンに戻そう。
「取り敢えず……クロエラとシリシカさんが今回の主な解析班」
「うむ」
「ええ」
「マールとニーファは戦闘班。マールは魔術で探索とかしても良いからね」
「…わかった」
「ダンジョンの話か?」
「お前が寝てる間に説明は終わってるよ」
「そうか……お主は?」
「両方」
「……多忙じゃの」
若い内に好きなだけ動くんだよ。
この世界だと俺は永遠に若さを保ってるけどな。
………永遠の社畜?
いや、そんなわけ……ないやろ。うん。
「ふわぁ…俺が眠いから今日はここまで、適当な事は明日に決めるってことで」
「よし、じゃあ俺はダンジョン用の魔導具のメンテナンスでもしてるよ」
「……私は本読む」
「じゃあ私は帰らせてもらうわ」
「我は………おい、何故我の服を掴む。おい、首が締まるっ!」
まぁまぁまぁ。
そのままニーファを異空間に連れ込んで、居住空間に入って……ソファにダイブ!!
ニーファを横抱きにして抱擁し一緒に寝転ぶ。
「なんじゃ……甘えん坊さんじゃな」
「そうですよー……なぁ、なんかここ濡れてね?」
「し、知らんの」
「あれれー?おかしいぞー?」
「おい、弄るでない!」
その後、俺とニーファは普通に眠くなって何も至る事がなかったのは言うまでもない。
互いに変な所に手が置かれたまま寝た。
神化しても、身体は睡魔に勝てなかったよ。




