絵本と休日
ダンジョン攻略が決定した次の日。
流石に戦争終わって直ぐにダンジョン潜入は肉体的にも疲労が蓄積され危険だと判断。
二日ほど休みを置いて、身体を回復させてから突入する内容で話が進んだ。
既にダンジョン攻略特攻隊は結成されており、そのメンバーは集まって連携などを確認してるらしい。
そのメンバーについては後で話そう。
でだ。
魔都エーテルハイトは奪還できたが、まだ何が残っているか不明であり、地下に敵が潜んでいる事もあって復興作業は始まっていない。
未だに国民は『偽りの魔都』で避難生活を強いられ、共に戦ってくれた志願兵達も一足先に家族の元に帰らせている。
各国から派遣された軍も撤収作業が始まっているが、何が起こるかわからない為義勇軍の二割ほどは帰らずに龍泉霊峰の荒野に基地を設置して状況を待っているようだ。
まぁ、残ってるのは少しでも勝利に貢献して魔王国とのパイプを強くしようとか今後の利益を考慮して動いてるんだろう。
さて、長ったらしい説明は終わりにしよう。
今日と明日は休日。
俺とニーファとスライム幼少組は学生寮のリビングで各々好きに過ごしていた。
メリアはダンジョン攻略特攻隊のメンバーなので龍泉霊峰の訓練所で連携訓練をしている。
あ、ダンジョン攻略特攻隊っていう名称は俺が勝手に付けてるだけで正式名称では無い。
特攻とか不吉だが彼女達なら大丈夫でしょう。
「で、我らはその日何をするんじゃ?」
ウェパルの髪結びの被検体になっていたニーファが俺に問いかける。
なんだよ、完全にお仕事の話の流れになるやつじゃないか……まぁ構わないけど。
ニーファの髪は、右半分は馬の尻尾の様に纏められ、左半分は三つ束になって纏められ、三つ編みになってたり少し雑に纏められている。
………ウキウキ気分で髪結んでるウェパルには悪いが、何かピカソ並の芸術作品が誕生しているのは言うまでもない。
さて、ニーファの質問に応えよう。
俺はソファで足を組んである本を読んでいたが、それを中断してニーファの凄い頭を横目に言葉のキャッチボールを始める。
「真面目なダンジョン攻略はアイツらに任せて俺達二人は別の行動をするつまりだ」
「行動?」
「色々と調べたい事が増えてさ」
そう言って俺は本をニーファに投げつける。
綺麗に放物線を描いてニーファの手に納まる。
ナイススロー、俺。
「なんじゃ……絵本?」
「題名見てみ」
「む? …………『妖精郷アヴァロン』?」
妖精郷アヴァロン。
すっごい昔、北西の大陸に存在していた今は亡き妖精達の楽園があったとされる。
そんな妖精郷に一人の少年が迷い込み、羽が生えた小人、妖精と出会って親交を深めるという童話。
御伽噺のようなもんだな。
「……なるほど、妖精か」
妖精。
はるか昔に……神魔大戦が勃発している最中、魔統神ダグロスの信望者である魔族達の手によって絶滅させられたと語られている小人。
精霊に近しい存在ではあるが、肉体を持たぬ精霊と違って肉体を持っているのが妖精らしい。
「もしこの本が事実なら…」
「魔都エーテルハイトはこの上に、か」
魔王国アヴァロン。
これの建国者は神魔大戦で活躍した《五英雄》の一人である《魔に反する者》アード=ルノワールが建国したという。
「さて…妖精郷についても調べないとな」
ダンジョン攻略をするメンバーとは別に、俺を筆頭とした解析メンバーを作るか。
まぁ、メンバーは察しがつくだろう。
「取り敢えず、今日は遊ぼーう!」
「常日頃の間違いではないか?」
「そんなことないよ」
絵本を異空間に放り込んでニーファに抱きつく。
突然の俺の奇行に一瞬だけ顔をポカンとさせ、俺が身体をギュッとしてることに気づいて顔を紅く染めて口をパクパクさせる。
「な、な、な……」
「そこまで焦る事じゃないだろ」
そう言ってる俺の顔も熱くなってる自覚あり。
最近、こういう絡みが少なくなってる……まぁ一般的な夫婦の絡みなんて知らんけど。
親は王族で子の前でイチャイチャしないし。
……前世はダメだな参考にならん。
そのまま一分ほど、無言の時間が流れる。
スライム幼少組はウェパルが空気を読んでニーファの髪の毛を瞬時に元に戻し、他の子を連れて隣の部屋にみんなを連れ立って行ってしまった。
プニエルやデミエルは口を膨らませて渋々従い、エノムルは何も言わずにのっそり移動していた。
なんか悪いことしたな。
……ニーファの髪を瞬時に戻した神業について何かコメント残した方がいい?
「………柔らかいなお前」
「そ、そうか」
「龍の姿だと硬いのに……人だとこんなに変わるものなのか」
「喧嘩売っとるのか?」
お腹を摩ったり触って揉んでみる。
うん。触り心地いいな。
龍の鱗も硬いけどスベスベしてて良き。
んで、さり気なく服を捲って直にお腹を触ろうとすると……
ガシッと手を掴まれる……なんて抵抗は無く、すんなり肌に辿り着いてお腹に触れる。
どうかしたのか気になって顔を覗き込んで見れば……
「…………」
「…………」
ニーファの顔は恥ずかしくて紅くなってるが、満更でもない様な顔で………
「………」
それを見た俺は無言で手を服からスっと出して、代わりにギューッと抱きしめる。
この反応は予想できてなかった。
「……お主も甘える時があるのじゃな」
「べっつにー?」
「素直になれい……我も人の事を言えんがの」
「ん?」
「い、いや。なんでもない」
後半は凄い小声だったが……ニーファの顔の横に俺の顔が覗いてる感じなので、言葉自体は普通に聞き取れる。身長差なんてものはほぼ無いし。
それに神化に伴って五感も鋭くなってるかるな。盗み聞き、盗み見なんてお手の物よ。
神化する前から魔法でやってたけど。
「…しばらくこの状態でいいか?」
「……好きにせい」
そう言うやいなやニーファは尻尾を俺の足に巻き付けて、少しお尻を動かして俺の身体に密着する。
互いに身体を支え合い、脱力した気分で時が過ぎるのを待つのであった。
なんかサイトに変化出てるよね。
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