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魔王の兄は転生者  作者: 民折功利
第五章 魔に挑むお兄様
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裏切り者の末路

投稿してなかったのはゲームに集中する青春を送ってたからとかじゃないです。


ごめんなさい。


 どうも、俺です。アレクです。


 今何してるかって?

 裏切り者のブロッケンっていう緑花野菜(ブロッコリーの和名)と一緒に場所を変えて落とし前戦争つけてまーす。

 王座の間にいると、他の人の邪魔になるからね。


 ……とか言ってるけど、実際はブロッケンの転移魔法に捕まって情けなく連れてかれたんだけども。

 いや、べっつにぃ? わざと油断して連れてかれただけだしぃ~? 背後から突然、空間の穴が生まれて呑み込まれたとか反射で気づけなかったとかじゃないからね? ホントダヨ?


 言い訳はともかく、連れてこられた場所は庭園であり、視界には綺麗に整えられてはいるが、何処か寂しさを感じる人工的自然が広がっている。

 この庭園は、室内にあるもので、壁と天井は他の部屋と同じ材質のもので、少し暗く感じる。


 俺は背を庭園の壁に預けて、放り込んだ穴……門が閉じ、別の場所に開いてブロッケンが登場するのを目にする。

 奴は手に呪いの短剣を持っているようだ。


「……こんな所で戦うの?」

「いやぁ~……オラにとって何処が有利な地か、色々と探した結果でさぁ」


 少し自信満々に答えるブロッケンは空間魔法を発動して攻撃態勢に移る。

 俺も魔神杖に魔力を流して魔法の準備をはじ……直ぐに終わって発動。


「《淵円柱》っ!」

「《千手墨松》」


 穴から飛び出る無数の固形化した空間の柱が俺を突き刺そうと伸びてきて辺り一面を巻き込みながら突き進んでくる。

 俺の背が触れている壁に召喚された墨汁が広がるように黒松の模様が描かれて千本の枝が空中に飛び出て敵の空間柱を推し戻そうとぶつかり合う。

 飛び散る墨汁と磨り減る円柱。


 拮抗状態の隙をついて、俺とブロッケンは魔法発動中の身で走り出して武士を交える。

 ブロッケンはその図体に合わぬ動きで飛び出た柱と墨汁の枝の間を縫うように走り、俺に呪いの短剣を突き刺そうとリーチの短い短剣を器用に投げる。

 投擲された短剣を、魔神杖で弾いて魔法発動。


「《天羅震動》」


 魔神杖の石突を地面に突き刺し、魔力を地面に流して地震を引き起こす。

 これは、震動を伝播させる魔法。

 柱が揺れて倒れ、壁に亀裂が入り少し崩れる。地盤が揺らいで少し床が沈み、蜘蛛の巣状に亀裂が入って緑の庭園が廃れる。

 震動の余波で黒松は呆気なく崩壊して地面に墨汁が飛び散る。ブロッケンの円柱も地面に接触してる箇所から震動が伝わって瓦解する。


 俺は杖を突き刺したまま、一対二翼の黒翼を展開して宙に浮いて揺れる庭園を静観する。

 ブロッケンは最初は揺れに捕まって足を止め、手を着いてしまったが、揺れの中瞬時に体勢を整えて飛び、生き残った円柱に掴まって難を逃れる。


「デブの割にはよく動くな…流石は四天王!」

「動けるデブじゃないと、四天王なんかになれやしませぇへんって!」


 緑のアフロを揺らして未だ震動する地面に降りないで空間の門を繋ぎそこに入って何処かに消える。

 まったく……長年研磨された空間魔法の使い手を相手するのは骨が折れるな。

 あの円柱の原理とか調べないと分からなんし。


「………止めるか」


 そろそろ煩わしいので魔神杖を引き抜いて地震を止める。結構な震動だった大地は、あっという間に静かな世界へと元通り。


 地面に着陸し、ブロッケンがいつ現れても良いように周囲を警戒する。


 数秒後。

 音もなく俺の背後に門が開いてそこから呪いの短剣が刺し殺さんと飛んでくる。


「ふっ!」


 本当に真後ろ……背中の直ぐ後ろからの投擲だったが、よく避けれたと思う。俺スゴい。

 裏取りをして攻撃を仕掛けたブロッケンは、再び門を閉じて別の場所に繋ぎ、俺から離れた位置に転移する。


「仕込みは終わってるんやで?」


 含みのある笑いを見せてブロッケンは倒壊した柱の影に隠れて……魔法を発動する。


「《鉄の雨》」


 天井を隠すように展開された巨大な異空間の穴。

 そこから覗く、数え切れない数の武器(・・)。長剣、短剣、戦斧、大鎌、鉄槍、矢尻……様々な尖った武器が連なって顔を覗かせている。


「……まさか!」


 記憶を掘り返す。

 ブロッケンが裏切る前の話。

 会議室で俺が、暗い表情を……既に、この時から裏切りの決心は着いていたのか知らんが……していた彼に取り敢えず殲滅的な魔法の案を出した。

 その案は────────


「ちぃっ!」


 空から降り注ぐ鉄の刃。

 肉を貫かんと落ちてくる武器を、俺はダッシュで避けて空間魔法の転移で逃げようとするが……


「させへんってさぁ!」


 ブロッケンが遠距離から魔力を飛ばして俺の魔法に干渉して転移を妨害する。

 空間魔法系に作用する妨害……ネザゲルート家のお得意技術。この状態だとすっごく厄介。


「うおおおお!!」


 一通り地面に突き刺って止んだと思ったら、第二陣、第三陣……と終わることなく雨は降り注ぎ、足場は尖った危険物だらけで足の踏み場が無くなってくる。

 これでもかと降り注ぐ武器の雨。

 この量の武器をどっから補充してんだよ……やっぱり空間魔法に長けた一族の力は侮れないな。


 とにかく、逃げる逃げる。

 空間魔法での転移逃亡は妨げられるので土魔法で俺の上に天井を作って雨宿り(危険)したり、床に刺さった武器を風魔法の暴風で吹き飛ばしたりして安全確保をしながら逃げ続ける。


 よく見れば、俺のいない地点から突き刺った武器が転移して再び雨として降り注ぐというリサイクルをしていることに気づく。

 なんてエコなんでしょ………エコじゃねぇわ。


 取り敢えず雨雲(異空間の穴)を閉じなきゃ。

 俺は空に向かって魔法を撃つために手を向けて、魔力を溜める。

 それを見たブロッケンが、柱の影から呪剣を投げて妨害してくるが、時すでに遅し。


「《制空熱圏》」


 庭園の空に、学術的には別物だが凡そ似てるであろう大気層の一つたる熱圏を生み出し燃やし尽くす。太陽からの短波長の電磁波や磁気圏で加速された電子エネルギーを吸収するため温度が高くなり、2000度相近くまで達することがある熱圏。オーロラが発生するのもここだった気がするぞ。


 実際に熱圏に入っても、大した温度は感じないって話だが……神龍霊峰の山頂は軽く雲よりも上にあるけど、普通に寒く感じた記憶があるな。


 まぁ、学術通りの熱圏ではなく、取り敢えず燃やすことを中心とした魔法によって降り注ぐ鉄を溶かして使えなくしていく。

 溶けたドロドロの鉄が色々と危ない地帯を生み出しているのだが、きっと気の所為だろう。


「ちっ………やはり防ぎやすか」

「魔王の息子を舐めんなよ?……《熔鉄断走》」


 地面は融解した鉄と焼け焦げた柄や棒が落ちて足場のしての機能を失っている。だが、俺はそんなのお構い無しに鉄の海に魔法をかけながら進む。

 俺が通ろうとした先の鉄が独りでに動いて左右に移動して道を作る。

 さながらレッドカーペット。

 俺以外誰も通れない道。灼熱の壁に挟まれて真っ直ぐブロッケンのいる柱の影に歩を進める。


「もう種は尽きたか?」

「…………そう、ですかねぇ」

「じゃあ終わりにしようや」


 堂々と歩いてブロッケンの目の前に来たところで足を止める。

 魔神杖を伸ばせば首元に当てられる距離。

 そして、俺は何のの躊躇も無く魔神杖を振り下ろし、戦いの終止符を打つ。


 だがしかし。


「すんまへん、アレク様。……もう、後戻りは出来ないんでさぁ……」


 ブロッケンの諦めていないその言葉を耳にした瞬間、俺の身体に不調が訪れる。


「………っ?」


 右脇腹。右手甲。左肩。左肘。

 いつの間にか俺の計四箇所に刺さった呪剣(・・・・・・)が身体を蝕む。


 俺の身体に接する位置に門を開いて呪剣を投擲してきたっ………少し舐めすぎたか。


「ぐっ……」


 魔神杖に掴まって倒れないように踏ん張るが、身体の力が抜けて方膝立ちになってしまう。

 この剣の呪詛はっ……


「筋弛緩、魔法詠唱不可、壊死、衰弱の呪いがそれぞれ込められた短剣でさぁ……すまへんなぁ」


 勝ち誇った顔を見えてくるブロッケンを見て、俺は苛立ちがフツフツと湧き出る。

 文字通り、魔法を使うことはおろか、身体の自由が効かなくなってだんだん意識も落ちていく。

 肌も、呪詛によって爛れる様に傷み始める。

 だが俺は嘲笑うように声を上げる。


「くくくっ……」

「………何が、何がおかしいんでさぁ?」


 不可解と頭に疑問符を浮かべるブロッケンに、四本の呪剣を頑張って左手を使って身体から抜き落として笑う。

 激痛が走り、血が流れて意識が途切れそうになるが、この程度の難所を乗り越える為に踏ん張って目を見開く。


「なぁ……ブロッケン」

「…………なんです?」

「……あまり、俺を舐めない方がいぞ?」

 

 数秒後、俺は何事も無かったかのように立ち上がり、握っていた魔神杖を力強く地面に突く。

 その身体には傷跡など無く、呪詛で傷んだ皮膚もその瞬間には綺麗さっぱり無くなっていた。


「……はぁ?」


 ありえない現実を見るかのように目を見開き、口を半開きにするブロッケンを見て、俺は笑いながらご丁寧に魔神杖を見せつける。


「色々と説明は省くが、この魔神器は呪詛を吸収する力があってな? それの力だ」


 長ったらしく説明する理由もないのでね。

 魔神杖ガドケウスは何故か知らんが呪詛を吸収して魔力に還元する。その力で危険な禁書を読んでも呪殺されなかったし、呪剣を刺されてもほんの数秒で何事も無かったように動けたりできた。


 簡潔に説明した俺は、未だに動揺しているブロッケンの腹部に俺を指してた呪剣を拾って投げる。

 抵抗もなく……というか目に見えないスピードで突き刺さったので、反応出来なかったが正しい。


「ぐっふぅ………っ!」


 確か魔法詠唱不可の呪剣だと思う。

 現に、空間魔法が使えないようだし……物騒だが便利なんだな。呪いの剣って。使いたくないけど。


「終わりだ、ブロッケン………お前の負けだよ」


 そう宣告しながら、指をパッチン。

 俺の背後から異空間の門が開いて別の場所とここを繋いで、とある人物を呼び出す。


「父さーん、出番だよぉ~!」


 大声で穴に呼びかけると、魔王シルヴァトスがひょっこり出てきて門を潜り抜ける。


「いきなりどうした?」

「アレ」

「ん?………ブロッケン」


 目を細めて睨みつける父の姿に、ブロッケンは冷や汗を浮かべて後退りをするが、壊れた壁に阻まれて退路を断たれる。

 俺の急な呼び出しに答えてくれた父さんは、少し考えてからかつての部下と会話する。


「久しいな……と言っても、数日しか経ってないがな」

「……お元気そうで何よりでさぁ」

「ふん。どの口が言う」


 どこか哀しげに、元家臣に軽口を叩く魔王と、諦めの境地に達し口を開く四天王。

 ブロッケンの腹部に刺さった呪剣は、さながら魔王の脇腹を刺した位置と同じ場所で。

 ダラダラと血を流し、身を蝕んでいる。


「最後に聞こう、ブロッケン。死ぬ前に……夫人の元へと送る前に、何か望みでもあるか?」

「………オラは陛下を裏切った男。何も言うことはないでさぁ」

「そうか。……余計な話だが、お前は妻に対してどう考えてる?」

「……オラを選んでくれた良い人でさぁ……別に、死なんくても良かったんやけどなぁ………申し訳ないでさぁ」

「そうか」


 夫人の自殺を知っていたのか。

 となると、自領の民の死も知ってるな。


「お前が何故、俺を裏切ったか、俺を攻撃したかの理由など、もはや問わん。理由などお前の心の中に留めておけ……今の俺に知る必要などないからな」


 そう言って父さんは腕を組んでブロッケンへの最後の言葉をかける。

 それは死の宣告ではなく、何故か安心させるかのように言葉を発する。


「お前の愛娘の目が覚めたらしいぞ」

「っ!?」


 え、初耳なんですけど。

 魂隷の呪縛で眠りについていたブロッケンの愛娘らしいヒルデガルド=ネザゲルートが起きたのか。

 会話した事ないからどんな子か知らないけどね。

 元気な子とは聞いたが。


「……そう、ですか……ヒルデはどうなるんですかい?」

「どうなると思う?」

「……よくて人権剥奪ですかね?」

「はっ。そこまではせん」


 魔王シルヴァトスは目を細めて言葉を締める。


「お前の娘は任せろ。俺が……()が生きれる程度には対応してやる」

「……何故、ですかい?」

「簡単な話だ。お前が四天王として王を支えた忠臣であったからだ……結末は違えどな」


 ブロッケンは戸惑いの声を上げ、少し顔を俯かせて肩を震わせる。

 やはり、娘の命は大切なのかね。


 ………ん?

 ブロッケンの体内魔力が暴れだしてる……?


「ありがとう……ございやす、陛下……っがぁ!」


 裏切った身でありながら、かつての主に感謝の言葉を述べたブロッケンの身体に異変が起きる。

 魔力が膨れ上がって身体から軋む音が鳴り響き、悲鳴をあげるブロッケン。


「がぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

「っ……ブロッケン?」

「父さん、下がって!」


 小太りの身体が更に膨張して黒く硬質化していく。緑のアフロヘアーも増殖して額から二本の角が伸び始める。瞳は金に光だして牙も大きくなって苦痛に顔を歪めて辛そうに汗と涎を垂らしており、ほんの数秒で異形の存在と化した。

 既に面影と言える部位は髪の毛だけとなる。

 あとなんか腕が増えて四本腕になってるのは幻覚だろうか……いや、現実だった。やばめ。


 突き刺さっていた呪剣は割れて地面に落ちる。


 流石にヤバさを感じて、俺の後ろに父さんを下がらせて、魔神杖を構えて戦闘態勢をとる。


「GAAAAAAAA!!!!!!!」


 悲鳴とも奇声とも怒声とも慟哭とも取れる叫び声を上げて、その音の振動が庭園に響き渡り、地面に落ちた破片もカタカタと震え出す。


 牛に近いような雰囲気の顔と緑のアフロ、捻れ尖った灰色の角を持ち、四本の剛腕、黒く染った鉱石質の質感を持つ異形の怪物。

 金の眼が憎悪に満ちて人ならざるもの……魔族ならざるものへと変わり果ててしまったブロッケン。


「……どういう、ことだ………?」

「本人の意思に反して発動したのは確か」

「うむ………よしっ」


 何故か気合を入れた父さんに疑問符が浮かぶ。


「アレク、対処は俺に任せろ……これは魔王としての義務だからな」

「……サポートで魔力援助は良いよね?」

「頼む」


 頼まれては仕方ない。

 父さんの背中に手を触れて魔力を流し込む。

 成長が止まった俺には訪れない、大きくて頼りがある背中に触れて、その温もりを感じる。


 怪獣ブロッコリ(改名)は先程まで突き刺さっていた呪剣の影響などものともせずに空間魔法を繋げて黒金の大剣を取り出し、四本の手にそれぞれ持つ。

 何の型もなく無造作に大剣を振るって地面や空間を切り裂きながら暴れ狂う。


 残り数歩の所まで近づいくるブロッコリ。

 俺は魔法で石礫を放つが、かなりの強度を誇る身体を持っているのか、いとも容易く弾かれる。


「父さんっ!?」

「安心しろ……俺を信じろ、息子よ」

「すっごい信じてますっ!」


 いざと言う時の為に片手に転移魔法の魔法陣を浮かべて設置しておいて万が一に備える。

 ついにブロッコリは父さんの眼前にまで迫り、大剣の一つが振り下ろされる。


「っ─────」


 しかし、父さんを切り裂く音も、大剣が弾かれる音もしなかった。

 何故ならば、ブロッコリの刃は魔王の眼前で止まって動かなくなっていたから。


 腕の一本が大剣を放り捨て、父さんの眼前に迫っていた方の腕を掴んで拒絶をしていた。

 異形の身と成り果て、再び主に牙を向いたが、理性を持ってそれを止めたのか……


「よくやったぞ、ブロッケン。流石は我が忠臣……良い働きであったっ!」


 体調が回復しても、魔力集積地と呼ばれる魔力が発生し蓄積される器官が壊死したまま完全な治療を施していない父の手では、戦闘は避けるべき道。

 だが、俺が補助して魔法発動ぐらいの助力は出来るが……これで勘弁してください。


「《魔嶽絶剣》」


 魔王が扱う暗黒魔法の中で上位にランクインする強力で理不尽な一振りの剣。

 恐らくこれが最後の魔法詠唱。

 紫の刀身に黒い瘴気が帯を象る長剣を、耐え忍び理性を保つブロッケンに突き刺す。


「さらば!」


 グサッと胸に入り込む刀。

 何の抵抗もなく、硬い身体を壊していき……あっさり貫通して心臓を消失させる。

 そして、胴体が消滅する。

 頭が吹き飛び、四本の腕も宙を舞い、下半身は崩れ倒れる。


「GAAAAAAA…………」


 異形の頭が、笑みを浮かべて目を閉じて、地面の上に落下して命の灯火がフッと消える。


 《秤》のブロッケン=ネザゲルート。


 全ての真意は明かされず、彼の思いも出来事も、長年仕えた主の手によって闇の中へと消えていく。



 四天王《秤》のブロッケン=ネザゲルート VS アレク=ルノワール & 魔王シルヴァトス


 勝者、ルノワール親子。



「……終わったね」

「あぁ」


 紫の剣は光となって塵となり、父さんの手から消えていく。それを横目に、ブロッケンの遺体を目に入れて合掌する。


「……アレク、俺は一度山に戻るぞ」

「そうなの?」

「戦力外通告される前に戻る……それに、エリザが心配しているだろうからな」

「……母さんは此処に来てること知ってるの?」

「知ってるわけがないだろう」

「うん、急ごうか、うん」


 母さんが父さんと俺に説教を始める前に帰還させよう。いつも温厚でネジが外れてる人ほど、怒る時は怖いのだ。


「後は頼んだぞ」

「あいよ」


 父さんを送り返して、俺はブロッケンの遺体である身体の部位を空間転送して異空間に飛ばす。


 床が溶解した鉄で覆われた機能しない庭園を後にして、俺は再び魔皇城を登るのだった。


 ……いや、転移魔法使って行けばよくね?


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