強者の闘舞
冬休み明けテスト終了。
って事で、ぼちぼち再開します。
Q、最強と最強が本気で戦ったら何が起こる?
その問の答えとなる戦闘は既に始まっていた。
四天王最強の男、アンデュラー=アームストロングは愛刀を片手に対峙する敵を切ろうとし。
魔皇四将最強と名高い男、破砕の神徒ガムサルムも鉄拳を構えて敵の心臓を貫かんと拳を出す。
戦の舞台となった大広間は見る影もなく傷つき、荒れ果てているのは言うまでもない。
ガムサルムの《万象の破壊》は、今回ばかりは本気のようで容赦なく武器を壊しに来る。
鉄分吸収で再生する鮮断刀クークマッドは折れたら再生、割れたら再生、壊れたら再生を繰り返して貯蓄してあった鉄分を使い失っていく。
壁や床を削ってある程度の鉄分の補給は可能であったが、戦闘を維持するには心もとない。
両者ともに、大きな傷は無いが、疲労は重なる。
……普通なら相当の痛手をどちらかが喰らっている筈なのだが、包丁と拳という武器で戦い、お互い目立った傷が無いのは驚愕すべきか否か。
「はっ! やはりやりよる! 流石は四天王最強の武人! 今世紀最大に楽しめるぞっ!」
「はっはっはっ! 光栄だが……一つ訂正させて貰おうではないか」
「なんだぁ?」
ガムサルムの称賛の声を受け、訂正すべき箇所を聴いて笑みを浮かべながら叫ぶ。
「俺は武人ではなく……料理人であるっ!!」
いや、武人でもあると思う。
「……そうだなっ! 強い料理人か! そう考えるとお前のような部類を相手にするのは初だ!」
少し悩んで、もうそれで良いかと納得したガムサルムも、料理人との戦いは初めてだったらしい。
再び二人は武器を構え、互いの勝利の為に前進して火花を散らして戦禍を広げる。
既にその瞳には、目先の戦いにか向けられていなかった。
無駄な雑念も、信念も無く。
ただ戦闘という一種の祭りに血を滾らせ、己の本能に従って動き続ける。
「はああああぁぁぁっ!!!」
ドゴォンっ! と音を立てて壁を文字通り瓦礫へと生まれ変えるガムサルムの不動神拳。
攻撃を避けて肉切り包丁を地面に突き刺し鉄分を吸収しながら再び進むアンデュラー。
「ぬううううぅぅんっ!!!」
鮮断刀クークマッドを横薙ぎに振るって胴体の空いた箇所に切りかかるが、ガムサルムは寸での所で転がって避けられる。
空を切る包丁。砂埃舞う戦場。
「《地動号哭》っ!」
ガムサルムは床に向かって拳を振り下ろし、蜘蛛の巣状に亀裂を広げて粉砕する。
床が抜けて下の階に落ちる二人。
ガムサルムはその瓦礫を器用にピョンピョン飛んで移動する。それを真似てアンデュラーも飛び跳ねて落ちる瓦礫の上を飛んで対峙する。
僅かな時間の間に繰り広げられる常人の目には写らない戦闘描写。
拳と刃が衝突し、能力の効果によってアンデュラーの包丁が押し負けて刀身が粉々になる。
飛びかかり攻撃を仕掛けた勢いでアンデュラーに触れようとするガムサルム。
ほんの一瞬の空中戦であり、足場は悪く、踏み外せばバランスを崩して落ちてしまう。落ちれば瓦礫に潰される可能性が高くなり、非常に危険だ。
更に、ガムサルムの拳を直に生身で受ければ、破壊の力で自身の身体を破壊されてしまうかもしれない。
今のところ、彼が自身の目の前で壊したのは結界や武器や壁。可能性の話だが、生物の肉体も壊す事が出来るだろう。
それを考慮したら無闇に触れることは出来ない。
アンデュラーは鉄分消費に伴い再生する愛刀を片手に態と地面に降りて目の前に迫る拳から逃げる。
先に地上に降り立ち、上から降る瓦礫の雨を避けたり刀を振るって別方向に飛ばして落とす。
間一髪攻撃を避けられたガムサルムは舌打ちをしながらも壁に手をついて飛び降りる。
瓦礫が散らばる床の上で、二つの最強は再び睨み合い、再び武器を交える。
「《千切大刀》っ!」
アンデュラーは肉切り包丁を壁に突き刺して肉を切るようにスっと刃を動かして部屋の壁を斬る。
文字通り千切りのように切断され吹き飛ぶ壁の一部が轟音を立て波打ちながら宙を舞い……ガムサルムに向かって飛ばされる。
「《不和雷慟》うっ!」
紅い雷を纏った拳……正確には漏れた魔力が拳の周りから放出されて、数枚の帯のように切られた壁を全て片手でねじ伏せて壊し突き進む。
破壊し、再生し、切断し、崩落し、激突し……何度も衝突して魔皇城を震動させる。
二人の魔族の最強。
互いに強者として君臨する二人の武将。
この戦は延々と終わることは無かった。
それでは問の答えを導き出そう。
A、最強の二人が戦ったら延々と終わらなくなる
破砕の神徒ガムサルム VS 《力》の四天王アンデュラー=アームストロング
勝敗つかず。
互いの王が決着をつけるまで、魔皇城を破壊しながら延々と戦闘継続。
そして、この結果が後に混乱を生み出すことをまだ誰も知らなかった。
決着がつかぬ戦いも意外と良いよね……ね?(威圧)
べ、別に戦わせたらオチが思いつかなくて引き伸ばしたとかじゃ、ないんだからねっ...///