セイレーン海の無人島
セイレーン海。
世界の海各地に暮らす人魚や魚人達の祖先が誕生した母なる海とされている場所である。
ここには、伝説級のリヴァイアサンの寝床がある場所と推定されており、多くの観光客で賑わいながら、宝を求める冒険者達が集まってくる場所でもある。でも、全体的に生態系が高すぎて、並みの冒険者では到底攻略できない。しかし、近辺の村の海女さん達が果敢に海に潜り作業をしているので、全域が危険という訳では無い。
そのセイレーン海に浮かぶ一つの無人島に向けて、潮の匂いが香る上空を、俺たちピクニック組は飛行している。
メンバーは、
俺こと、アレク=ルノワール。
妹の、ユーメリア=ルノワール。
母である、エリザベート=ルノワール。
父で魔王な、シルヴァトス=ルノワール。
そしてメイド長のムジカ。
四天王《豪》のグロリアス。
そした、四天王《秤》のブロッケン=ネザゲルート。
ついでに《秤》のブロッケンの容姿は、端的に言うとアフロの小太り男。下顎から生えた二本の白い牙と、黒いアフロヘアー。中年太りした体をTシャツとジーパンで無理矢理押し込めている。
「いやー。やっぱり空飛べるもんは羨ましなー」
「なら飛べるように魔法術式を作ってくださいよ。(なんで私がこんな重い奴を運搬しなきゃいけないんだ……)」
「あーほんと、すまへんなぁ、グロリアスはん。後で何か奢るから後もうちょい頑張ってくれや」
「帰りは自力で帰ってくださいよ……」
グロリアスは嫌々言いながら、ブロッケンを重そうに運んでいる。
そう。ブロッケンは翼を持っていないので空を飛べない。エルフであるグロリアスは風魔法の応用で飛行術式を造って飛んでいる。
しかし、ブロッケンは風魔法との相性が悪いらしく、全然作らないらしい。
そんなブロッケンが何故ついて来てるのか?
それは、こいつの時空魔法の腕が影響している。
四天王《秤》のブロッケン=ネザゲルート。
究極系の時空魔法を代々受け継ぐネザゲルート公爵家の長男だ。
彼は一度行った場所なら、記憶に残っている限り、《門》を繋げて転移できる。
有事の時のために、避難場所として無人島を用意するために呼ばれたという訳だ。
……まぁ、ここまで運搬しなくとも、俺の魔法で魔王城と無人島を転移して連れて来ればいいのだが。気づいたのが既に距離が3分の2程行ったところだったのだ。言わなきゃ吉だ。
そう思考していると、
「見えた!」
普通の魔族よりも異常な視力を持つユメが無人島を発見したらしい。
しかし、俺には見えない。
「うむ。意外と大きそうだな」
「えー?何で見えるの〜?」
「やはり魔王とは規格外なのですね……」
「だなぁ…」
うん。父はともかく、見えないよね。やっぱり。
それから数分後。
俺たちにも漸く薄っすらと無人島が見えた。
……意外と大きいのは確かだ。
「《地形把握》」
言霊魔法により無人島の大まかな情報が頭に入る。
中央に、開けた丘があり、あそこで弁当を食べるのが良さそうだ。
北側…つまり、俺たちから見た側には広大な森が東にまで広がっている。
南側は崖になっており、サンゴ礁も形成されている。
西側は広大な砂浜になっている。
「さて。上陸だーー!」
『わーい!』
こうして俺たちは無人島にピクニックの為に上陸したのだった。