奪還準備時間
核の効果が消滅したのを確認してから《封世結界》を解除して、やっとの事でニーファの隣に転移してくる。
「やっほ」
「ふぅん!!」
「ぐはっ」
気軽に手を挙げて挨拶したら、鬼の形相のニーファに腹パンを食らわされた。
勢いよく吹っ飛んで観戦部屋の岩壁に激突する。壁にめり込んだ俺は、頭が床の方に向いた状態…つまり上下反転した状態でニーファの説教を食らう。
「お主……物事をしっかり考えてから行動した上で、戦場に出たんじゃから用意確認をしっかりとじゃな……」
怒られる理由も完全に否があるのはこちらなので、甘んじて説教を受け入れる。
マールの案内で観戦部屋に到着していたユメやノーストール卿達が冷めた目で此方を見ている。
……そんな目で見ないで。
それから、珍しく長ったらしいニーファの説教を聞きながら壁に埋まること約十分。
身体の感覚が無くなってきたんですけど。
それに痛いし。
治癒魔法すら掛けさせてくれないの……?
俺が背中と腹の痛みに静かに悶え、涙を堪えていると、それにニーファが気付いて目を細める。
「……………反省したか?」
「し、しました」
「じゃあ、戻って良し」
「あい」
許しを得た俺は岩壁から転がり落ちて四つん這いで椅子の座面に手を乗せて唸る。
「あ"あ"あ"ぁ〜〜〜……プニエルぅ〜」
「んにゅ?……ひかり〜!」
プニエルを呼んで光の治癒魔法を使って背中と腹を癒して回復させてもらう。
本気のマジ殴りだったから、助骨とか色々と逝ってた気がするけど、嫁からの愛の鞭ということで。
俺は座面に手を乗せたまま、横にシングルベッドを召喚して寝転がる。
あぁ〜、体勢が楽だわ。
「………あ、初めて良いですよ?」
「……はぁ」
魔都の奪還作戦の会議を進めていたユメ達が俺の行動の一部始終を見て動きを止めていたので、お構いなくと告げると溜息を吐かれる。
「なに?」
「その格好で言われても困るんですけど」
「…………?」
言われてもわからなかったので、自分の服装を見てみれば、黒い軍服ははだけており、お腹や胸元が何故か出ている状態。
……というか、絶賛脱がされてるんですが。
「ニーファ?」
「む? なんじゃ?」
「ズボンに手を掛けるのやめて?」
「……まぁまぁまぁ」
「やめろてめぇ!」
急に人様の服に手を掛けて脱がしてくる神竜に火を吐く勢いで威嚇する。
しかし、ニーファはそれを物ともせずに俺の腕を押さえ込んで馬乗りしてくる。
……え、何なのこの状況。
ユメとか母さんとかメリアとかマールは興味深そうに此方を覗き込んで助けようともしない。
父さんやクロエラなどの男性陣は目を背けて俺をたすける素振りも見せない。
「……いや、少しやり過ぎたかと思うてな? ちとは優しくしてあげようではないかなぁーと」
「上から目線なのが気に食わねぇ……なぁっ!」
「ぬわっ!?」
俺は転移魔法でニーファの拘束から逃れてメリアの背後に移動して乱れた服を正す。
俺の気配に気づいたメリアが驚いた顔で振り向いて、諦めた顔で前を向く。
「あのさぁ……そういうのは後でな」
「……わかった」
神竜だから、人との価値観が違うのかね?
今の段階って結構、重要な局面であるとは思うんだけど………
「取り敢えず……魔都奪還作戦の会議を再開しましょう」
ユメの言葉から作戦会議は幕を開けたのだった。
魔都奪還作戦。
俺が開けたスラムの西城壁の跡地から進軍して、魔都に残っているであろう真の魔族を討伐していく。
最終的には魔王城……改め、文献から判断された初代魔王の居城、魔皇城エグメニオンへと侵入して魔統神ダグロスを討つ。
魔都の残党狩りを務めるのは、蒼穹の戦線のメンバーや、勇者パーティのシリシカ、クレハ、ミュニクの三人、連合軍の勇敢なる兵士たち。
魔皇城に乗り込むのは、俺とニーファとメリア、ユメ、四天王の3人、勇者マサキと聖女ソフィアが選抜メンバーとして行く。
魔王シルヴァトスと王妃エリザベートは、観戦部屋で待機となるが、用事が出来たら呼べという意味で通信の魔導具を渡してある。
敵の主力たる《魔皇四将》や親衛隊は残っているこの状態に俺達はどう戦い進むのか。
そして、今後の行き先を決める為に一時間ほど時間をかけて直ぐに、全員が動き出すのだった。
同時刻、魔皇城エグメニオンにて。
「陛下……如何なさいますか?」
神徒メノウは主の機嫌を伺うように尋ねる。
「……そうだな」
魔統神ダグロスは王座に鎮座し足を組みながら、最後の戦局へと思いを馳せる。
「奴らは我が思う以上に戦果を上げた……先祖としては喜ぶべきか、敵として忌むべきか」
どこか嬉しそうに……魔族の未来を憂いる初代魔王ダルクロス=ルノワールは目を細め、やがて閉じ、開いた時には命を射抜く冷たさを宿した眼を世界に晒す。
そして、勢いよく立ち上がって命令を下す。
「親衛隊全員に告ぐ! 城へと入りし怨敵を皆殺しにし、我が眼前に首を並べよ!」
「「「はっ!」」」
「魔皇四将! 貴様らは我の持つ換えの効かぬ手駒! その意味を理解し、敵を討て!」
「「「「はっ!」」」」
魔王国の歴史に残る最後の内戦。
その火蓋は切って落とされたのであった。
〜ここからは年末小話〜
※名前は二回目の会話から頭文字表記になります
アレク「はい、今年も終わりですね」
ニーファ「じゃの」
ア「ということで読者の皆様、2019年最後の夜、いかがお過ごしでしょうか?」
ニ「まさかコレを読んどる奴はおらんじゃろ」
ア「……いや、そこを判別する権利は我々に無いから知らないよ?」
ニ「取り敢えず、来年も作者が血涙を流しながら頑張るから宜しくなのじゃ」
ア「前回の期末で初の全教科平均点以上を勝ち取ったらしいから、余裕のよっちゃんだと思うけど」
ニ「……人間は苦じゃの」
ア「ほんそれ。転生して良かったわ」
ニ「まぁ、今日は無礼講って事でこの後書きスペースを占領して話してるわけじゃが…」
ア「何話す?」
ニ「ネタはないぞ?」
ア・ニ「「…………………」」
メリア「ではここに、お二人の夜の攻防戦を編集した動画がありますので、コレを鑑賞して────」
ア・ニ「「却下」」
メ「……さいですか」
ユメ「じゃあ、私とお兄様のイチャラブ本の販売許可を取る為の方法を話し合いま─────」
ア「却下。禁書決定なり」
ユ「……自信作なのに」
正樹「じゃあ僕の勇者としての物語を────」
ア・ニ「そんな物語ない」
正「えっ………え?」
ア「安心しろ。お前が主役となる物語は……うん」
正「酷くないですか!? ……てか、なんで僕の名前は漢字表記なんですか?」
ア「アとマの見分けがつかないから」
正「メタいっ!」
アンテラ「仕方ないなぁ……ここにアレク君の前世の情報が詰まったビデオが…」
ア「却下」
ニ・メ・ユ「「「採用」」」
月「……だってさ。どうする?」
ア「ネタバレ禁止」
一同「そんなぁ……」
父さん「ふむ……普通に今後の話とか宣伝をすれば良いのではないか?」
母さん「私もそれでいいと思うわ〜」
ア「……お前ら、うちの親を見習えよ」
ユ「わ、私の親でもあるもん!」
ア「じゃあ、今後の活動内容だが……基本的に今まで通りに、定期試験が無い時は毎日〜二日に一話のペースで投稿になるな」
ニ「作者が読み終わってない未読の小説や漫画の関係もあって時間が空く日もあるかの」
ア「まぁ、結局の所、俺の刺激的な日常が展開される物語だからな?」
ニ「他には何かあるかの?」
ユ「あと、私とお兄様の薔薇色生活と……」
父「……魔王シルヴァトスが王になるまでの話と」
母「私の学園百合征服譚でも話そうかしら〜」
ニ「……いや、お主の親の見習うべき場所が見当たらなくなってきたんじゃけど」
ア「言うな。これが魔王スタイルだ」
ニ「納得する要素がないんじゃが……」
ア「えーっとですね、こんな感じに騒がしく楽しくやっていくわけなので……」
ニ「これからもよろしくなのじゃ」
ア「うん。まだ始まって一年も経ってない生後9ヶ月の物語ですが……気楽に読んでってね」
ア「それじゃあ、ここでお開きとしましょう」
ニ「早うないか?」
ア「ネタが寝たきり状態のようです」
ニ「つまらん」
ア「だってよ作者。死んでどうぞ」
作者「 _(┐「﹃゜。)__ 」
ア「それでは、作者の遺言をお読みします。どぞ」
〜遺言〜
私の墓の前で泣かないでください。
その涙で乾かした布団が濡れちゃいます。
やめてください。
追記:作者たる僕が神だァ!!
ア「……やっぱ、頭オカシイってアイツ」
ニ「こんな物語作っとるぐらいじゃからのぉ〜」
ア「取り敢えず、本当に閉めたいと思います。
それじゃあ皆さん、声を揃えて、せーの!」
一同「皆さん、良いお年を!」
ア「バイバイ!」
2020年もどうぞ宜しくお願いします。