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魔王の兄は転生者  作者: 民折功利
第五章 魔に挑むお兄様
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魔法を作ろう


 戦争準備が始まって一日目。

 俺が民衆を扇動した結果、噂が噂を呼び民衆の心を動かし、戦える魔族の多くが自主的に志願兵へと志願し始めた。

 戦える魔族と言っても、大の男だけで、女性や子供は…例え才能があっても未経験として非参加となってある。

 まぁ、だとしたら俺は何なんだって話だけど。


「よぉーっし!楽しもう!」


 さて、世界同盟に加入してる……加入してない国なんて無いんだけど、大国や小国問わずほとんどの国が何かしらの小さな援助を魔王国に送っている。

 つまり、世界全体が神に対抗するために手を尽くし始めている中、俺は何をするか。


 魔法を作ろう。


「ってことで、やってまいりました!

 『アレクの魔法クッキングぅ』のお時間です!」

「……お主、こんな企画始める時間があるのか?」

「えっ……時の流れを弄れば余裕だけど」

「神の御業なんじゃよなぁ……」

「神化してますけど」

「そういやそうじゃったの」


 ニーファを納得させ……いやかなり頭を悩ませてるけど気にしてはいけない。

 本題に入ろう。

 場所は俺の異空間のひとつ。ニーファが俺の作業風景を見たいと言ったので特急で造った理科室だ。


「今回作る予定の魔法は……こちら!」

 

 俺は理科室空間の教壇の後ろにあるホワイトボードを魔神杖を指示棒代わりに使って指す。

 白板には、今回使う予定の魔法文字、効率化の数式、必要魔力総量、脳内演算負荷量、属性魔術式、魔術回路の簡易図などが記されている。

 はっきり言って全部使うかは不明である。

 しかし、白板の中央にはデカデカと文字が赤ペンで書かれている。


「《広域完全殲滅魔法》」

「……物騒な言葉の羅列じゃな」


 例えの話をしよう。

 目の前に、砂利と表現するしかない程の群衆の敵が迫ってきているとします。

 効率良く簡単に倒して前に進むにはどうすれば良いでしょうか?

 と、書いたノートをニーファに見せて考えてもらう。


「……広域、つまり面で仕留める」

「はい正解!」


 一点集中型は剣士や狙撃手が心臓や脳天を貫く、斬る際にその部分だけを攻撃する方法。

 反対に、面…つまり、全体を狙う戦闘は、戦争に求められる軍事的攻撃方法。

 俺理論では、この面攻撃の一撃で仕留めきるのがベスト。

 しかし、今回の戦で俺一人が勝ち星を挙げると他のみんなの意欲低下に繋がってしまう。

 今回俺が求められる魔法は、一撃で敵軍の四割は死滅できると断定できる…余裕で禁術指定を受けられるような魔法である。

 というか、禁術指定されないとヤバい魔法しか造ってない気がする。害悪指定。


「じゃあ、早速始めましょって事で……まずは俺が使ってる禁術の術式録書を出すじゃろ?」

「じゃろってなんじゃ……って、術式録書?」

「俺が使う黒魔術禁術を詰め込んだ記録書」

「把握した」


 俺は分厚い図鑑レベルの本を取り出してページを捲る。

 100ページを越えたあたりで手を止めて、その禁術の術式と魔術回路を書き出す。


「《メギドの火》なんて書いてどうするんじゃ?」

「俺が禁術指定予定になる前提の魔法を作る時は、古くからあるものをまず流用する」

「ほへー」

「以前、お前に放った即席複合禁術パンデミック・エンドゲームなるものの改良版もこの方法で理想化してある」

「あ、あれか……どんなふうに変わったのじゃ?」

「発動準備段階で禁術を複合する作業を無くし、完全に別個体の魔法へと昇華、周囲の魔素を吸収することで俺への負担を縮小。更に魔術回路も一捻り加えて破壊力と世界に与える負荷をアップ。実は現在も暇な時は改良に手を加えているぞ」

「お主、暇な時間とか実は無いじゃろ」


 なんとなくそんな気がするのは俺だけじゃ無かったようだ。

 暇な時にを免罪符にめちゃくちゃ裏で頑張ってたもんな、俺。

 お陰で人前に出しずらい物ばっか出来てるけど。


「さて……始めるか」

「我は見学者じゃから丁重に扱えよ?」

「お菓子と飲み物はそこの冷蔵庫にあるから」

「わかった」


 俺は《メギドの火》の術式の一部を改変したり、別の魔法陣に組み込んだりして図面に描く。

 偶に空中に魔法陣を浮かべて、パズルのようにちぎってはくっつけを繰り返す。

 《メギドの火》が持つ原子崩壊の特性。

 これを応用した新しい魔法。

 火属性のエレメントを融合させたり、空間魔法の術式をも計画的に付けては取ってを繰り返す。


 いきなり話は変わるが、俺がかつて生きていた日本は、二度の世界大戦を辛うじて生き延びて、なんとか軸に乗って発展した国だと俺は認識している。

 世界で唯一の被爆国家として世界に核廃棄を求めている祖国の民でありながら、核の強さについては人伝で深く言及されることは無く、ネットを通じて知識として頭に入れた力しか俺達は知らない。


 だが、禁術を使い、連発している今なら分かる。

 結構危険だ(他人事)。

 一個人が持っていい力では無い(超他人事)。

 そもそも、禁術を一個使ってるだけで罪に問われてもおかしいのだ(超絶他人事)。

 俺はそういうのを無視して使っている。

 魔族の王子であるから、神に選ばれた者だから……ではなく、理由は単純明快。


 法など知らん。

 誰かが決めた枠組に入ったままでいたら、俺は腐ってしまう。過去(前世)のように。

 そもそも、禁術指定されてるのは使えない人間の妬みであり恨みであり……恐怖から生まれる集団意識の元、禁忌とされる。

 では俺の場合は?

 いや、俺が禁術と決める理由は?

 簡単な話だ。

 ただ危険度の高さをそれとなく考えて配置してるだけだ。

 他の連中と同じ枠組で考えてなどいない。

 下手したら、部外者からは俺の使う言霊魔法の全てが禁術に値するなんて言う奴が出るかもしれん。


 結局の所、自分勝手なのだ。

 俺は使いたいから禁術を使う。お前らがダメだと言うなら、お前らが見なきゃいい。

 目を背け現実から逃げて俺の魔法から目を離せ。

 気付いた時には倒すべき敵は消え、束の間の平和ぐらいは用意してやる。

 俺が法だ。俺が神だ。俺が全てだ!!


「なんか正論を並べとるが……それ、自分自身への説得じゃよな?後で文句言われても対抗して論破できるように思考を逸らしとるだけじゃよな」

「めっちゃ心覗かれてる!?」

「……お主との契約の思考共有の回路を開いてみれば、案の定難しい言葉を並べて正当化しようとしてみて、自分を落ち着かせとるだけじゃろ」

「正解!」

「じゃからそう自信満々にじゃな……」


 つまり、俺の思考はコイツにダダ漏れ……ん?


「なんでお前からパス開けれる様になってんの?」

「昨日、お主が酒に酔いながら権限くれたぞ」

「待って? 未成年にまた酒を呑ませたの?」


 俺、記憶ないんだけど?

 昨日の夜は普通に布団に入ったよ?

 隣にニーファいるのはいつも通りだけど。

 てか勝手に酒呑ませるの辞めない?

 処すよ?


「ん?……寝とる内に呑ませて起こして可愛がって蕩けた所で要求した」

「うん、すっごい突っ込みたい」


 どこから突っ込めば良いか分からないけど。

 ニーファと俺を結ぶ《契約魂陣》を開いてみれば、案の定、全権限がニーファにも渡っている。

 取り敢えず権限剥奪!


「ぬわー!?」

「当たり前だろアホが。お前に権限なんてやらねぇよ」

「ぐぬぬぬ……次はもっと上手くやるか…」

「やめろよ?……したい事あるなら真正面から言えってば」

「じゃあ(バキューン!)したいのじゃ!」

「直球アウト発言!?」

「ならメリアも呼んで(バキューン!)するのじゃ!」

「被害を増やすな!」


 ……って、よく見たら酔ってるやん。

 机の上に《龍泉酒》を並々と注いだお椀が置いてありますねぇ。

 コイツ、酔ったら見境ないぞ……経験上わかってる事だ。ボク知ってる。

 逃げよu……ダメだ、今下手に走ったり転移したりしたら術式が崩れて暴発する!


「……そ、そういう話は俺の作業が終わってからで宜しいかな?」

「む……まぁ、仕方ないの」


 案外簡単に引き下がってくれたが……どんな要件を出すかわかったもんじゃない。

 早く終わらせよう。

 コイツを時間の流れが操作されていない通常世界に転送することも考えたが、魔法術式の暴発と、結果によってはニーファが出て直ぐに俺が帰って来て、アレ?早く終わったじゃん早く話そうぜ、なんて面倒な展開は嫌だ。


 いずれ来たる恐怖の宣告に身体を震わせながら、俺は魔法を創造するのであった。





「でけた!」


 テッテレレッテッテーテーテー!

 意味深な効果音を幻聴させながら俺は魔法を完成させた。


「《滅却核熱式(アトミック・フレア)》」


 意味は原子力の炎。メギドの火と名称的意味は同じだが、魔法そのものが違う。


「……どんな魔法じゃ?」

「核分裂を引き起こす的な感じ」

「なんじゃそれ」


 異世界に核の要素は無いのか。

 核分裂を簡単に説明すると長い。

 中性子を吸収したウランが、クリプトンとバリウムに分裂した例で、この分裂の際、平均2〜3個の高速中性子が放出。この中性子が別のウランに再び吸収され、新たな核分裂反応を引き起こし……核分裂連鎖反応を引き起こす。その際、核分裂連鎖反応は指数関数的に反応するのだ。

 この連鎖反応をゆっくりと進行させ、持続的にエネルギーを取り出すことに成功したのが原子炉であるが、一方、この連鎖反応を高速で進行させ、膨大なエネルギーを一瞬のうちに取り出すのが原子爆弾と呼ばれる例のブツだ。


 それとなく纏めた文章をノートに書き、ニーファに目を通させる。


「……専門用語ばっかじゃの」

「まぁ、物理学はムズいだろうな」


 これで父だった男を殺せないかなって一生懸命覚えて蓄えた記憶が懐かしいなぁ。

 なぁ、この知識は転生する五年前の知識であり、何十年と経って記憶が薄れて、間違ってる箇所があるかも知らないがお気になさらず。


「で? 性能は?」

「よくぞ聞いくれた!」


 俺はホワイトボードに書かれていた文字を全て白板消しで消して新たに書く。


 《滅却核熱式(アトミック・フレア)》。

 異空間内で行われる原子崩壊の際に生じる質量欠損が莫大な破壊エネルギーを生み出し、発生したエネルギーを外界に放出、爆発させる魔法。

 爆発の際に放出される放射性物質は時空間によって歪められ、結晶となって指定範囲(・・・・)を舞う死の雪となって侵入を防ぐ。

 指定範囲は、魔法発動時に自動的に結界が張られて逃げ場を無くすようになっている。

 無論、一度起爆したら数年は立ち入れないなんて結末を迎えぬように三時間で魔素に還元されて自然に還る仕組みとなっている。

 《メギドの火》は広範囲を無差別に一撃で焼き焦がし消滅させるが、《滅却核分裂式(アトミック・フレア)》は結界内を焼き尽くして消滅させる魔法である。

 どちらも似ていて違う魔法だ。


「クックックッ……威力が強すぎて実戦で使う気が無くなってきたんだけど」

「賢明な判断じゃと思う…」


 まぁ、使わないとスムーズに事が進まない気がするから、容赦無く使うんだけどね。


 結論。

 アレクの魔法を創造する過程は常人が理解出来る範疇ではない!

 以上、解散!!


はい、読んでわかったでしょう?

……作者はシリアス展開よりも日常を書きたくて仕方なくなってきました。

はい。

戦争を求めてた人、ゴメンね?

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