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魔王の兄は転生者  作者: 民折功利
第五章 魔に挑むお兄様
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如何なる時も自由な二人


「………観自在菩薩。行深般若波羅満多時。照見五蘊皆空。度一切苦厄───────……」


 ポク、ポク、ポク、チーン……

 とある遺影を飾ったお経台を設置し、火が(ほの)めく蝋燭に香炉や花立も用意され、俺は(りん)と木魚を専用の棒で叩き、うろ覚えのお経を詠む。


「……ニーファさん、あれは一体?」

「黒山羊のひとり葬式をしてるらしいが……あれ意味あるのかの……?」


 うぅ〜……敵の死体から産んだ黒山羊(ポチ)さん、お勤めご苦労様でした……貴方の屍を越えて僕は前進しますっ!!


「全ての元凶はお主なんじゃよな〜」

「まったく……さも素材()が怨嗟の声を上げて許しを乞う様に演出したのにトドメ刺しやがって!!」

「全面的にお兄様の悪意が強すぎかと」


 戦闘で悪ノリした上に造ってポイっじゃ可哀想だったし、元の主君に合わせに行ったら即殺されちゃったし……一応、供養してあげようかなぁ、って。

 普通に善意なんだけどな…


「────……以下省略、葬式終わり!!」

「呆気ないのぉ」

「だって前半しか覚えてないもん」

「理由が酷い」


 お経セットを異空間の『魔導倉庫空間』のガラスケースの一つに安置する。


「黒山羊2号(・・)、お前の事は忘れない!」

「……え、二匹目なんですか?」

「あっ………いや、言葉の綾ですね」

「無人島で狩った魔獣で同じの創造しとったな」


 ぐうっ!!

 ………実は、無人島で皆で狩り尽くした魔獣を使って《ネクロ・オーン》による黒山羊を一匹だけ産み出して見たんだが……

 魔族八人で造った黒山羊は六メートルだったが、狩猟魔獣の七割を使って錬成した黒山羊はまさかの体長二十メートル。

 建築業者によるが、マンションやビルの5〜7階に相当する大きさである。でかぁい。


「そう言えばあの黒山羊はどうなったんじゃ?」

「『環境保護空間』で世話してる。生きてるぞ」

「……2号は短い命じゃったな」


 改めて南無阿弥陀仏。

 ゴメンな黒山羊2号。でも、肉の食事代が1号に持ってかれるからお前を世話するのは無理だったんだ……許せ。


「じゃあ、気を取り直して話を進めよー!」


 いきなりのポジティブ思考への切り替えは前世で学んだ特技……尚、死ぬ前年に衰退した……なんだからな!


「アレク」

「ん?……なんでしょう、陛下」


 父さんが真面目な顔で何かを訴えてくる。


「……命の大切さについて改めて教えてやろう」

「えっ……十分理解してりゅので良いです」

「それじゃあ、この教科書を持って第三講義室に…」

「無理矢理っ!?」


 まぁ、自分でもどうかと思ったし、生命への再認識をする為に、父さんの講義(説教)に付き合ったのだった。




「ニーファしゃぁ〜ん!!」

「っ!……なんじゃいきなり」


 父さんの長い授業を終えたらもう夜だ!

 長過ぎるよパパぁ!

 ってことでニーファに甘えることに。

 彼女のお腹に抱き着いて顔を擦り付ける。


「うぅぅ〜……取り敢えず甘えさせろ」

「一気に可愛くなくなったんじゃが」

「……にゃっ♡」

「お主、女顔悪用しとるじゃろ?」


 俺は永遠に声変わり訪れない喉を使って女声を作り、母直伝の甘え猫ポーズでニーファを誑かす。

 しかし効果は薄かったようだ。

 彼女は少し顔が紅くなっただけの変化である。


「…………母さんがこれやったら一発で堕ちるって言ってたんだよ。てかドアの方をそっと見ろ」

「……ん?」


 ニーファが俺の言葉通り、そぉーと横目で見ると、ドアの隙間からハァハァと熱い息を吐く我らがお母様。

 俺が講義室から出ようとしたら、なんか別の意味で付き合いたくない講義が始まって、母さんに唆されて今に至る。


「……お主も大変じゃな」

「わかってくれてなにより」


 俺も好きで猫の鳴き真似とかしないから。


「えい」

「はうっ!?」


 取り敢えず魔力操作でドアを強制閉鎖。

 母さんの視線から逃れる事に成功した。

 それから暫く、母さんはめげずに耳を当てて盗み聞きをしようとしてたが、念話で呼んだ父さんに連れ去られて終了。


「……まぁ、甘えるのは決定事項だけどね」

「へ?」


 俺はニーファの胸に顔を埋める。

 ……あぁ〜


「な、な、な……」

「偶には俺から触ってもいいだろ」

「ぐうっ……仕方あるまい」


 俺はニーファとの貞操を賭けた勝負に敗北傾向にあって、主導権は殆ど奪われてるに等しい。

 ……てか、深夜の眠い時間帯に抗える程の力は無いです。布団の中に入ったら、後ろから身体を押し付けてきたり、触ってきたりって夜だけスキンシップが激しいんですよ。

 しかも二人っきりの時だけ。

 良いですか?

 僕はやってないんですよ?

 鋼の精神に誓ってされるがままなんですよ。

 ……まぁ、歳が歳だから青少年が喜ぶ域まで発展はしていないが、そろそろ(あや)ゆい。


「……あぁ〜。これやったら寝るか〜」

「その時は我の番じゃな」

「…………心を無にして寝るわ」

「それ毎日言っておらんか?」


 戦時中でも俺たち夫婦は自由だ。

 何事にも縛られず、捕まらず、ただただ長い人生を謳歌する。

 戦争なんかで互いの時間が潰れるわけが無い。


 ………でも、まだ(俺が)若いんだから、いかがわしい事は成人後の話でお願いしたいんですが。

 そこんとこどうなんでしょうか?

 あ、検討はしないと。

 ………嫁さんも自由だなぁ。


お母様暴走中


………アレクが羨ましいと思った人、正直に手を挙げなさい。

一緒に砂糖を生産する仕事に就きませんか?

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 女装したまま戦って敵を困惑させたりとか・・・しないんですか・・・? [一言] アレク君羨ましいけど羨ましくないですねぇ!
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