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魔王の兄は転生者  作者: 民折功利
第五章 魔に挑むお兄様
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執行官の隊服

「アレク様、コチラが出来上がった隊服でございます!」

「二通り御座いますので、ご着用ください!」

「試着室はこちらに!!」


 ………着いてけないテンションだわ。

 《魔界執行官》のかっこいい軍服一式が完成したとの事で、父さんやニーファ、メリア達と共にまとの王族御用達の服飾店の作業場に来ていた。


 ……戦争が始まるのだと言うのに、コイツら職人達は元気でハイテンションだな。

 魔都を出歩けば、窓や扉を厳重に閉め、更に宮廷魔導師が総出で一軒一軒、結界魔法を張って魔都の景観を破壊されないように努力が尽くされていた。

 …また作り直せば良いと思うが、それにかかる費用が馬鹿にならない為、例え魔都が戦場になっても建造物の破壊による攻撃を仕掛けられないように多くの工夫を凝らしている。


「えーっと……男性用のだけでいいかな?」

「そんなぁ!?」

「後生ですから!着てください!」

「なんなら、女性軍服で戦ってください!!」

「……そんな目で見るな。着るだけだからな」


 これ着ないと永遠に終わらないノリだな。

 ……女装しなきゃなんだよなぁ。


「試着室は?」

「こちらに」


 服飾職人に連れられて作業場の奥にある試着室……とは名ばかりの鏡つきの箱に入る。

 勿論、カーテンによる仕切りはついている。


「……中見るなよ」

「だ、大丈夫です、ですよ〜?」


 忠告しといて良かったわ……覗かれて酷い目に会うところだったぜ。

 取り敢えず、黒衣やシャツはアイテムボックスに収納して……


「……こんなのを相手せんとは、魔王も大変じゃな」

「ご理解頂けて感謝するが……あんなに彼らが発狂してるのは素材が良いからだと思う」

「確かにのぉ…」


 数分後。


「じゃっじゃじゃーん」


 黒を主体とし、紅いラインが引かれた上に金細工のボタン等が装飾された軍服上下。

 肩から伸びる鎖で繋がれ、胸元で光を反射する神竜の鱗製の龍頭の飾り。

 外側が黒く、内側が紅色で、前部分が開いたタイプの全身を覆い隠すマント。

 銀の小さな髑髏が目立つ様に飾られた軍帽。


 俺の好みにドストレートに決まっているカッコイイ執行官隊服である。


「上々の仕上がりではないか」

「似合うではないか」

「お似合いです、主様」


 ふっふっふっ。

 この軍服はお気に入りだな。戦時中だから常時これを着ていよう。


「ではアレク様!次はこちらを!」

「えーっ……」

「胸パットもあります!」

「化粧セットも!」

「準備いいなお前ら!?」


 やっぱり世の職人は頭のネジが外れた奴しかしないのか?この世界がおかしいのか?

 てか、王子を女装させようとするとか……


「不敬だな」

「そう言わずに!きっと似合いますから!」

「これを着れば奥様の顔もにやけますよ!!」

「おい、そこ。何捏造しておる」

「さぁさぁ、試着室へどうぞぉ!!!」

「あ……もういいや」


 諦めよう。うん。諦めよう。

 言われるがままにスカートと化粧セットと胸パットを手に持たされて、試着室に強制連行させられる。


「アレク様、化粧の仕方わかりますか!?」

「それぐらい分かるわ!王族舐めんなよっ!!」


 まったく。俺でも化粧ぐらいできるからな。


「……化粧って女の化粧じゃよな?」

「なんで知ってるのか問いたい気分だ」

「主様の異空間の衣装部屋に使われてない女の子セットありましたけど」

「………後で問い質すか」

「以前聞いたんですけど……」


「はい、お話はそこで強制終了ーーー!!!」


 俺の黒歴史の扉が開かれそうだったので魔法で早着替えをして降臨。

 魔法で化粧も一瞬だ。


「「「おぉぉ………神よ(手を揃えて崇める)」」」

「「「……………………」」」

「なんか言えよ」


 さっきの軍服のスカート版。

 更に胸パット着用と薄化粧による女装で全員の空いた口が塞がらない。

 母さんの趣味(・・・・・)で銀髪を肩で切り揃えてるから、女装したらショートボブ(多分そんな感じの髪型)の女子に見えなくもないんだよ。

 ……自分で言うのもなんだけど、女装したら女の子にしか見えないんだよなぁ。


「…詐欺じゃな」

「悪くは無いがな」

「割と気合い入ってますね」


 身内の総称が褒めてんのか貶してんのかわからんが……職人達が涙を流しながら崇めだしたので良かったのだろう。


「……父さん」

「なんだ」

「息子が女装できるように整髪する母に対して僕はどのように対処すればいいのですか?」

「………なるほど。エリザが元凶か……やりかねん」


 やっぱり把握してなかったか。

 そのまんまだけど、母さんは俺が女顔だからって化粧術を教え込んだり、切っていい髪の長さを命令してきたりと、欲望に忠実だ。

 魔法で髪の繊維を成長させて母さんの前だけ髪を伸ばしても良いのだが、バレたら厄介なので諦めて受け入れている。

 ………俺って諦めてる節が多くない?

 まぁ、前世で親から何かを教えられる事が無かった為、ああして教えられるのが新鮮でそのままズブズブ母の罠に沈んだのが原因とも言える。


「取り敢えずアレク」

「何だニーファ」

「その格好での外出は禁止じゃ」

「言われなくてもしねぇよ!……俺自身には女装趣味なんて無いからな!」

「でも、張り切ってましたよね……?」

「確信的に痛い所を突くよね。メリアって子は」

「あの……すいません」


 いつも通りの漫才をしていると、崇め奉っていた魔導具職人が俺に平伏しながら羨望の視線を向けてくる。


「アレク様は魔法が得意であると聞きました……この装備に魔法付与をして強化して頂きたいのです」

「……まぁ別にかまわないけど」

「ありがとうございます!私の技術力では素材的な問題で弱い物しか付与できませんでしたので!」

「あー……」


 普段世に出回らない素材を用意したからな。

 プロとはいえ仕方のないことだ。

 コイツの意志は俺が継ごうとしよう。


 取り敢えず魔法で化粧とパットを落とし、ズボンに早着替えしてから店を出て、魔王城に戻ったのだが、女性軍服の存在を察知した母さんに詰め寄られて再び着替えたのはまた別の話。

アレクの髪が肩で切り揃えられてる理由が判明。

取り敢えず母を元凶にしたら納得される世界です。

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