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魔王の兄は転生者  作者: 民折功利
第五章 魔に挑むお兄様
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堕神戦争開幕

新章開幕


 某日。

 封印から解かれた《魔統神》が空に現れた。

 空に映し出した巨大な画面に、その神なる姿を世界に晒す。

 黒いツーブロックの髪に赤い瞳、黒に近い茶色の肌を持ち、全身を漆黒の鎧に身を纏う神。


『……我が名は魔統神ダグロス。

 我はこの世界の在り方を残念に思う。全種族が手を取り合い平和を作るだと?……バカバカしい。

 全ては争ってこその魔族だ。魔王だ。

 なのに貴様らは平和ボケして呑気に茶を交わしている……許せん』


 一方的に言葉を吐露しながら、魔統神は世界を睥睨する。

 その紅い双眸で憎しみを込めて睨む。


『これは事後報告だ。我が《神軍》は魔王国アヴァロンに向けて進軍を開始した。時の流れで弱者の集団となった魔族を潰す。潰さねばならん。……どんな対抗策を取ろうと、今の貴様らには無意味だ』


 目を瞑り、何か考え、思考し、目を開ける。


『力で統一された《真の魔族》を再び甦らせるために、我は侵攻する!そして世界同盟という陳腐な組織よ!貴様らも後で潰してやろう』


 どこまでも傲慢に、魔族の神は宣言する。


『それでは諸君。軟弱な自身を呪いながら、その死を待ち続けるがいい。さらばだ』


 プツン。

 空中に浮かんだ巨大幻影が消え、魔統神の姿は影も形も無くなった。

 全世界に同時配信されていたのを見た各国首脳や住人たちは真っ先にこう思った。


「魔族が危ない」


 その日、神の宣言通りにイビラディル大陸の北側の砂浜から時空の裂け目が作られ、そこから《神軍》が現れて駐屯地を作っていたのだ。


 こうして、三千年を経て引き起こされ、長く続く事になる《堕神戦争》が幕を開けたのだった。




 ◆今日のアレク君の視点


「……昔の人って戦争が大好きなんかね?」


 魔統神が宣戦布告をした今日。

 俺とニーファ、メリアは魔王城に転移して作戦会議室に来ていた。

 プニエル達は居住空間で暫く戦争なんて気にせず快適に過ごしてもらっている。


 今この会議室には、魔王国の大臣や将軍、四天王が集まっている。

 これから父さんとユメが部屋に入って来てから戦争への会議が始まる。


「……アレク様、神軍に対してどう思っといてんですか?」


 《秤》のブロッケンが俺に問う。

 ネザルゲート公爵家の長男であり緑色のアフロヘアーと下顎から生えた牙が特徴的の小男。


「んー……俺らって彼ら視点だと軟弱貧弱雑魚な下等劣等種族らしいからねぇ……敗北を認めても全員殺されんじゃね?」

「……やっぱそう思んます?」


 そこで沈むブロッケン。

 まったく。ブロッコリーなんだからもっと元気だせって。


「取り敢えず勝てば良いんだよ」

「はぁ……」

「殴って叩いてヒャッハー!!!すれば良い」

「ヒャッハー…ですかい?」

「アンタは空間魔法が得意なんだから、敵陣地の上空から色んな物を転送して落とせば良い」

「おー……なるほど」


 ブロッケンに戦闘法を伝授しながら暇を潰す。

 まったく……大臣連中は戦々恐々してるけど、家のニーファとメリアなんて何が起きようと動じぬ姿勢を保っているからな。見習えよその精神を。


「陛下と姫様が参られました」


 ムジカが父さんとユメが会議室に着いたことを知らせ、同時に作戦会議室に二人が入ってくる。


 全員(俺とニーファ以外)が席を立ち、二人に敬服をする。

 俺もすべきだって?

 礼儀とか忘れちゃったからね。仕方ないね。


「みな集まっているな。……それと、楽にして構わんぞ」

「「「はっ」」」


 父さんの呼び掛けで全員が座り直す。

 二人も座り、作戦会議が始まる。


「まずは……先程の空の奴を見たな?」


 魔王の確認に全員が肯定する。


「どうやら《魔統神》は我々今の魔族を滅ぼし……《真の魔族》という名の戦闘種族にしたいらしい。だが、我々も何もせずに死ぬつもりは無い!」


 声を張り上げ、神の行動を否定する。


「…ベイル卿、住民の避難は?」

「始めております。特に《神軍》の駐屯地になっているクライル海岸に近い村や街の住民は全て避難済みであります」


 ベイル=ノーストール卿。

 魔王軍の総大将を務めており、五人目の四天王とも呼ばれている。

 クライル海岸は魔統神の軍がいる砂浜だ。

 寒流が流れているため、少し肌寒く感じるので、観光客の一人も来ない。近くの漁村に住む人が立ち寄るぐらいだ。


「アレク」

「…一応、大陸内の全ての村や街に衝撃を受けた時に俺が感知できる細工が施された結界が張ってあります。既に避難を終えた場所にも、相手に与えない為に割と強く結界を張ってあります」


 俺もあの放送が流れてから直ぐに行動し、イビラディル大陸の各町村に結界を張ってある程度の対策はしてきた。

 ここにはクロエラの結界技術も活用させてもらっている。


「ふむ……戦時中は街に出来ることを禁止すべきか」

「一度でたら、俺の許可なしに結界内に入る事は出来ません……出る事は出来ますが」

「わかった」


 実は隠し球があるんだが……敢えて言わんでおく。盗聴されてたら困るしな。

 

 世界各国からの援軍が送られるようだが、間に合うかどうかわからんな。


 その後も淡々と会議は進んでいき、対魔統神戦の準備は進んでいくのだった。





「……おい、アレク」

「ん?……どーしたニーファ」


 会議が終わり、魔王城の自室に戻る間にニーファが話しかけてくる。


「お主なりの策はあるのか?」

「……あるぞ?」

「どんなんじゃ?」

 

 めっちゃドストレートに聞いてきたな……

 まぁ教えてやるが。


「独断専行」

「……なんじゃと?」

「《魔界執行官》っていう都合の良い役職があるんだ。偵察という名の攻撃を仕掛ける」

「それ、怒られやせんか?」

「お前も行くから大丈夫。神竜が居れば文句は言えまい」

「お主……都合の良い時だけ我を使う気か」

「そんなことないけど…」


 独断専行。

 まず《神軍》の駐屯地を攻撃する。

 また、侵攻中の敵軍にも攻撃する。

 更に海岸に空いた時空の裂け目にも攻撃する。

 というか、取り敢えず敵は攻撃する。以上。


「単純で簡単な仕事じゃのー……話だけ聞いてればじゃが」

「まぁ、やらんとわからん話だな」


 さーて。

 めんどくさい事になってきたなぁ、おい。


マトモに戦争をする訳が無い

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