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魔王の兄は転生者  作者: 民折功利
第四章 夏休みとお兄様
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平和記念祭〜嫁神竜視点〜

期末試験が終わったし授業時間午前中だけだし、これからは投稿出来ますね!ってことでどうぞ。


 ◆嫁さん神竜ニーファ


 長い夏休みじゃったなぁ〜…何とは言わぬが。


 二日立て続けに行われた平和記念祭も、夜を迎えたことで終わりを迎え、代表の挨拶とかつまらん物を催してるらしいが、特に興味も無いので世界樹の枝の上でアレクと共に座っておる。


 世界都市どころか周辺の海も見渡せる程の高度を持つ世界樹の枝は、その体躯に比例して一本一本が太くて大きく、丈夫である。その為、腰を下ろしても枝が折れることは無いので、休むにはオススメの場所じゃな。

 高度恐怖症にはちと無理かもしれんが。


 それに、世界樹が身に纏うかのように発している微量な魔力によってか、上の方にいても大して風の影響を受けないのが不思議とアレクは言っとった。

 我にとっては『世界樹の当たり前』の一つなので気にもしてなかったが……


「夜も更けて初めているのに……やはりと言うべきか、明るいのぉ」

「まぁ、そうだな……異世界だと思ったら割と発展してる有難い世界だし……でも東京よりは暗いな」


 遠い目を虚空にながらぼやくアレク。

 トーキョーとは何だか分からんが、奴の前世に存在した国か街かの?

 聴いても無駄じゃから別に聴かんが。


 特にする事も無いので夫の顔をじっと見つめる。

 均整の整った顔に肩で切り揃えられた銀髪。

 魔眼では無いが魔力を宿し存在を主張する紅い瞳がボーッと虚空を見つめている。

 男にしては華奢な身体も、普段身に纏っている黒衣で隠されているが、前を開けているので中の普段着が体の線を引き立たせる。

 枝の上に乗り足をプラプラ揺らす姿は幼さを見出させる。


「……え、なに見つめてんの」

「っ……いやなに。お主の目は魔眼でも無いのに魔力を帯びとるんじゃなぁと」

「あー……普段魔法で強化したり身体全身に魔力を循環させてるから……てか…なんて言えば良いんだ?魔力の蓄積?うーん…帯電?」

「帯電は違うと思う」


 なんじゃ。お主の目は電気を帯びとるのか。


「んー……例えが浮かばんなぁー」

「そこまで考えんで良いだろうに……」


 よくよく考えたら、こやつまだ12歳か。

 魔族が全体的に人間種よりも成長速度が早いとはいえ、前世の上乗せ知識も関係しておるのか…


 魔族は人間や獣人、エルフよりも成長が早い。

 人間や獣人は同程度のスピード……分かりやすく言えば、同じ年齢で身体や知能の発達が同じ。

 魔族は比較的身体や脳の成長が早く、人間と比較する時、人間(12)と魔族(12)の場合、理論的には魔族(18)で、数値で表すと6歳程の差があるらしい。

 エルフはどの種よりも成長速度が遅く、外見が立派なものになった者はだいたい100歳前後である。成人するのもそんぐらいの年齢じゃったかの。


 まぁ、産まれてから今を数えるのが年齢じゃし、どっちかと言うと魔族+6は、精神年齢についての理論かの。


「あー……学園行っても対して学ぶもんがないんだよなぁ……強いて言うなら交友?」

「ん?お主が入学したのは世間の幅を広くする為では無かったのか?」

「なにそれ」

「魔王が言っとったぞ」

「……父さん、俺別に友達少ないとかじゃないよ?」


 口には出さんが少ないと思う。口には出さんが。


「……話が180度ぐらい変わるんじゃが」

「なに?」

「お主、将来何になるんじゃ?」


 今宵の祭りだけでなく、普段平日の街でも良く聴くこのフレーズ。

 『○○くんは将来何になるの?』

 大抵の坊主や娘は「家を継ぐ」じゃの「貴族の高官」になるじゃの「冒険者」になるなど言ってるのじゃが……


「将来…………さぁ?」

「予想の斜め上を行く答え」

「…ユメに座を譲らなかったら、俺が魔王になってたかもな。または魔王補佐とか色々あったが…うーん……特に夢とか無いなぁ」

「…そうか」


 こやつが魔王か…………逆にそれが正規ルートなのでは?

 ユメは残虐性とか非道とは程遠い女じゃが、こやつは悪の成分をギトギトに詰め込んだ闇の化身のような奴じゃし……となると我は魔王の妻か。


「……ありじゃな」

「何が?何に対して?」

「気にするでない!!」


 耳聰い奴め。少し恥ずかしいではないか。


「ふーん……。あ、名案思いついた」

「なんじゃ」


 アレクは極太の枝の上に立って腕を伸ばす。

 欠伸と共に目元に溜まる涙を手でどけながら、我の肩に腕を、頭に顎を乗せてだらける。

 ……この動作と体勢はいらんじゃろ。


「父さんに役職ちょーだいって言うか」

「典型的なダメ人間では……?」


 てか頭重い。巨枝の上とはいえバランス悪くなるから辞めてほしいんじゃが。


「おい、ヨダレが垂れてきたんじゃが」

「愛する夫の唾液だぞ喜べ」

「我は唾液に興奮を覚える性癖ではない!」

「じゃあ調教するわ」

「へ?」


 今よからぬ言語が聞こえたんじゃが。


「ちょ、調教ってなんじゃ調教って」

「めっちゃ前に母さんが『女の子を自分の思い通りにする方法』って講座を開いて教えてくれた」

「お主の家どうなっとんじゃ……?」

「流石に実技は無かったけどな!HAHAHAHA!」


 怖い……怖いぞ魔王一家……


「まぁ冗談は置いといて、だ」

「冗談で良かったわ……」

「あ、でも俺が大人の階段を登ったら行為の一環としてするからね。安心して待ってろ」

「安心出来ぬし……」

「じゃあ夜な夜な襲うの辞めてくれます?」

「ぐぅ……」


 なんも言い返せん。


「取り敢えず帰るぞ。プニエルとか待ってるし」

「じゃの」


 一気に空気が冷めて帰る準備を始めるアレク。

 さっきの痴話話が嘘のようじゃな……


「いやー、やること多いなほんと」


 アレクは自嘲的に笑いながら幹の元へと枝上を歩く。


「なんじゃそんな情けない顔して」

「いやー、前世と比べたらこんなに忙しなく自由に闊歩してなかったからさ」


 ……詳しく聞いた事は無いが、こやつの前世は随分と酷かったらしい。客観的に見ても。

 それに比べると今は幸せだとか。


「……今の幸せに満足して早く逝くでないぞ」

「フラグ立てんのやめてぇー?」

「これでフラグとやらになるのか!?」


 これあれじゃな。

 死んでも俺が常識とか言って帰ってるやつじゃ。


「……まぁ、好きに生きるのも悪くないじゃろ」

「さっすがー!数千年単位でニートをしているだけはある!」

「んじゃと!?」


 こやつは減らず口を言わなきゃ生けてけぬのか?


これでやっと平和記念祭終了!


…え、もうクリスマスなのにお宅はまだ夏休みなんですか?

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