平和記念祭〜魔王姫視点〜
メインキャラ枠の一人なのに出番が少ない上に扱いが少し困ってるユメちゃん。
無論、出番は徐々に増えていきますよ。
◆魔王姫ユーメリア視点
「お兄様成分が足りない!!」
お久しぶりの出番ですが今日の私は荒れています。
次期魔王のユーメリアです。
今日は世界都市の『平和記念祭』に参加しているのだけど……お祭り前に国の重鎮たちでの会議をしたり、少しお堅いパーティをしたりで既に疲労が重なっています……
既に夕暮れ時です。
もっと簡単に言うと次代の王としてお父様について行っただけなんですけどね。
「姫様、アレク王子の代わりはこの私が…」
「…うっさい」
このロリコン魔人の部下であるグロリアスは今も昔も私に対する忠誠心は相変わらず。
……好意は嬉しいのだけど、扱いが難しいのよ、このエルフ。
性癖が曲がってるだけで性格は良いし、四天王の役職に就いてるから、一応、安心して傍に置いているけど……誰か信用できる人雇おうかなぁ?
「ユメよ、祭りを楽しんできても構わんぞ」
「父さ……魔王様」
「敬称でなくても構わんよ。グロリアス、ユメの護衛は任せる」
「はっ。お任せあれ」
「ユメ、アレクも街に繰り出してるだろう。楽しんできなさい」
「はい!楽しんできます!」
お父様は四天王のブロッケンを引き連れて世界同盟本部に与えられた部屋に戻っていく。
「……行きましょう。グロリアス、護衛を命じます」
「かしこまりました」
こうして私は身近な危険を引き連れてお祭りに参加しに行くのだった。
「賑わってるわね〜」
「そうですね」
右手に串焼き、左手にドリンクを持ってお祭りを満喫しています。
グロリアスも同様にお祭りを満喫している。
……魔王としての業務とかの鬱憤が溜まってるのかな?
色々と派手にやらかしたい気分なんだけど。
「あれ、ユメだ」
「む。ほんとじゃ」
「え?……お兄様!!」
後ろから声が聞こえたので振り向けば、そこにはお兄様とニーファさん、メリアさんとプニエルちゃん達が揃ってソフトクリームを食べていた。
「お兄様お久しぶりです……楽しそうですね」
「そりゃな。……あれ、グロリアスってまだユメの側近なの?」
「当たり前じゃないですか」
「……別の仕事を割り当てるべきだろ」
わぁー!やったやった!
久しぶりにお兄様に会えた!
そして私は思考を放り出して、気付いたらお兄様に抱き着いていた。
あー…お兄様の身体って意外と柔らかいんですよねぇ〜…暖かいですし〜
「ぎゅ〜」
「おーい、人前だぞ?」
現在、アレクニウムを補給中です。
もうしばらくお待ちください。
「ぷはー…お兄様!」
「おー……よしよし。……なんか甘え属性付与されてない?」
「一種の病気じゃな」
頭を撫でてくれるけど、私が胸に抱き付けるように背を伸ばしてくれる所が素敵です!!
あと数週間はこの状態でよろしくお願いしたいです!
「……末期じゃね?悪化してね?」
「良かったではないか」
「……羨ましい。羨ましいです……はぁ」
「そんな目で見ても何も出ねぇぞ」
グロリアス、私はお兄様のものです。
安心して帰っていいですよ。
「私の扱い酷すぎやしませんか?」
「その性癖を治す……直すべきだな」
あぁ〜…ホントならダメなんでしょうけど、偶にはこういうのも悪くないはずですよね。
魔王としての顔だなんて、今この場では必要ないんです。兄を純粋に愛する妹としての責務です。これは。なんの問題もありません!
「……ユメ、足疲れた」
「あ…ごめんなさい、はしゃぎすぎました」
よく振り返って見れば超恥ずかしい。
いつも内心に隠してたのに、めちゃくちゃ表に出ちゃった……う〜〜〜……!!
それに、お兄様が頑張って伸ばしてる足に負荷をかけてしまうとは……申し訳ない…
「ふぅ〜…祭りは楽しんでるか?」
「はい!もちろん!」
「……てかこっちに居たんだな」
「お父様の付き添いで……あと、次期魔王としての顔見せ、でしょうか」
「成程。俺とは無縁の世界だな」
本来ならお兄様が魔王のはずなんですが…まぁ、それは置いておきましょう。
深く考えてはいけない内容です。
「取り敢えずもう夜だし……俺が借りてる部屋くるか?」
「!……い、行きたいです」
「では私も…」
「グロリアス、貴方はお父様の方に帰ってていいわよ。私はお兄様の所でお世話になってるから」
「そ、そんな……」
絶望にうちひがれて……あれ、頬が紅く染まってますね。もう放置でいいでしょう。
「泊まる気かよ」
「お願いしまっす!」
「……メリア」
「問題ありません。大丈夫です」
「よし、じゃあ……グロリアス、父さんに宜しく。………後で好きな人に懐かれるって評判の本あげるから、元気出せよ」
「心から敬愛します、アレク様!」
てのひらくるっくるー。
その後、しっかりグロリアスはお父様がいる世界同盟本部に戻り、私はお兄様達について行って学園の寮に招待してもらえることになった。
そして今。
「それでじゃな?アレクにいくら迫っても靡いてくれんのじゃよ!あの手この手で躱されてな?まったく……」
「あはは…」
お酒の力で酔っ払ったニーファさんの口から、よくわからないけど夜な夜な何かやってるみたいです。
でも、肝心な時にメリアさんが現れて誤魔化させられるんですよね。
「うぎゅ〜〜ん……それでじゃな?」
「はいはい。ほら、お水です」
「む。助かる」
意識は保ってるから良いですけど、お酒に弱すぎじゃありませんか?
神竜なんですよね?そこんとこのパワーバランスどうなってるんでしょうか?
「お〜いニーファ〜…いつも酒飲まない癖に今日に限って飲むな〜。未成年、なんだぞ〜俺たちの事も考えろぉ〜」
「大丈夫じゃよ〜…酒に弱いお主に与えはせんからの。安心せ〜い」
「はぁ?何言ってんだよ〜」
ニーファさんこんな事言ってますけど、さっきお兄様の口にお酒注いでましたよね。
酒瓶の口を押し付けて。
しっかり見てましたよ?
収めましたよ?
お兄様がお酒で酔ってトロンとしてる顔。
「むもぉ〜…素直になっていいんじゃぞ〜?」
「俺は十分、素直」
「どこがじゃぁ〜」
「ん。服に手を入れるな…」
全然抵抗しないお兄様を捕まえるニーファさん。……これって大丈夫なんですかね?
「あっ……ユーメリア様、少し席を外させて頂きますね」
「あ、はい」
それを見かねたメリアさんが二人を両脇に抱え上げる。いとも簡単に。
「……いや、ユーメリア様も寝ますか?」
「え……お兄様達とですか?」
それはもはや?もしかして?
「はい。多分このまま酔って寝ると思いますし……主様と一緒が良いでしょう?」
「ありがとうございます!」
メリアさんは寝る前にと、二人の歯を歯ブラシを使って磨き始める。
ウェパルちゃんも触手を丁寧に動かしてお兄様の歯を掃除し、エノムルちゃんはその巨体を活かして二人の体を支えている。
私も渡された歯ブラシを使って歯を磨く。
……この歯磨き粉、知らないものですね。
お兄様は珍しい物を何処から調達しているのか不思議です。
歯を磨き終わったら、メリアさんは二人を再び抱えて寝室に連れていきます。
歯磨きの最中で既にお眠になったお二人は夢の中に旅立っています。
お兄様とニーファさんの寝室は物が整理整頓されている箇所と乱雑に置かれている箇所が目立っていました。
メリアさんは二人をベッドに……お兄様を真ん中に、ニーファさんを右側に置いて一息。
「……また散らかしましたね」
「ごめんなしゃーい」
プニエルちゃんとデミエルちゃんの仕業でした。
「では、私はこれで。お休みなさいませ」
「おやすみなさい」
メリアさんに就寝の挨拶をして……どうするかを考える。
「どうしよう…」
一緒に寝るのは良いが、この輪の中に私が入っても大丈夫なのだろうか?
夫婦水入らずって言うし……
「んっ……」
あ、お兄様が少し目を開けた。
「………ユメ、寝るのか?」
「あ、はい…メリアさんに此処でと言われて」
「あー…うん。いいぞ」
「!…じゃあ隣に!」
まだ酔いが覚めてないのか、判断が追いついてないのか、お兄様は軽く私を迎え入れてくれたので左側に潜り込み、お兄様に抱きつく。
「おやすみなさい、お兄様」
「おやすみ〜」
「すぅ〜……すぅ〜……」
……今日はいい日でした。満足です。