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魔王の兄は転生者  作者: 民折功利
第四章 夏休みとお兄様
148/307

平和記念祭〜勇者視点〜

160までを夏休み編の終わりとする予定です


 ◆聖剣の勇者マサキ視点


 皆さんお久しぶり、マサキです。

 本来なら物語の主人公である勇者やってます。

 ……これも運命なんだな。諦めよう。


 平和記念祭は二日間に渡って開催される。

 まぁ、各国のお偉いさんとかの日時調整とか屋台の品の影響とかを鑑みての二日間。詳しくは知らないけどね。


「マサキ様、何処を回りますか?」

「んー…どうしよっか?」

「ミュニクは綿飴が食べたいです!」

「……私も」

「じゃあそれに決まりね!」


 ソフィアに尋ねられて考えていたら、ミュニクとシリシカの所望によってクレハに勝手に決められてしまった。

 まぁ、構わないけど……にしても綿飴かぁ…


「ん?どうしたのマサキ。浮かない顔して」

「綿飴はイヤですか?」

「いや、そういうわけじゃないんだ…」


 四人が僕を問い質すように見つめてくるので、観念してトラウマを話す。


「実は昔、親友の手違いで顔に綿飴が絡みついてね……」


 あれは酷かった。

 中学の時に親友が持ってきたわたあめ機が古かったらしく、クルクル回転していく内に暴走して僕の顔に絡みつく……というか張り付かれたからね。

 窒息までは行かなかったけど、顔全面が甘くてベタついてて気持ち悪かった。

 親友は笑いながら謝ってたけど……そう言えばアイツは今何してんだろう?


「まぁ、昔の事は置いといて、綿飴食べに行こうか」

「はい!」


 ミュニクが人混みに巻き込まれて迷子にならないように手を引っ張りながら綿飴の屋台を目指す。


 平和記念祭は各地の祭りの中でも最も人が集まるため、人族、獣人族、魔族、森霊族(エルフ)炭鉱族(ドワーフ)だけでなく、各地の希少な種の住人たちが観光にやってくる。

 その分人攫いが増えるのだが、世界同盟に所属する衛兵や各国の騎士の巡回、高度な魔術審問による逃亡防止策など、様々な壁が守っているので安心と言えば安心である。

 ……それでも防ぎ切れない闇を払うのが僕の仕事なんだけどね。


「おねぇさん、綿飴五つ」

「はいよ!……って勇者様じゃないの!」


 屋台の女主人は驚きながらも綿飴を作る手は止まらない。


「日々の感謝も込めて今回は割引しといてあげるよ!流石にタダとはいかんからね!」

「ありがとうございます。でも、今日の僕は祭りを楽しんでる側ですから、お気遣いなく」

「あらそうかい?」


 女主人に何度もお金を割引と言われたが、押し通して金額通りの貨幣を渡した。

 勇者だからって何でも言い訳じゃないからね。


「モフモフ……美味ちいです!」

「……うまうま」

「甘くてフワフワです」

「悪くないんじゃないかしら」


 四人の意見はどれも好評だったらしい。

 地球でも異世界でも綿飴は人気なようだ。


 さて、僕も一口………甘っ!?


「マサキ様、美味しいですね!」

「う、うん。そうだね」


 世の女性はこんなに甘ったるい物を食べてるのか……女性店主の店は男の僕には危険かな?


 その後綿飴を残らず平らげて、口直しに美味しいたこ焼きを買ったのは別の話。




 それからも皆と回って楽しんでいたら、


「かっら!?辛すぎぃ!?」

「ごほっ、ゴホッ……ちとこれは不味い…」


 何処からか聞き覚えのある呻き声が。


「だから若い2人には無理だって言ったろうに…」

「大丈夫だと思ったの!!この程度のたこ焼きなら行けるって思ったの!!」

「お主に進められて買ったが……バーモンのたこ焼きとは……店主、よく使おうと考えたの」

「まぁ、刺激が恋しい大人用にな。ほら、水があるから飲んでけ」

「あんがと、おっちゃん。お前良い奴だな」


 あー……世界一辛いとされるバーモンという香辛料を使ったたこ焼きか。

 口直しに買おうか迷ったけど、結局辞めたやつだね。


 てか、あの二人何してんの?


「アレクさん、ニーファさん、何やってんですか」


 そう、勇者の僕よりもチート性能の魔族アレクと得体の知れない力を持つ竜人のニーファさん。

 ……見ない内に親密度が更に上がってますね。


 それと視線を感じて後ろを見れば、噴水のベンチに座って遠目からこちらを見ているメリアさんとプニエルちゃん達。

 こちらに気づいたメリアさんが会釈してくる。


 あ、どうもどうも。


「ようマサキ。バーモン・ド・たこ焼き食べてみない?」

「今の見てましたからね?」

「他者の目はどこにでもあんなぁ……残念」


 ちっとも残念そうに見えませんが……笑いながら水を口に流し込んで辛さを紛らす姿は少し笑えますね。


「あ、プニエルちゃんだぁ〜!」

「むにゅ?……あ、ミュニクお姉!」


 海辺の件で親密度が上がったのか、プニエルちゃんの所に走りよるミュニク。

 メリアさんが楽しそうにする二人を微笑ましげに見ながら子供たちに席を譲り、ベンチは二人とスライム達の遊び場と化した。


「……若いって良いな」

「アレクさんって12歳ですよね?」

「ああ、そうだ。永遠のな」

「え?」


 含みのある言い方に疑問が……


「転生時に神の悪戯で年齢が止まった。これ以上身長も伸びない。イコール永遠のショタ」

「あら〜……ご愁傷様です」


 これはひどい。

 アレクさんの目が虚空を見つめ始めた……重症だな。これは。


 男性二人で談笑し、女性陣は輪を作って楽しそうに喋っている中で、問題が起こる。


「おいガキども!てめぇら占領してんじゃねぇよ!!」

「きゃっ!」

「むきゅ!」

「ははっ!ガキはお母さんの乳でも吸ってな!」

「そーだそーだ!ギャーッハッハッハッ!」


 体格の大きなガラの悪い男の三人組がプニエルちゃんとミュニクをベンチから払い落とす。

 人族と獣人族と魔族の珍しい揃いだな。


「な!?」

「ふーん…」


 てかまずい!早く止めないと……!


「ん?おいおい。スライムもいんじゃねぇか」

「……珍しいやつだな。売るか?」

「取り敢えずこのガキを締めようや」


 男共は下卑た声で愉快に笑うが、周りの人達や内の女性陣はカンカンだ。

 アレクさんとニーファさんは……あれ?

 前者はニコニコしてるし、後者は逆に無表情なんだけど?


 勇者として有るまじき思考放棄をしていたら、幼女二人が起き上がって行動を起こす。


「じゃまー!」

「ぽい!」

「「「えっ」」」


 ミュニクは小さいながらも力は強い。

 勇者パーティの一員として申し分のない強さだ。

 この程度の悪漢なんて片手で捻れる……ことは無いが、比喩としては十分な実力者だ。


 プニエルちゃんは……え、身体から物騒な物でてきたんだけど。

 あれってアレクさんがヘルアークの試合で使った釘バットじゃ……


「《てんふぁいくぎだぼー》!」

「ごぺっ!?」


 天敗釘打棒を舌っ足らずに読んだプニエルちゃんの振りが魔族の男に激突!

 力が弱いのが幸いして倒れるだけですんだ!


「にゃー!」

「いた、痛い痛い!?」

「ぎゃあぁぁ!!?」


 ミュニクの鉤爪による引っ掻きによって顔面が傷だらけになる獣人族と人族。


 周りの人もこれにはドン引きである。


「……ミュニク、あとは僕がやるから下がってね?」

「はーい」

「マシタ?」

「ちょっと遊んでくるー!……ニーファ、プニエル宜しく」

「請け負った」


 僕とアレクさんで倒れ伏した男三人を見下ろす。


「くっそ……って、勇者サマぁ!?」

「痛ててて……王子!?」

「な、え?勇者?王子?誰が?こいつが?」


 人族と、魔族の男は驚愕し、獣人族は状況を理解していないよう。


「へー……俺が王子ってわかってんだぁ…へぇー」

「や"、やめ…」


 魔族の男の頭を鷲掴みにしながら、宙に上げるアレクさん。


「俺が王子だと知ってる程の殊勝な魔族が俺の可愛い天使を攻撃するとはなぁ?不思議なこともあんもんだねぇ〜……さて、覚悟はでっきたぁ?」

「ひっ……お、お許しを…」


 僕は聖剣を錬成して箱型にして三人を放り込む為の棺桶を作り出す。


「……《聖刻の埋葬》」

「おいまて。聖剣、とは」

「常識に囚われちゃいけないって言ったの貴方ですよ」

「はいはい……おい、何白目向いてんだ?おい」


 あ、ツッコミとボケやってたら、アレクさんが掴んでた魔族の顔が苦しくてヤバそう。


「はぁ……えい」

「ぐっはぁ!?」

「「ぎゃっ!?」」


 無造作に放り投げて三人揃って頭をぶつけさせたアレクさんは、魔法を唱える。


「《無限悪夢》……ループを楽しんでってね!」


 掌から伸びた黒い煙が三人を包み込み、身体に吸収される。

 すると、男達3人は唸り声を上げながら苦しみ始める。


「ゆっくり地獄を楽しんでけよ……ふふっ」


 暗黒微笑。


「マサキ、棺桶にどうぞ」

「あ、はい。このまま留置所に連れてきます?」

「そうしようか」


 三つの棺桶に男達を収納して浮かび上がらせる。

 ……あ、周りにいる野次馬達にどう説明しよう。


「えーっと、勇者マサキです!今、祭りを壊そうとする悪漢が居たので退治しました!これでここら辺は大丈夫です!」


 それとなく口上を述べると、民衆は安堵の声を上げる。


「……こんな口上で平気なの?」

「そこは勇者補正でなんとかなります」

「ゴリ押しじゃん」


 勇者補正は凄いんですよ。

 だいたい、困った人相手だとなんとかなる効果を発揮してくれます。


「あ、ミュニク、怪我はないかい?」

「大丈夫〜」

「プニエルは……うん大丈夫か?」

「へーきー!」

「ところで質問だが俺のバット勝手に持ち出したな?」

「……ふえー?」


 こっちはこっちで一波乱ありそうだなぁ〜


 地球に今も居るであろう父さん、母さん。

 僕は異世界で勇者やって、友達の非常識な人達と楽しく生きてます。


 でも、もうちょっとマトモな友人が欲しいです。


 その後、男三人は無事に留置所に連れていった後に聞いた事。


「そう言えば彼等に使ってた魔法って?」

「対象にオカマの大男が擦り寄ってきながら殴ってくる地獄をループさせる魔法。撲殺されたら殴られる直前にループして戻る」

「うわぁ……聞かなきゃよかった」


 便利な魔法を使う彼だけど、ぶっちゃけ危険度の高い魔法のレパートリーが多いよね。


 仲良くしてて良かったと思うよ……

 持つべきものは友だね。


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