バカンス:バーベキュー
シャボン玉に乗って珊瑚礁を一周する旅は終わり、夕方に近くなったので俺達は、陸に上がり、夕飯の準備をすることにした。
主に俺とメリアが食材や調理器具の準備を初め、最近料理を覚え始めたニーファは、焼く時の手伝いで呼ぶことにして子供らの相手を頼んである。
「私が全部やってもいいんですよ?従者で奴隷ですし」
「いやいや……その奴隷って肩書きしかないよね」
「まぁ……確かに」
談笑しながらテキパキと動き、薪や鉄板、トングなどを運び、食材を異空間から出して並べる。
モー牛のステーキ、蒼龍フルニルの龍肉、グラウド豚の肉、パルージルの肉……肉しかねぇ。
「野菜……あ、いっぱいあった」
キャベツや玉葱、南瓜、もやし、ナス……バーベキューで使える野菜は全部異空間に入ってたので利用させてもらう。
海なんだから魚も食べたいということで、乱獲した時に狩った海魚を皿に並べる。
食いきれるかね?……胃袋がドラゴンな嫁がいるから大丈夫か。
「む。今馬鹿にされた気がする」
「きのせだよー?」
「プニエル、気の所為、じゃ」
「きのせいー?」
さて、勘のいい神竜と語学教室を受けている天使は置いといて……
「準備どう?」
「粗方終わりました。もう焼いていいですよ」
「おっけー」
メリアから許可を受け、俺はニーファ達を呼ぶ。
「準備できたから戻ってこーい。手洗ってな」
「「はーい」」
プニエルとニーファは設置されている水道で手を洗い……デミエルとかも真似して洗い始め、てか全身に水を被り始めた。
プニエルも笑顔で真似しようとしたけど、ニーファとウェパルが全力で妨害。
一段落着いたところで俺は鉄板に肉を並べる。
「アレクくんの24時間クッキングぅ〜!!!」
「ぐぅ〜!!」
「プニエルちゃんはノリが良いですね」
「流石我が娘」
「血は繋がっとらんだろ」
「るっさい」
てか、誰も24時間には突っ込んでくれないんだね。
「ニーファ、手伝い頼むよ」
「任せよ」
ニーファが躾(待ってるのは死)したこの島の自称ボスである蒼龍フルニルのドラゴン肉やメリアがぶちのめしたゴリラのパルジール君の肉片を焼き始める。
ゴリラ肉って美味しいのかな?
「……のうアレク、これホントに焼くのか?」
「え?ゴリラ肉?」
「いや違う……これ」
「ん?……………………んん?」
ニーファが取り出したのは……透き通るような美しさを持つ透明なコラーゲン質のもので、揺すればプルプルと震え、弾力を感じられる。そして本体から垂れる透明な無数の紐、そしてニーファの手よりも大きい。
そう、その姿は正しく………
「クラゲ……しかも浮海月じゃねぇか!誰だこんなの置いたやつ!」
集団で空を飛ぶ……というより浮かぶ空のクラゲ。毒はない。あまりにも長い年月を生きる個体は、気候環境なども相まって触手が地上に擦れるらしい。まぁ、目撃情報は少ないけど。そこまで長く生きれるのも希少故に。
コイツは《天窮の摩天楼》から地上に帰る前に眼下を眺めていたら、集団で空を浮かんでいたので捕まえたのだ。
そのうち数匹は死んだので素材空間に飛ばし、生き残りは倉庫空間に入れて観賞させてもらっていた。
んで、素材空間に入れてたクラゲを間違えて引っ張り出したと……
「犯人俺?」
「じゃろうな」
「そいつァすいません……あ、これ食べれないから仕舞っとくね」
「そうしてくれ」
浮海月を異空間に戻し、気を取り直して焼き始める。
焼けた肉から適当に皿の上に乗せていって、ニーファがそれをアウトドアテーブルに置く。
メリアはタレを机に運び、プニエル達を席につかせる。
「食べていいぞー」
「はーい、いたあきます!」
プニエルが早速肉を頬張り始める。
「あっちゅ、あつい!!」
「フーフーしてから食べましょう?」
「あい!」
デミエルとエノムルは…丸呑みですか、そうですか。
ウェパルは器用にフォーク持って刺してんのに……無駄に器用値高いなコイツ。
「ほれアレク。あーん」
「ん、あーん」
俺が肉を焼き続ける中、ニーファがフルニルの肉を俺に食わせる。
もきゅもきゅ。ドラゴンって美味いんだな。
「ドラゴンって美味いんだな」
「そんな目で我を見ないでくれぬか?」
いや、ニーファは別の意味でうまっ………(沈黙)
早く大人になりたいな!
「やっぱりそこまで美味くなかったな。ゴリラ」
地球では高級食材だった時もあったような無かったような話があった気がするが……まぁ、全身装甲の爆発ゴリラが美味いわけないか。
「「「「ごちそう様でした」」」」
取り敢えず、お腹は膨れました。
ごっさま。