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魔王の兄は転生者  作者: 民折功利
第四章 夏休みとお兄様
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バカンス:目隠し風呂


 無人島の魔獣狩りを一通り終わらせた後。


「………同族殺し?」

「い、いや、喧嘩売ってきたのはコイツじゃぞ?」

「この島の生態系を潰しに来た私たちの方が、喧嘩を売りに来たんじゃないですか?」

「………確かにそうじゃの」

「まぁ、良い材料になるんじゃないの?つか、お前以外のドラゴンに会ったのは……三匹目か」


 一匹目がユメが俺の誕生日に狩ってきたレッドドラゴン。既に剥製状態だったが……

 二匹目が嫁で相棒のニーファ。

 三匹目が……この首と身体がサヨナラバイバイしている蒼龍フルニル。


 ……相手が神竜だと知らずに喧嘩を売らなければ生きていけたのに……南無南無。


「なんじゃ、もう会っておったのか?」

「俺が……十歳の誕生日にユメが持ってきた。生きてる状態での初エンカウントはお前だな」

「ふーん」


 よくよく考えたらニーファ以外の生きてるドラゴンに会った事がない気がする。

 まぁ、会う必要もないけど。


「マシタ!マシタ!みてみて!」

「ん?どうしたプニエル」


 砂浜で先に遊び回っていたプニエルたちが俺たちの元に走り寄ってくる。

 プニエルの手には青くて綺麗な貝殻や海で見るような透明な石を持っている。


「おー……綺麗だな」

「あげりゅー」

「ありがとな、よしよし」

「えへへー♪」


 クロエラの『ミニミニ君2号』によって一回り小さくなったエノムルと、それよりも小さいデミエルやウェパルの三匹を引き連れて浜辺に戻るプニエルたち。


「着替えて遊ぶ………いや、先に身体洗うか」


 よくよく考えたらメリアなんて土汚れが酷いしな。汚れを洗い流した方が気分的にも良いだろ。


「お気遣い感謝します…」

「じゃあ我も……プニエルたちはどうするんじゃ?」

「確かに。………おーい、俺たち風呂入ってくるけど、お前らどうするー?」


 プニエルたちに呼びかけると、四体は円を作って何かを相談し始める。


「お風呂だってー……どするー?」


 俺たちにスライムの声は聞こえないが、楽しそうに会話しているのはわかる。

 やがて話が着いたのか、四体全員がまたこっちに走ってくる。


「はいるー!」


 プニエルを筆頭に擦り寄ってくるので、全員をなんとか背負う。

 プニエルを胸に抱き、デミエルとウェパルを両肩に、エノムルを頭に乗せて移動する。


「お主、重たくないのか?……エノムルぐらいは我が持つぞ?」

「ウェパルちゃんは私が貰い受けます」


 自分が好きなスライムを手に持とうとするな。

 デミエルは誰が持つんだ一体……あ、マールはデミエルをえらく気に入ってたな。


 結局誰にもスライムを渡さずに、ログハウスの風呂場に向かうのだった。





 カポーン……


 ログハウスの中に併設されている風呂場。

 木をふんだんに使った浴場は、室内を埋め尽くす湯気で見えずらいが、木の温もりを感じられるのが一番の特徴……てか、それぐらいしかない、ちょっと広いだけの風呂である。


「おっふろー♪」

「ほれ、走るでない。砂まみれの身体で浸かろうとするな!まずは洗うんじゃ!」

「はーい……」


 プニエルは真っ先に浴槽に突撃したが、ニーファに首根っこ掴まれて頭を洗ってもらっている。

 メリアは自分の身体を泡まみれにして熱心に洗っている。

 ウェパルやデミエル、エノムルは泡でいっぱいの桶の中でもみくちゃになっている。


 そう、お解りのように俺は今、女子95パーセントの中に混ざっている。

 羨ましいと思うだろう?


 目隠ししてんだぜ?


 堂々と中に入ろうとしたんだけど、ニーファに捕まって目隠しされた。酷い。

 俺これでも十二なんだぜ?

 前世を換算すると…19+12………考えんのやめよ。


 まぁ、目隠ししても魔力で強化した眼だと透視能力着くんだけどね。

 目隠しした状態で頭にシャンプーをかけ、頭を洗う。次に顔、身体へと次に次にと移動していく。


 一通り洗い終わったので、目隠しした状態で歩き、湯船に浸かる。

 他の連中はまだ洗っている……これ風呂出るまで目隠し取っちゃダメなヤツか。


「ふうぅー〜〜……」


 おっさんみたいな声が出るが、世界都市の職人ドワーフに頼んだ上に多額の金を費やした風呂はほんとにいい物だ。

 空間魔法で収納すると言ったら、めっちゃ疑問視されたが、実際に見せてみると納得した上にワクワクした状態で造ってくれた。

 また用があったら来いとか言ってたっな。


 ちゃぽん。


 隣に誰かが入ってくる。

 ……ニーファか。


「目隠しとるかの?」

「……別にいい。てか、着けた本人が言う言葉じゃないと思う」

「そうか」


 少しだけ無言の時間が過ぎる。

 プニエルはスライムたちを桶から出しているのか、奮闘している声が聞こえる。

 メリアはまだ自分の身体を洗っているようだ。

 長いな。まぁ、激戦だったみたいだし、戦ったゴリラもこの島でも上に位置する奴だったっぽいし。


「……ん」


 ふとニーファが俺に寄り添う。

 肌と肌が密着し、俺とニーファの距離が近くなる。

 視覚が封じられてるせいか、やけに身体が反応してしまう。

 ニーファの裸体は記憶にある限り幼きながらも十分膨らみがあり、傷一つない身体は精巧な人形のようにも思えた……はず。

 まぁ、本当の身体じゃないから、肉体操作で簡単に変わるらしいけど。


「……くっついてどしたん?」

「………夫婦なんじゃ。他意はない」

「ふーん」


 意味わかって使ってんのかな?

 まぁいいけどさ。


 和やかで静かな時間は、あっという間に過ぎていくのであった。



 さて、バカンス要素がまだ無いぞー?

 まぁ、三日間の予定だし、大丈夫か。



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