言霊の威力
魔法詠唱部分を、
「」から、《》に変更しました。
さて。デス・ブラッドハントとグレイウルフ集を倒すためには、何の魔法を使うかな?
「ガルルルッ!」
グレイウルフの素晴らしいコンビネーション技を軽々避けながら、俺は思考する。
あの虎さんは俺が出るまで待つようだ。
……自信の表れだな。
炎系統は森を燃やして森林火災を引き起こす可能性があるから……
というか、遮蔽物が多いから全部消してやろう。
「《森林伐採》《大地整地》っ!」
言った途端、俺は魔力を魔神杖に、通す。
俺とコイツの初戦だ。派手に行こうとしよう。
俺は基本的に、本来の魔法名称を言わない。めんどくさいし。だから、先程のように自分が明確にやりたいことを浮かべ、それを発動の鍵として魔法を行使する。
俺はこれを、《言霊魔法》と呼んでいる。
森林伐採は、風魔法により視界を遮る四方八方の木々を切り倒す。そのついでに何体かのグレイウルフが斬殺される。
大地整地は、土魔法により森特有の湿り、凸凹な土の地面を一瞬で固い地面に変質させる。その際に蠢いた土塊によってグレイウルフが圧殺される。
「おいおい。まだ攻撃的な魔法は使ってないぜ?」
その声が届いたのか、グレイウルフ共は怒りを込めた眼を向け、唸り声を上げる。
しかし、それと対照的に無傷で余裕なデス・ブラッドハントさんは、ニヤリと口に笑みを浮かべる。
……その笑みをかき消してやんよ。
「《氷塊連撃》《刺突土槍》《微塵切り》」
無数の氷塊が、大地から生える土の槍が、凝縮された風が。
「「「「「グギャッ!?」」」」」
グレイウルフのほとんどを瞬殺する。
一応、コイツらも強いのだが、相手が悪かったな。
さて。数えられる程度まで減ったグレイウルフは放置して、目の前の好戦的な笑みを浮かべる虎、デス・ブラッドハントと対峙をする。
先に動いたのはーーーーーーー俺。
「《魔力球連射》っ!」
属性のない只の魔力の塊が、砲弾の如く毒虎に連射される。
それを奴は、右に左に上にと避けながら、こちらに近づいてくる。
「ガォー!」
奴の口から放たれるのは毒の弾丸。
先程の意表返しかっ!
俺は魔神杖に魔力を流し、身体と杖を循環させながら、身体強化。それに乗って攻撃を避ける。
そのまま通り過ぎた毒弾は後ろで俺を襲おうとしたグレイウルフ達に着弾する。
相手は俺が避けることを見越して、こちらに毒の滴る牙を向ける。
「《水圧洗浄》っ!」
とりあえずあいつの牙に着いた毒を洗い流してあげた上で、魔神杖を奴の口に突っ込む。
「ガッ!?」
流石にこれは予想だにしていなかったらしい。
俺は魔神杖に魔力を込める。次の魔法を打つために。必死に暴れる虎の攻撃を器用に避けながら、魔法を発動する。
「《熱線貫通》!」
杖から放たれる高熱のビームが、デス・ブラッドハントの口を、体を貫通する。
その際に、中の内臓も巻き込んで。
「グ、ッガァァァァァッ!?」
そして奴は驚愕の表情を浮かべながら絶命した。
……勝者は俺。虎との交戦で残りのグレイウルフ達は巻き込まれ死にをしたらしい。
俺は戦闘高揚の残る中、勝利の余韻にしばらく浸った。
グレイウルフ共の剥ぎ取りをして、素材が駄目になった数体を集めて、虎と共に燃やす。
こうしないと、後にアンデッド化して厄介なことになるからな。
デス・ブラッドハントは体を貫通させただけなので、毛皮や牙、肉を少量いただいた。
さて。戦いは終わったし、もう昼時だ。
少し場所を移動してから、飯にありついて、のんびり探索でもしたら転移魔法で帰宅するか。