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魔王の兄は転生者  作者: 民折功利
第四章 夏休みとお兄様
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事の終わりと空の帰り道

文化祭準備を後目に執筆活動。

人はそれをサボりとも言う。

そして偶に暗幕を張れと駆り出されるのだった……


「……皆さんお揃いで」


 メリアが里に帰ると、里長やリニア、その他大勢が出待ちしていた。

 全員が、メリアの顔色を伺っており、彼女が何をしに言ったのか、そして戻ってきたということは……


「姉さん、あの男は……」

「……倒しました。仇は、討ちました」

「……ううっ……あぁっ!!」


 メリアの言葉にリニアが泣き崩れる。


 出来るなら、自分で殺したかった。

 出来るなら、自分が敵を討ちたかった。

 出来るなら…………


 でも、今は。


「ね、ぇさん……」

「うん……うん………」


 里の者達も、巫女の一族を滅した逆賊共の死と、二人の姉妹の泣き崩れる姿に、安堵の声を漏らすのだった。


「拍手喝采。おめでとうメリア」

「……主様」


 里の上空から降りてきた二人の子供。

 黒翼と白翼の少年少女……アレクとニーファが黒い袋に入った荷物(・・)を持ってやってきたのだ。


「……ニーファ様?その黒い袋は……」

「ん?お主の復讐先の部下じゃが」

「しかも逃げ腰」

「……なるほど」


 無造作に袋を落とすと、モゾモゾと動き出し、ガンツの部下の一人が這い出でくる。


「ぐ…がっ」

「動かないでねー騒がないでねー死なないでねー」


 アレクの足に頭を押し付けられた部下は、睨むことも出来ずに地面に伏せる。


「コイツの処理は里に任せます」

「かしこまりました………アレク様、先日の我が里の無礼、申し訳ございませんでした。里を代表してお詫び申し上げます」

「……いや、気にしてないんで。大丈夫ですよ」


 全員この言葉を聞いてこう思った。


(めちゃくちゃ怒ってるじゃないか!!!!!)


 言葉の節々に怒気と殺気を含ませている彼の言葉を、誰も信じようとしなかった。


「……はぁ。まぁいい、ホントに気にしなくていいですよ。事情も知ってるし。……メリア」

「は、はい」

「君は親の仇を討った。復讐を成し遂げたお前は、この里に残るか?それとも、俺達と一緒に行くか?どうする?」

「…………」


 究極(別にそれ程でもないが)の選択を強いられるメリアは、顔を俯かせ、背後を向く。

 そこには、リニアと里長が居た。


「リニア…私は」

「………姉さん。大丈夫。私は、大丈夫。だから……里は私に任せてよね!」

「……コヤツに里を任せるのは後に議論するとして、じゃ……メリア、聞こう。今お主が居るべき場所は何処じゃ?」

「リニア。里長……」


 メリアは数秒顔を俯かせ、そして決心した顔を皆に見せる。それを見た里の者達の反応は、「肯定」と「応援」の二種だけだった。何とも平和な場所である。

 皆の顔を見たメリアは、アレクとニーファに向き合って。


「……お供します。今の私は、貴方達の『物』でもありますから。……お願いします連れていってください!」


 メリアの決断を聞いて、二人は顔を合わせて静かに微笑む。


「断る理由がないんだよなー」

「我ら2人とスライム達の世話をするお主がいなくなっては困るしな」

「……俺達はメリアのヒモじゃないぞ?……お前以外は」

「変わらんじゃろうが………って、なんで我はヒモ扱いなんじゃ!」

「自炊できる?」


 2人がいつもの様に漫才を始めるのを見て、メリアは優しく微笑み、里長とリニアは安堵の声を上げる。


「肉を焼いて塩をかけるぐらいなら……」

「サバイバルじゃねぇんだぞ?お前練習してたんじゃなかったっけ!?進歩してなくね!?」

「いや、その……」

「以前塩と砂糖を間違えたり、魚醤と間違えて植物エキスを混ぜようとしてましたね」

「ちょ、メリア、お主!」

「……いや、塩と砂糖は兎も角、魚醤と植物エキスは無いだろう。普通。見分けつれろよ……」

「両方とも色が似てるのが悪いんじゃ!我は悪くなどない!断じて悪くなどない!」

「理不尽すぎたろ……」


 ニーファを宥めさせ、遅めの朝食を取って里を回った(お詫びとして色々された)三人は里を出る。

 大勢に見送られ、里を去るメリアの顔は、晴れ晴れとしていたのだった。







「……あの、主様?」

「ん?どした?」


 帰り道。

 行きに来た神殿の前で、彼等は飛び立とうとしていた。わざわざ。


「……転移を使えば良いのでは?」

「風情と暇潰し」

「え」

「お主は空に弱いからの……自分で飛ぶのは問題ないようじゃが」

「いや、あれは……ちょっとそれどころじゃなかったですし」

「まぁ、敵が目の前に居るようなもんだしな……兎に角、俺達に運ばれるのが嫌ならその耳使って空でも飛ぶんだ」

「無理です!物理法則とか色々無理です!」

「何処で習ったんじゃその言葉……」

「?クロエラ様からですが……」

「流石稀代の天才魔法学者。頭がおかしい」


 本当に物理法則が関係あるか分からないが、数分間兎耳で頑張って飛べるか確かめて、無理だと悟った(最初からわかってたが二人が興味本位でやらせてた)後、大空を飛んで世界都市に帰ったのだった。


「た、高いですぅ〜!!!」

「おい、暴れんな!おとすぞ!」

「ひ、それだけはぁ!」

「……さっきの道具使って滑空すればいいじゃろ……」

「いや、そこまで頭回んないと思う。パニックで」


 無論、メリアが空酔いで魘されたのは言うまでもない。









「……ま、メリアの問題も片付いて良かったな」

「じゃの。……アレク、次は?」

「天界図書館。だったっけ?名前とかうろ覚えだけど……行けっかなぁ?」


 二人はアンテラに渡された招待状を手に取って頭を捻るのだった。



準備が終わったと思ったら暗い密室の中で少人数パーティが始まったんだけども?

なんか歌い出してるし……このクラス大丈夫か?

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