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魔王の兄は転生者  作者: 民折功利
第四章 夏休みとお兄様
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夏の研究会活動


 ユメやメリアの一日稽古が終わってから1週間がたった。

 昨日俺達は転移で世界都市に帰り、一日休息した上で今日、古代魔術研究会の活動をする。


 魔王国で休憩したんじゃないの?と思う貴方。

 俺達が魔法をバンバン使って訓練したから、城の兵士やら騎士やらが私も私もと訓練させてくれと頭を下げられたので、こってり絞って差し上げた。

 一人につき、生きるのに大切な骨を何本か折ったり、砕きまくったりしてたけど。割とマジで折って砕いてた。うちの嫁のニーファが。


 んで俺が治した。


 さて。前述の通り俺達は今、研究会活動の為に活動場所に向かっている。

 その場所は『魔法学総合研究所』と呼ばれる世界的に有名かつ巨大な組織で、様々な技術を用いて魔法と機械の交ざった叡智を造り出している。


 最初は学園でやるのかなぁーと思ったんだが、クロエラから『最近2人で共同作業してるから、こっちに来てくれ』と連絡があったので、そこに移動している。

 2人ということは、クロエラとマールの2人ってことだよな……?

 そんなに仲良かったっけ?


 疑問を残しながらも馬車に乗って研究所に向かう。世界都市の西側の海岸に向かう。

 その海岸の崖に聳え立つ特殊合金の箱。

 西側にある港から輸入した素材を使ったり、製作した魔導具を輸出したりできる立地に立つ。

 ここが『魔法学総合研究所』だ。


「おー、来た来た」


 馬車に乗って研究所に近付くと、門前にクロエラが手を振って待っていた。

 そこにはクロエラ以外の人影はなく、門番とかは居ないらしい。

 大丈夫なのか?侵入し放題じゃね?

 

「よう。研究は順調?」

「んー……今はマール君と古代魔術の勉強中だから、そこまで進んでないかなー。あ、暇潰しに魔法増強君を造ったなー」

「ネーミングセンスの欠片もねぇ」

「暇潰しに造るでない」

「正式名称は『時短式魔力増強肉体開発装置』だけどね」

「なんか物騒じゃな……」

「それな」


 馬車を異空間に閉まって研究所に入る。受付に挨拶をして通り過ぎ、長い長い通路を通る。全面が白い静かな通路を真っ直ぐに歩いて、遂にクロエラの研究室という場所に着く。


 クロエラは懐からカードキーを取り出して、扉横の機械にスライドさせて鍵を開ける。


「……ってカードキー…?…」

「ん?知っているのか?」

「いや、えっと……見た目から考えた」

「へぇー……まぁ、名前はカードキーで合ってるぞ?俺が造った」


 マジでなんでもありだな。


 ごたつく研究室の中は広い。俺の寮部屋を改良した空間拡張と同じ物を使ったのだろうか?

 部屋の中はデカい装置に囲まれており、ベッドや椅子なども置いてある。


 ………アイツ此処で寝てんの?


「……ん。来た」


 マールは机の上で古い本を読んで待っており、その本の表紙には『魔法学のすゝめ』と書かれていた。


「何の本じゃ?」

「……今まで発達した魔法学について書かれた歴史書。結構詳しく書かれてる。………落書きと共に」

「は?落書き?歴史書に?」

「ん」


 マールがページの一部分に指させば、そこに黒鉛筆でなんかキャラクターが書かれていた。

 しかも、字的に最近のやつ。


「……はて?歴史を冒涜する人も居るんだねー」


 クロエラが斜め45度を向いて何かを誤魔化しているが……歴史の冒涜ねぇ……


「なぁマール、この本ってクロエラの……あそこの本棚からだよな?」

「……肯定」

「じゃあお前やん。冒涜者お前やん」


 歴史を冒涜しているのは、やっぱり現代の魔法学者だった。


「いや……半寝で読んだのがダメだった」

「アホか」

「ついでに言うと、図書館から借りてきた蔵書」

「え、お前アホやん」


 救いようのない奴だった。

 公共の物に落書きとか……うへー。


「ま、まぁ、ボクの子供達の手に掛かればすぐ消えるし!?今から造ればいいし!?」

「なぁ、アイツほっといて活動しようぜ」

「そうじゃな」

「……わかった」

「え、ちょっと?マッテーちょっとマッテー」

「お前は早く造れ!んで直せ!あの図書館の司書さん本を傷つけた奴には怖いんだぞ!噂では」

「マジか、やべ!急がないとー!」


 クロエラは研究室の片隅の作業机に座って、目にも止まらぬ速さで工具を駆使し、なんか作り始めた。


「……お主、その図書館に行ったことあるのか?」

「ない」

「………ないんだ」


 彼を急かす為、友人として背を押しただけですから。司書さんが怖いかどうか知らんし。


 クロエラが頑張っているのを後目に、俺達はクロエラが造ったという玩具で遊ぶことにした。

 なんでも、以前入会試験?のようなものでマールが使った魔術迷路を自分で作ってみたらしい。


「………マールは解いたのか?」

「ん。まだ」

「エグくないか……?」

「四角いですね」


 メリアが小学生の感想を言っているがいちいち突っ込まない。


 クロエラの魔術迷路は拳大の大きさで、一般的なルービックキューブと同じ見た目をしてるんだが………んー。


 なにこれ。


 可笑しいだろ。

 魔術迷路と言うのは一個の魔術をバラバラにした奴を組み立てて完成させるのに……コイツは複数魔術とか魔法回路があるんだけど。

 見た感じ既に3つはある。


「「「……無理ゲー……」」」


 俺とニーファとマールの声が揃うのだった。





「よぉし!出来た!後は此処に本を入れて……」


 クロエラが四苦八苦して凄い装置を造っている間に、四人はまだ魔術迷路をやっていた。

 かれこれ一時間ぐらい経ったけど。


 この四人は何かと忍耐性が強かった。

 一人は魔力を延々に循環させて暇を潰しながら考えて。

 一人は何千年と生きてきたのに比べれば一瞬の為気にせずに。

 一人は魔法への純粋な探究心で。

 一人は元巫女らしく耐えるのは得意で。


 無言でルービックキューブをガシャガシャ動かすアレクと、それを凝視するニーファとマール。メリアは魔術迷路では無くアレクの手の動きを凝視していた。手の動きすら影で再現する気か?


「………ん?ちょっと待って」

「どした?」


 マールが何かに気づいたようで、俺の手から魔術迷路を奪い少しだけ前に戻す。


「……此処で三面が揃って……こっちを正す為に……こう」

「おー……」


 マールの手に渡った魔術迷路は、三面が完成して直ぐに四面が揃う。

 この魔術迷路、一つの面につき一個、魔術や魔法の術式や回路が刻まれていた。


「……ん?何やってるんだ?」


 装置を完成させた上で、どうやったかは知らんが本の落書きを消して─────てか、手に持って見せびらかしている─────やって来たが、俺達がやっている魔術迷路を見て首を傾げる。


「……できない」

「この魔術迷路やってる」

「いや、それ魔術迷路じゃないぞ?」

「「「「は?」」」」


 え、俺達は一時間近くこれを魔術迷路だと思ってたんだけど……


「そもそも未完成だし、表に魔術式を模したガラが書かれてるだけだから」

「はぁー?」

「人生で1番無駄な時間を過ごした気がする」

「……騙された」


 クロエラはヒョイッと魔術迷路(嘘)をマールから奪い去ってポケットにしまう。


「さて、何しようか?」

「「「「今なくなった」」」」

「え?」


 現実は無情なり。







◆魔法学者クロエラ


 アレク君達が研究室を出て寮に帰る。

 ボクはまだやることがあるから帰らないけど……


「まさかこれを解こうとするなんてなー」


 四人が触っていた魔術迷路────もとい、クロエラの『秘密の研究室』の鍵。


「これ解かなくてもいいんだけどなー……って、組み換えられまくったから鍵にならなくない?」


 その後、やりたいことを放ってルービックキューブを手に苦悩するクロエラの姿が見られたとか見られなかったとか。




秘密ってだけでワクワクするよね

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